父の希望は1日葬 でも私たちはそんなに早く別れたくない どうすればいいの?

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1日葬とは

近年、高齢の両親のほうから「葬儀は簡略化したい」と希望を伝えられることが増えています。なかでも要望が多いのが、1日葬です。

1日葬とは、通夜を省いて告別式と葬儀のみ行い、1日で終了する葬儀のことです。ワンデイセレモニーとも呼ばれる、小規模な葬儀形式の一種です。

1日葬の流れ

1日葬の流れに沿って、詳細を解説していきます。

遺体の安置

まず、病院や施設などから移動して、遺体を安置する場所を探します。病院や施設では遺体の安置はできず、法律では24時間以内の火葬ができないためです。

通常、自宅や斎場の安置室、民間の遺体安置施設を利用することになります。

葬儀準備

葬儀を行うにあたり、死亡診断書と一体になっている死亡届を管轄の役所に提出します。死亡届は、死後7日以内に役所に提出する決まりです。

その際、役所より火葬・埋葬許可証が発行されます。火葬・埋葬許可証がないと、遺体の火葬ができません。なお、これらの手続きを代行してくれる葬儀社もあります。

次に、親族や故人の友人へ訃報を知らせます。あわせて葬儀社と、葬儀場や葬儀の規模・価格、故人の信仰などを話し合います。遺族にとっては慌ただしく悲嘆に暮れる暇もないですが、曖昧な契約を結ぶとトラブルの元になります。

納棺・葬儀・告別式

葬儀の準備が済んだら、遺体の身なりを整え納棺し、葬儀・告別式を執り行います。

1日葬の場合、火葬まで1日で終了するようにスケジュールが組まれるので、葬儀の開始時間は午前中が中心です。日中のみで行うため、仕事や学校などの都合で参列できない方もいるのが注意点となります。

また、1日葬では香典を辞退することが増えています。ただ、参列者がどうしてもという場合もあるため、会葬礼状や返礼品も準備しておくのが無難でしょう。

出棺・火葬・精進落とし

一般葬と同様、喪主の挨拶の後に出棺します。親族以外の参列者は解散となりますが、少人数で執り行う1日葬では、全員で火葬場に向かうこともあります。

火葬場で宗派に沿った儀式を行い、火葬となります。火葬の完了までに2時間程度かかるため、参列者は控室で待ちます。

火葬後はお骨上げをして、遺骨を骨壺に納めていきます。通常の葬儀ですと、この後に精進落としという食事会が行われますが、1日葬の場合では省略されがちです。

また、火葬後すぐに初七日法要を行う場合もあります。初七日法要は逝去して7日後に行うものですが、親族などが再び集まるのが困難な場合、簡略化して執り行われます。

1日葬のメリット

1日葬のメリットとして、体力的・経済的な負担の軽減や、時間の余裕を作れることが挙げられます。

体力的・経済的な負担軽減

1日葬では、遺族、参列者ともに体力的・経済的な負担を軽減できます。遺族は通夜を執り行うための労力・費用を削減でき、体力的にも経済的にも余裕ができます。

参列者にとっても、2日がかりとなる一般葬では都合をつけることも大変で、宿泊の手配なども必要となります。とくに親族が遠方で暮らしている場合、このメリットは大きいでしょう。

時間の余裕ができる

1日葬は通夜を省くことで時間の余裕ができ、故人との別れの時間をゆっくり過ごせる一面があります。

一般葬を執り行う場合、準備や手続きも多く、通夜の弔問者への対応など、やるべきことが山積みとなります。とくに喪主などは、悲しみに暮れる間もなく火葬を迎えることも少なくありません。

その点で、参列者も厳選される1日葬は、時間的な余裕を作りやすいのです。

1日葬のデメリット

1日葬のデメリットとして、参列が難しくなる可能性や、宗派によっては許可が出ないといった問題があります。

参列が難しくなる可能性

1日葬は一般葬に比べると、最後のお別れができない方が多くなりがちです。仕事や学校などで日中は都合がつかないけれど、夕刻からなら参列できるという方は多いでしょう。通夜を省略すると、そうした方のお別れの機会が失われます。

ただ、最近では比較的遅い時間から始める1日葬も増えてきているので、葬儀社と相談してみるとよいでしょう。

宗派によっては許可が出ない

菩提寺がある場合、宗派によっては1日葬の許可が出ないことがあります。故人の供養は、通夜を含めて成立すると考える宗派もあるためです。また、親族からも一般葬とは異なる形式に反対の声が上がる場合もあります。

会場費を抑えられない可能性

遺体の安置に葬儀会場を利用した場合、1日葬でも会場費が2日間分かかる場合があります。

昔は遺体は自宅に安置するのが一般的でしたが、住宅事情によってはそれも難しい場合があります。例えば、高層住宅で搬送する際、担架がエレベーターに乗らないといった問題があります。このような場合、結果的に斎場を2日押さえることになり、費用を軽くできません。

ただ、近年では民間の遺体安置施設を利用する方法もあり、会場費よりも安価に済む場合があるので検討してみるとよいでしょう。

その他の小規模葬儀との違い

近年では、1日葬以外の小規模葬儀の選択肢が増えています。ここでは、家族葬と直葬(火葬式)について、1日葬との違いを踏まえて解説します。

家族葬

家族葬とは、故人の家族・親族、親しかった関係者のみで行う葬儀形式です。参列者が少人数であること以外、通常の葬儀と同じ形式で執り行われます。1日葬との違いは、通夜を行う点です。

少人数で執り行うことから弔問者への対応などは少なく、ゆっくりと故人との別れの時間を過ごせます。

直葬(火葬式)

直葬とは、通夜や告別式などの儀式をすべて省き、遺体を直接火葬場へ運び、火葬する形式です。火葬式とも呼ばれ、火葬場に行くのも少数の遺族のみです。

火葬前に僧侶が読経を行う場合もありますが、供養に関する儀式はほとんどが省略され、遺族の体力的・経済的負担を最低限にできます。

小規模葬儀の費用

主な小規模葬儀の費用相場は、以下のとおりです。

1日葬:50~90万円
家族葬:60~100万円
直葬:20~50万円

金額の差が大きいのは、参列者の人数や、食事の有無、菩提寺へのお布施など、さまざまな要素で変動するためです。ただ、一般葬の相場が150~300万円といわれているのに比べれば、費用を大きく抑えられることがわかります。

1日葬で気を付けること

1日葬で最も気を付けることは、周囲の了解を取っておくことです。小規模葬儀に共通することですが、世間にはまだ完全に浸透しておらず、一部の方は抵抗を覚える場合もあります。

また、懇意にしている菩提寺がある場合、事前に相談しておくことが大切です。

まとめ

1日葬ではお別れの時間が短くなり、寂しく感じる方もいるでしょう。しかし、1日葬は時間に余裕を作れることから、一般葬よりもゆっくりとお別れの時間を過ごせる側面もあります。

また、1日葬は新しい葬儀形式のひとつです。遺族、参列者にとっても多くのメリットがある一方で、周囲の理解を得ておくことが大切です。

家族全員が納得できる葬儀を目指して、日頃から希望の終活について話し合っておきましょう。