いま「おひとりさま」が急増!

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おひとりさまに対する社会的支援の不備

単身高齢者の増加は、高齢社会を迎えて想定以上の速さで進んでいると言えるでしょう。単身高齢者が増えるだけでなく、その生活を支える制度ができていないことが重要です。

制度としては、介護保険などが公的保険契約に基づくサービス提供となって長く経ちますが、制度創設時点では「おひとりさま」を想定していなかったため、「本人の意志」だけでの介護施設入所などの契約は困難です。

現行制度では、契約の時点で本人に加え「家族ないし近親者の身元引受」が求められます。家族介護を前提とするためです。これが、「おひとりさま」が望むサービスを提供されない状況を生む原因になっています。

高齢者の社会的孤立を防止する公的支援の現状

高齢者に対する福祉・介護等のサービスについては、生活保護制度や介護保険制度によるもののほか、社会福祉法に基づき、市区町村が主体となって実施する地域福祉活動があります。

地域包括支援センター等による支援

高齢者などの地域的な生活支援のために、おひとりさまが利用するのに役立つ組織として、市町村が運営する地域包括支援センターがあります。

地域包括支援センターは、地域住民の保険医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援する役割を担う機関として、市区町村又は市区町村から委託を受けた法人(社会福祉法人、医療法人等)が設置する機関であり、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員が配置されています。

単身高齢者が、困ったことを何でも相談できる公的窓口として、より利用しやすい環境整備や広報が必要でしょう。

社会福祉協議会による「日常生活自立支援事業」

社会福祉協議会による日常生活自立支援事業とは、認知症高齢者等の判断能力が不十分な人に対し、利用者との契約に基づいて福祉サービスの利用のための支援をする事業で、都道府県社会福祉協議会又は指定都市社会福祉協議会が実施主体の事業です。

高齢者など、自分で判断するのが困難な人の、福祉サービスの利用手続きや、金銭管理の手伝いをして、安心して暮らせるようにサポートする事業です。

対象者

日常生活自立支援事業の対象者は、次のいずれにも該当する人です。

・判断能力が不十分な人
認知症高齢者などで、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な人

・本事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる人

実施主体

実施主体は都道府県と指定都市の社会福祉協議会ですが、窓口となるのは市町村、特別区の社会福祉協議会です。

社会福祉協議会とは、民間の社会福祉活動を推進することを目的とした、非営利の民間組織で社会福祉法人です。民間組織ですが地方自治体と一体となって福祉実務を行う公益的な法人です。

実務は、各地域の社会福祉協議会で働く「専門員」「生活支援員」が契約者のもとを訪問してサポートします。

日常生活自立支援事業のサービス内容

a. 福祉サービス利用の支援
福祉サービスとは、介護保険制度などの高齢者福祉サービスなどのことをいいます。

具体的支援には、次のようなものがあります。

・福祉サービスの利用に関する情報の提供、相談
・福祉サービスの利用における申し込み、契約の代行、代理
・入所、入院している施設や病院のサービスや利用に関する相談
・福祉サービスに関する苦情解決制度の利用手続きの支援

b. 生活に欠かせないお金の出し入れの支援
お金の出し入れの支援には、次のようなものが含まれます。

・福祉サービスの利用料金の支払い代行
・病院への医療費の支払いの手続き
・年金や福祉手当の受領に必要な手続き
・税金や社会保険料、電気、ガス、水道等の公共料金の支払いの手続き
・日用品購入の代金支払いの手続き
・預金の出し入れ、また預金の解約の手続き

c. 日常生活に必要な事務手続きの支援
日常生活に必要な事務手続きの支援には、次のようなものが含まれます。

・住宅改造や居住家屋の賃借に関する情報提供、相談
・住民票の届け出等に関する手続き
・商品購入に関する簡易な苦情処理制度(クーリング・オフ制度等)の利用手続き

d. 大切な通帳や証書などの保管支援
利用者の希望に応じて、大切な通帳や証書などを安全な場所で預かってくれます。

預かってもらえるものは次のようなものです。

・年金証書
・預貯金通帳、銀行印、カード
・証書(保険証書、不動産権利証書、契約書など)
・実印
・その他実施主体が適当と認めた書類、マイナンバーカードなど

また、預かってもらえないものは次のようなものです。

・宝石、貴金属類
・書画、骨董品
・株券、小切手

利用料

実施主体が定める利用料を利用者が負担します。参考例では、実施主体が設定している訪問1回あたり利用料は平均1,200円などです。

ただし、契約締結前の初期相談等に係る経費や生活保護受給世帯の利用料については無料となっています。

地方自治体、市町村による支援策

終活支援に取り組む自治体が増えている現状では、単身高齢者世帯の孤独死などにより、引き取り手のいない遺体も増えてきている問題があります。引き取り手のいない遺体は、公費で火葬にせざるをえません。

単身高齢者自身による生前契約を地方自治体がサポートすることで、本人が火葬や納骨の費用を負担することになり、行政のリスクが減る取り組みとしても位置付けられます。

終活サポートでは各種の例があります。地方自治体とその終活サポートの概要では次のようなものがあります。

エンディングノートの普及

エンディングノートに、いざという時の連絡先や身辺の情報を書いておくことは重要です。

地方自治体ではエンディングノートの無料配布をしています。配布している地方自治体には、首都圏では次のようなところがあります。

神奈川県横須賀市、神奈川県茅ヶ崎市、神奈川県大和市、東京都中野区、東京都府中市、東京都狛江市、千葉県千葉市、埼玉県越谷市、埼玉県八潮市など。

葬儀、納骨などの死後の委任契約支援

ひとり暮らしで身寄りのない市民を対象に、死後の手続きを支援する終活支援があります。例としては次のようなものがあります。

a. 神奈川県横須賀市
横須賀市では「終活支援センター」という事業部門を設けて取り組んでいます。

横須賀市終活支援センター
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/3014/syuukatusien/index.html

◆「わたしの終活登録」
「わたしの終活登録」とは、本人に終活関連情報を生前に登録してもらい、万一の時、病院・消防・警察・福祉事務所や本人が指定した方に本人の死亡を開示して、本人の意思の実現を支援する事業です。

◆エンディングプラン・サポート事業
ひとり暮らしで身寄りがなく、生活にゆとりがない高齢等の市民の、葬儀・納骨・リビングウィルという課題について、あらかじめ解決を図り支援する事業です。

対象者は、原則として、ひとり暮らしで頼れる身寄りがなく、月収18万円以下・預貯金等が225万円以下程度で、固定資産評価額500万円以下の不動産しか有しない高齢者等の市民の方です。

葬儀・納骨について、低額で生前契約を受ける協力葬儀社の情報を提供します。葬儀、納骨について協力葬儀社とともに支援プランを立てこれを保管します。支援プランに基づいて、安否確認の訪問をし、本人の入院・入所・死亡などの局面ごとに、あらかじめ指定された関係機関・協力事業者・知人の方々などに速やかに連絡し、連携して課題の解決に向けた支援をします。

b. 大阪府高砂市
おひとり様支援でエンディングプラン・サポート事業を行っています。
https://www.city.takasago.lg.jp/index.cfm/15,61495,c,html/61495/20180531-100506.pdf

◆ エンディングプラン・サポート事業とは
身寄りのない方の終活(葬祭、納骨等)を市が支援する事業です。希望によりリビングウィル(延命治療等の意思)も市と葬儀社が保管し、契約後、市は支援プランを立て登録カードを発行し、定期的に内容に変更がないか市が本人に確認します。

入院、死亡時はカードによって医療機関等から市や葬儀社に連絡が入り、リビングウィルの伝達、葬儀の円滑な進行を実現します。

葬儀・納骨等については、市内の葬祭事業者と生前に委任契約すること、その契約が円滑に履行されることを市がサポートするものです。(葬祭費用は自身で負担していただき、生前に預託します。)

対象者(原則、以下の全てに該当)は、

・市内に住所を有するひとり暮らしの方 ※同居人が重症心身障害者など事業利用希望者の葬儀等を主導して執り行うのが困難な方を含む。
・年齢が65歳以上の方 ※年齢が60歳以上で要介護認定3以上の方を含む。
・月収が15万円以下かつ預貯金等が100万円以下であり、所有する不動産の固定資産評価額が500万円以下の方

死後事務委任契約では、市民は20万6千円を限度に葬祭事業者に預託します。

c. 神奈川県大和市
◆おひとり様などの終活支援事業とは

自身の死後に不安を抱える市民を対象に、葬儀などの生前契約をサポートするほか、事前に登録しておけば、死後に登録者の知人や親族などへ死亡事実やお墓の場所などの情報を連絡します。

対象者は、市内在住で、自身の死後に不安を抱えるひとり暮らしの人、夫婦や兄弟姉妹のみで暮らす世帯などです。

事業の主な内容は、次のような点です。

・自らの葬儀や納骨などを執り行う市内の協力葬祭事業者をご紹介し生前に契約できるよう支援します。
・自らの死後の遺品整理などを希望する場合、司法書士や行政書士などの法律専門家から連絡をいただけるよう市が手配します。
・希望により、親族の代わりに死後のお墓の所在などの情報を知人等に連絡します。
(葬儀等の生前契約に係る費用は対象者の自己負担になります)。

高齢者が借りる際の賃貸住宅の保証支援

高齢者が民間の賃貸住宅を探す時、保証人がいない場合は、入居が難しくなります。こういう場合は、自分が住んでいる自治体の高齢者窓口に相談すると、保証人がいない人のための支援制度が用意されていることがあります。

具体的には、区、市と提携して保証人の代行となってくれる保証団体・会社を紹介してくれます。
さらに、入居時に保証会社に支払う保証料について、一部を支援してくれる自治体もあります。自治体に支援制度がない場合は、不動産業者に保証団体・会社を紹介してもらう方法があります。

東京周辺になりますが、保証団体には次のような所があります。

・一般財団法人高齢者住宅財団
・一般社団法人賃貸保証機構

高齢者への入居時保証を支援してくれる東京特別区例
制度が変更されている場合もあるので、最新の状況については確認してください。

・港区「民間住宅のあっせん」
・新宿区「高齢者入居支援事業」
・台東区「高齢者等家賃等債務保証制度」
・墨田区「高齢者等家賃等債務保証制度」
・江東区「住宅あっせん事業実施要網に基づく入居支援制度」
・大田区「高齢者等住宅確保支援事業に関わる金銭保証業務の事務に関する協定」
・世田谷区「居住支援制度」
・中野区「居住安定支援事業」
・杉並区「高齢者等入居支援事業」
・荒川区「高齢者民間賃貸住宅入居支援事業」
・板橋区「家賃等債務保証支援事業」
・練馬区「高齢者世帯等居住支援制度」

高齢者の社会的孤立を防止する民間支援の現状

公的支援は、内容も対象もまだ一部です。地方自治体のサービスでも行っているのは一部です。そのため、その狭間をカバーする民間終活サービスが必要になってきます。

亡くなった後、死亡届の提出、健康保険や公的年金の資格抹消の手続き、さらに、お墓を事前に用意していれば納骨の手配、家の中の遺品整理、公共料金の支払いやメールアカウント等の解約など、生前に代理人に依頼しておく死後事務委任契約による終活サービスがあります。

葬儀費用などの実費と代理人への報酬を、生前に預託金として渡しておくというのが一般的です。専門家に依頼した際の相場は、死亡届の提出は3万円~、健康保険等の資格抹消手続きは5万円~、葬儀の手続きの代行は形式、規模により異なりますが5万~20万円。遺品整理は業者に依頼するだけで3万円~などです。

法律的処理では弁護士事務所、司法書士事務所などがあり、生活全般に関わるものではNPOなどが行っている例もあります。

公的機関では行わない代表的な分野に、身元保証があります。
身元保証サービス(保証人代行サービス)では、民間団体が行っています。

例としては、一般社団法人終活協議会などがあります。
死後の葬儀、お墓、供養、遺品整理などの死後の事務代行をしています。入会金は10,000円、年会費不要となっています。個別のサービス費用では、病院入院、介護施設入所の身元保証は35万(税別)、死後の葬儀、お墓、遺品整理などの死後事務委任サービスでは135万円(税別)などとなっています。

また、イオンライフ株式会社でも、遺品整理、寺院永代供養、葬式、身元保証、遺言信託、墓じまいなどの代行をしています。

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