改葬と高額な離檀料トラブル
改葬とは、お墓に埋葬されている遺骨を取り出して、所定の手続きを行ったうえで、新たなお墓に納骨することです。
「お墓を自宅近くに移したい」「お墓を継ぐ人がいない」といった状況に合わせて、お墓の改葬を検討する方が増えてきています。
一方で、寺院墓地では檀家制度を原因とした、特有の問題が発生する可能性があります。檀家とは、お寺の信徒として経済的な支援をする代わりに、法事や墓地の使用権が得た家のことです。
改葬ではまず現在のお墓を閉める必要がありますが、この際に高額な離檀料を請求されるトラブルが発生しています。
改葬の流れと費用
改葬の流れはやや煩雑であり、いくつかの書類や手続きが必要となります。以下が流れの概要です。
- ①お墓のある市区町村から「改葬許可申請書」を取り寄せる
- ②現在のお墓の管理者から「埋蔵証明書」を発行してもらう
- ③新しいお墓の管理者から「受入証明証」を発行してもらう
- ④お墓のある市区町村へ「改葬許可申請書」と必要書類を提して「改葬許可証」を発行してもらう
- ⑤お墓から遺骨を取り出す
- ⑥墓石の撤去・原状回復
- ⑦新しいお墓への納骨
これに加えて、寺院墓地の場合は離檀に関する手続きが必要となります。その際に離檀料などのトラブルが少なからず発生しています。
改葬にかかる費用
寺院墓地の場合、改葬の費用として20~30万円ほどかかるといわれています。以下がその内訳です。
・魂抜き法要のお布施(1万円~)
・新しいお墓の閉眼供養のお布施(2万円~)
・遺骨の取り出しと墓石の撤去(10~数十万円)
なお、墓石撤去・更地に戻すための費用は、お墓の立地条件や墓地の面積、石材店によっても異なります。
離檀料の金額
離檀料の相場は明確ではありません。ただ、30~100万円ほどを請求される場合があり、さらに高額な請求を受けたという事例もあります。
離檀料の根拠として「遺骨一体に10万円」「先祖代々の墓だから400万円」など、さまざまな理由づけがなされます。これは、お寺それぞれが根拠を考えているためと思われ、口頭であいまいに伝えられる事例も少なくありません。
なぜ離檀料が請求されるのか
離檀料を請求するお寺側の事情として、檀家数の減少による運営状況の悪化が考えられます。お寺にとって、檀家からのお布施は大きな収入源です。しかし、改葬や人口減によって檀家が減り、運営状態が悪化しているのです。
離檀料に法的な支払義務はない
離檀料には法的義務はありません。あくまでも、檀家からのお寺への寄進・喜捨行為なのです。
また、離檀や離檀料を定めた契約書が結ばれていることもほとんどないため、お寺側から裁判を起こすこともできないと考えてよいでしょう。仮に契約がもしあったとしても、消費者契約法の「消費者保護の観点」から、違約金の性質をもつ離檀料の合理性・有効性が検討されることになります。
お寺から離檀料を請求されたら
お寺と改葬の交渉をするには、双方が説明責任を果たしつつ、正しくコミュニケーションを行う必要があります。
改葬の理由の説明
まずは、お寺に改葬の理由を説明します。今までお世話になったお礼をしつつ、「お墓を継ぐ子どもがいない」「家庭事情で経済的に困窮している」などの事情を伝えましょう。
離檀料の内訳と金額を確認
もし離檀料を請求されたら、内訳と金額を確認しましょう。とくに、お墓の撤去費が含まれているかを確認すべきです。
一度持ち帰る
もし、内容や金額に納得できなければ、その場では承諾せず、一度持ち帰り検討しましょう。
離檀に関する落としどころ
離檀料を支払う意志がない場合でも、お墓の原状回復(撤去費用)と遺骨を取り出す際に行う「御霊抜き」のお布施を支払うことが落としどころになるでしょう。
金額交渉
離檀料を支払う意志はあるが金額が不服な場合、支払い可能な範囲をお寺に相談しましょう。
また、お墓の撤去費が高いと感じた場合、他の石材店で相見積もりを取ることも有効です。
高額かつ交渉に応じてくれない場合
離檀料が高額で、交渉にも応じてくれない場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。
また、お寺の宗派の本山に相談する方法もあります。いわば、本社に支店のクレームを入れるようなかたちです。各宗派の本山では離檀料を認めていない場合もあるので、確認してみましょう。
法的に争う場合
法的な争いとなった場合は、「遺骨の返還要求」を目的としましょう。宗教上のトラブルではなく、遺骨を返還してほしいことを明確に主張します。目的を明確にしておき、あとは専門家である弁護士に任せます。
まとめ
「お墓を自宅近くに移したい」「お墓を継ぐ人がいない」といった事情から改葬を検討する人が増えるにつれて、お寺とのトラブルも頻発しています。
しかし、離檀の際に請求される離檀料には、法的な根拠がありません。もし離檀料を請求された場合は、すぐに承諾せずに金額の確認と交渉を行いましょう。
それでも解決しない場合、お寺の本山や弁護士などに相談して、解決を図っていくとよいでしょう。