仏教や神道が一般的な日本では、墓地や霊園で見られるお墓もほとんどが和型となっています。とはいえ最近ではキリスト教も普及しつつある事から、洋式のお墓の需要も増えつつあるのが現状です。
そこで今回は日本でキリスト教のお墓を建てる際に知っておくべき点についてご紹介していきます。
キリスト教の死生観
死生観や埋葬に対する考え方は宗教によって異なります。例えば、仏教では死後に輪廻転生を果たす事によって生まれ変わるとされていますし、神道では家の守り神になるといわれています。
一方、キリスト教の死生観は仏教や神道のものとは大きく異なります。
死は永遠の命のはじまり
キリスト教における死は永遠の安息の始まりであり、死後は天国で穏やかに過ごながら、いずれくる復活の日を待つための期間とされています。
土葬が基本
キリスト教では復活するために生前の肉体が必要とされているので、基本的な埋葬方法は土葬となります。ただ実際には合理性を重視するプロテスタントでは火葬も一般的ですし、日本のように法律で埋葬方法が火葬と規定されている場合はそれに従わなければいけません。
お墓は記念碑
キリスト教におけるお墓の意味合いは仏教と異なります。そもそもキリスト教では死後の魂は天国へ行くためお墓で魂が眠るという考えはなく、あくまで故人が生きていた事の証として建てられる記念碑の意味合いが強いです。
また故人を偲ぶ追悼式などは開催しますが、供養という考え方はありません。
キリスト教の納骨
キリスト教では死後30日目の葬儀ミサや召天記念日に合わせて納骨式を行う事が多いです。とはいえ厳密に定められている訳ではないですし、参列者のスケジュールによっては多少前後する事もあります。
キリスト教のお墓参り
仏教ではお盆やお彼岸の際に定期的にお墓参りをする習慣がありますが、キリスト教にはそういった習慣はありません。
また故人が亡くなってからちょうど1年後のような節目には儀礼を行いますが、それは故人を偲ぶためのものであり供養という意味合いはありません。礼拝についても故人にではなく神に対して行います。
ただ墓参りが禁じられている訳ではないので、作法を守れば行っても問題はありません。
具体的な作法やマナーとしては仏教とあまり違いはないので、墓石とその周囲を掃除してユリやカーネーションのような白い花を添えましょう。お祈りについては両手を胸の前で合わせて神へ祈るのはどの教派でも同じですが、胸の前に十字を切るのはカトリックのみなので注意が必要です。
キリスト教のお墓を建てる場所
国内でのお墓の設置に関しては昭和23年に制定された墓地埋葬法に準拠する事が求められます。この法律では公衆衛生などを考慮した上でお墓の建て方や墓地の管理方法について規定しているため、キリスト教のお墓は設置可能な場所がやや少なめとなっています。
キリスト教の専用墓地
故人が所属していた教会が専用墓地を管理している場合はそちらを利用する事が一般的です。カトリックでは各教会が、プロテスタントでは各統括団体がそれぞれの墓地を管理している場合が多いです。
また複数の教会が共同で管理している共同墓地もありますが、多くは供養塔の地下に骨壷を納めるタイプとなっているので、芝生の上にお墓を建てたい人は注意しましょう。
民営墓地
宗教法人や公益法人が管理している墓地であり、宗教や宗派だけでなく墓石のデザインなどの制限が少ない事が特徴です。その分、使用料は高めに設定されており石材店も指定されている場合が一般的です。
民営墓地であればキリスト教のお墓も建てられますが、割り当てられた区画の面積によってはお墓のデザインが限定されてしまう事もあるので、費用や宗教だけでなく実際の現地の様子も確認するようにしましょう。
公営墓地
公営墓地は地方自治体が運営しているため費用は民営の墓地より安価ですし、宗教や石材店の指定などもありません。
しかし、数が限られる事から使用権は抽選になる場合も多く、運が悪ければ当選するまでに何年も待たなければいけません。
寺院墓地
お寺が管理している寺院墓地では、仏教に限り生前の宗派や収支を不問とする事もありますが、キリスト教を含め他の宗教のお墓は断られる事が多いです。
仮にお墓を建てられたとしても、仏教の作法やマナーに従わないといけないので、キリスト教のお墓を建てる場所としては不相応です。
お墓を建てない選択肢もある
キリスト教ではお墓を建てずに教会の納骨堂に骨壷だけを納めるケースも一般的です。お墓は信仰の対象ではないですし、墓参りの習慣も仏教や神道とは異なるため、お墓のあり方に対しては寛容的とされています。
キリスト教のお墓のデザイン
キリスト教では墓石についての制限がないので、他の宗教よりも自由にデザインや使用する石材を選ぶ事が出来ます。
ただ一般的には大理石を使用し、墓石の正面に十字架を刻むようなデザインが多く見られます。
お墓の形態
アメリカを含めてキリスト教徒が多い国では好みの色やデザインにカスタマイズした墓碑に故人の名前や信条などを刻む場合が多いです。つまり個人用の意味合いが強く、家族や一族で共用するという考えはあまり一般的ではありません。
しかし日本のような平地が少ない国では個人墓を建てるための土地がないので、仏教と同じく家族墓もよく見られます。
一般的なデザイン
キリスト教のお墓は一般的にはオルガン型とプレート型に分ける事が出来ます。
オルガン型は浅い角度がついた墓碑を使用するタイプであり、刻んだ文章や文字が見やすいという特徴があります。一方でプレート型は平たい墓碑をそのまま地面に設置するので、維持や管理に手間がかかりません。
またどのようなタイプでもロウソクの置き場を設けますが、日本のお墓のように境界を示す柵や仕切りは存在しません。
夫婦の宗教が違うときはどうなる?
最近の日本では国際結婚も一般的になりつつあるので、夫婦や家族内で信仰する宗教が異なるケースも珍しくありません。とはいえ、宗教が異なるとお墓の建て方も違ってくるので、しっかりと夫婦や家族同士で話し合う事が大切です。
宗教不問の墓地や霊園を利用する
夫婦や家族内で信仰する宗教が違う場合は、宗教や宗派などを制限していない民営の墓地や霊園を利用するのが最も一般的です。
また墓石のデザインについても和式と洋式をミックスした物が作れるので、そういったデザインを希望する際は石材店に相談してみましょう。
個人墓を利用する
なるべくお互いの信仰を大切にしたい場合は、夫婦別々で個人墓を建てる事になります。
特に最近では夫婦関係や家族関係が多様化してきており、古来の風習や習慣に捉われない人も増えてきているので、もし一緒のお墓に入るという事にこだわりがない場合は個人墓も選択肢になるでしょう。
実家のお墓を利用する
自分や配偶者の実家がキリスト教徒向けの家族墓を利用している場合は、そのお墓を使用するという選択肢もあります。
しかし実家も含めて自分のみがキリスト教だと、寺院墓地のお墓を使用するために改宗をしなければいけない事もあるので注意しましょう。
キリスト教のお墓は永代供養をしてもらえる?
本来ではキリスト教には供養という考え方はありませんが、お墓参りに行けずに無縁墓になってしまうという問題は仏教や神道に限った話ではないので、墓地や霊園によってはキリスト教式の永代供養に対応している所もあります。
特に宗教を不問にしている民営の墓地や霊園は柔軟に対応してくれる場合もあるので、検討している人は管理会社に一度相談してみましょう。
まとめ
今回ご紹介した通り、キリスト教のお墓は教会の墓地や公営・民営の墓地に建てる事が一般的です。
ただキリスト教におけるお墓や埋葬の意味合いは仏教や神道におけるものとは大きく異なるので、その違いをしっかりと理解する事が大切です。