近年、霊園・墓地の条件に「アクセスの良さ」を上げる方が増加しています。
自分たちが歳を重ね、足腰が弱ってもお参りしやすい場所にあるのが理想、という理由です。
今回は、アクセスが良く、バリアフリーのある霊園・墓地についてご紹介します。
また、これまでの霊園・墓地から、新たな場所へのお墓の移行についてもお伝えします。
お墓を建造、またはお墓の改葬をお考えの方は参考にして下さい。
先祖代々続く墓は家から2時間以上の墓地にある…
50代後半の夫婦。
先祖代々続く家系の墓は、もともと夫の実家の近くの菩提寺が管理する墓地にある。
自然が多い山場にあるため、見晴らしが良く、昔は人気の墓地だった。
お寺とも長年の付き合いのため供養として安心感はある。
しかし、現在住む家からは車で2時間以上の距離、公共交通機関を使用するともっと時間がかかるだろう。
夫は長男のため、次にお墓の継承者になる可能性が高い。
今は良いが、のちのち自分たちが年老いた時、お墓の管理ができるのか不安がある。
また、自分たちの息子の代になった時にも、遠方にある墓の管理が出来るのだろうか。
できれば公共交通機関でのアクセスも良く、バリアフリーのある霊園・墓地に改葬したいが、可能だろうか…と最近気がかりである。
これまでの霊園・墓地やお墓
これまで霊園・墓地は、郊外に多く存在していました。
広い土地が取れることがその理由です。
また、菩提寺の墓地に家系の先祖が眠るお墓がある場合も多いです。
長年供養をお願いし、付き合いのあるお寺を「菩提寺」(ぼだいじ)といいます。
少し前まで日本では、菩提寺に家系の先祖が眠るお墓があり、それを代々守っていくというスタイルが主流でした。
親戚一同がその地域の近辺に在住していることも多く、皆で墓を管理していました。
その中でも、お墓の管理をする家系の代表者を、お墓の「継承者」といいます。
近年、お墓の継承者不足が問題となっています。
核家族化や少子化で継承者となる人がいない家系が増えているためです。
また人口の都市部への集中などで、郊外にあるお墓を守る事が難しくなっています。
加えて親戚同士が近辺に在住している家系のほうが少なく、協力しにくいのが現状です。
そのため、アクセスの良い霊園に、家系のお墓を移動したい希望が増加しています。
このお墓のお引越しを「改葬」(かいそう)といいます。
霊園・墓地の種類とアクセス面の傾向
霊園・墓地の種類には以下があります。
- ①民営霊園
- ②公営霊園
- ③寺院墓地
アクセス面の傾向も踏まえ、順にご紹介します。
①民営霊園
民営霊園とは、財団・社団法人や宗教法人が管理し、そこから委託された民間企業が運営している霊園です。石材店が運営する場合が多いです。
近年では都市部や電車やバスの駅すぐに設立された霊園もあり、アクセスが良い場所が増えています。
自然の多い場所の霊園でも、駅からシャトルバスなどが出ており、便利です。
また、おおよその場所でバリアフリー化もされていて、お参りのしやすい霊園といえるでしょう。
お墓の形態や宗派も自由度が高いですが、運営する石材店との契約になるため(指定石材店制度)、墓石などは他社のものを使用することが出来ない縛りをネックだと感じる方もいます。
②公営霊園
公営霊園は、自治体が運営管理する霊園です。
基本的にはその地域に在住している人に申し込み権利があります。
霊園のある場所は、地方によりまちまちですが、霊園のバリアフリー化は進んでおり、お参りしやすい場合が多いです。
使用料も他に比べて安いので大変人気があります。
そのため、多くの地域で、抽選があります。
全国的に概ね倍率が高く、抽選に外れた際にお墓をどうするか考えておく必要があります。
また、どの石材店にお願いするかは使用者の自由ですが、墓の形状などは霊園により規定がある場合が多いです。
③寺院墓地
寺院墓地は、寺院が管理運営する墓地です。
利用するには、その寺院の宗教宗派であること、檀家になることが条件です。
寺院にあるので、法要など手厚く供養がしてもらえる安心感が魅力です。
しかしその度にお布施などがかかり、割高だと感じる方もいます。
昔からあるお寺の敷地に墓地があり、アクセスしにくいところがあります。
しかし近年、お寺から離れた、アクセスしやすい場所に墓地を作っている場合も出てきました。
いずれの墓地霊園も、以前よりはアクセスの良さやバリアフリー対策について進んでいるといえます。
アクセスの良さでおすすめの新たな供養形態
さて、前項に記した霊園墓地で一般墓を建てた場合、基本的にお墓の管理やご遺骨の供養は継承者をはじめとする親族同志の責任で行います。
しかし近年、それらが難しくなっている家系が増えていることは前項に述べてきました。
そこで近年、墓地スタッフにお墓の管理を任せられる供養形態が出てきています。
また、いずれもアクセスの良さやバリアフリー化が万全であることが共通です。
- ①納骨堂
- ②永代供養墓
①納骨堂
納骨堂とは、室内でご遺骨を管理供養するスペースのある建物です。
一般墓の管理供養の難しさから、納骨堂の需要は近年急速に高まっています。
ご遺骨を納めるスペースの種類は、以下4種が主流です。
・ロッカー型…コインロッカーのように個々に区分けされたスペースにご遺骨を納める形式です。
・仏壇型…個々に分けられた納骨スペースの上部に、仏壇がセットになっている形式です。
・位牌型…骨壺に入れられたご遺骨をまとめて保管し、その周りに並べられた個々の位牌に向かってお参りする形式です。
・自動搬送型…骨壺に入れられたご遺骨をまとめて保管し、お参りの際にカードキーや暗証番号を入力すると、自動で参拝所にご遺骨が運ばれてくる形式です。
メリットはまず、納骨堂が、駅の近くなど公共交通機関で通いやすい場所にあることです。
足腰に不安のある高齢の方でも安心してお参りができます。
また、室内にあるので天候の影響を受けず気軽にお参りができ、また雨風で墓石などが痛む心配などが無用です。
バリアフリーについても対応が万全な施設が多いです。
加えて、ご遺骨のあるスペースの管理や清掃は、基本的に納骨堂スタッフがします。
供花を供える、定期的な法要などをしてくれる場所もあり、供養の面でも安心感があります。
墓地とは違い、管理人が常在しており、また開館時間が決められている等セキュリティ面もしっかりしています。
しかしデメリットもあります。
納骨堂には代々のたくさんの数のご遺骨を納めることはできません。
個別型、夫婦型、家族型等種類はありますが、多くても8霊のご遺骨までが相場です。
また契約年数としては、亡くなって33回忌を迎えるまでが一般的です。
33回忌を過ぎると、複数の他者のご遺骨と一緒の墓に埋葬されます。
これを合祀(ごうし)といいます。合祀されると、後に個別にご遺骨を取り出すことは難しくなります。
②永代供養墓
永代供養とは、遺族ではない他者がご遺骨の管理供養をしてくれる形態です。
前記の納骨堂も永代供養の一種です。
永代供養墓では、墓地霊園のスタッフが墓地の管理や清掃、供養を行います。
近年は、一般墓を取り扱っていた民間霊園や寺院墓地が永代供養墓のプランにのりだしています。
永代供養墓の種類には、以下があります。
・個別型…個人または家族単位でご遺骨を管理供養する
・合祀型…最初から、複数の他者のご遺骨とまとめて納骨し、管理供養する
また、個別型でも納骨堂同様に管理期間には期限があります。
霊園によって差はありますが、17回忌や33回忌、50回忌などを迎えると合祀型のお墓に移され、合同供養となります。
メリットは管理者が要らず、ご遺族がお墓の管理供養をしなくて良い点、またお墓の建立が不要なので一般墓より費用が各段に抑えられる点です。
デメリットは、納骨堂同様、たくさんのご遺骨を納められないことや、契約期間を過ぎると合祀される点です。
お墓を改葬する手順
もともと家系のお墓がある方は、アクセスの良い希望の霊園墓地が見つかった場合に改葬する手続きがあります。
改葬には法的に手続きが定められており、ご遺骨の勝手な移動は違法です。
手続き手順は以下です。
- ①現在の家系の墓がある霊園墓地の管理者に「埋葬証明書」を発行してもらう。
- ②改葬先の霊園墓地より「受入証明書」を発行してもらう。
- ③今までのお墓がある市町村役場に①②の書類を提出し、「改葬許可証」を発行してもらう。
- ④今までのお墓を一度、「墓じまい」し、借りていた墓地区画を更地にする
- ⑤新たな霊園墓地へご遺骨を移動する
改葬する際に気を付けること
お墓の改葬を希望する方が増える反面、トラブルも多発しています。
改葬の際に気を付けることをご紹介します。
①まず、親族に相談すること
改葬の希望がある場合、親族に相談し、理解を得ておきましょう。
自分が継承者であったとしても、親族への相談なく改葬することはお勧めできません。
お墓は親族皆のものである意識が日本では特に強くあります。
また高齢の方ほど、新しい様式の供養形態に抵抗感がある方がまだまだ多いです。
改葬希望の理由や、メリットデメリットを丁寧に伝え、相談や提案をしましょう。
改葬トラブルの多くが、親族間でのことといわれています。
今後の親族間のお付き合いのためにも、理解を得ておくことが重要です。
②菩提寺への丁寧な対応と感謝
改葬する場合は、長年家系の墓を守ってくれていた墓地霊園への丁寧な対応と感謝を忘れないようにしましょう。
特に、寺院に関しては、先祖が長年お付き合いをしていた場合が多く、心遣いが必要です。
寺院によっては、改葬許可がなかなか出ないトラブルもあるようです。
人々のライフスタイルの変化が影響し、近年、寺院の檀家が減少傾向にあります。
そのため、これ以上檀家が減ることを避けたいと思う寺院もあり、時にしつこく引き留められることがあるようです。
どうしても許可が出ない場合は、役所や法律事務所に相談する手段となります。
自身の老後も踏まえ、お参りしやすいお墓を考えてみましょう
ライフスタイルの変化により、お墓も変化しています。
アクセスの良さやバリアフリー対応を条件に挙げる方も増えており、利用者の声にこたえた形で、供養形態も多様化しています。
霊園墓地は探しやすくなりましたが、日本では「お墓は家系のもの」という意識は根強くあります。
親族とよく相談し、皆が納得と理解をするお墓の形態を考えてみましょう。