60歳を過ぎて必要な保険とは?

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子供が独立したら、教育費などが不要となり現在の保険契約の内容を見直して、毎月の保険料負担を減らすことができます。今後の人生の中で大きな支出となる老後資金や病気や事故に備えた保険などに的を絞れます。保険は今後起こりうるリスクに対して備えるために加入するものということを理解し、60歳を過ぎてからどんな保険を選べばよいかを解説します。

子供の独立に伴う保険の見直しポイント

子どもが独立すれば保険の見直しによって解約したりし費用を抑えることができます。また、その浮いた費用を、シニアから本当に必要なものに振り替えることも可能になります。

(1) 生命保険(死亡保障)の見直し

生命保険の死亡保障は、万一のことがあった場合に残された家族が生活に困らないようにするためのお金です。子供が独立する頃には子供も収入があり、自分も年金を受け取れる年齢になっていたり、近づいていたりする場合が多く、それほど高額な死亡保障を備えておく必要はありません。
具体的に以下のような死亡保障を備えた保険は、子供が独立した後において必要性は低いといえます。
・定期(死亡)保険
・収入保障保険
これらの保険に加入している場合は、保障額を減額したり保障期間を短くしたりし、毎月の保険料を少なくするために見直しを行います。

(2) 医療保障の見直し

死亡保険の特約として医療保険に加入している人もいるかと思いますが、保障期間が短かったり保険金支払いの条件が厳しかったりなど、病気やケガをする可能性が高い高齢者には向いていません。
「先進医療」に対しては、公的医療保険(健康保険や国民健康保険)が使えないため、医療保険も高い場合が多くあります。そのため、「がん保険」や「三大疾病保険」、「先進医療保険」などの自分の状況に沿った費用の安い単体保険への見直しをしておくのが良いでしょう。

(3) 老後資金の確認

近年では「人生100年時代」と呼ばれるように医療技術や生活環境の改善で90代まで生きる可能性が高まっています。私たちが老後の生活において安心して暮らすためには、およそ世帯当たり2,000万円から3,000万円の貯蓄が必要とされています。
老後資金を貯蓄するための保険や金融商品などを検討しておく必要があります。金融商品では、年齢や考え方によりiDeCo(個人型確定拠出年金)、つみたてNISA、定期預金、国債などがあります。

シニア世代向けの保険

シニア世代におすすめの保険には、死亡保険、少額短期保険(葬儀保険)、民間医療保険・入院保険、がん保険、個人年金保険・トンチン保険、民間介護保険などがあります。

(1) 死亡保険

死亡保険は万が一のときに、残された家族がまとまった保険金を受け取れるようにしておく保険です。死亡保険は保険期間によって定期型と終身型に分かれています。それぞれの特徴を把握しておきます。

  • ①定期型死亡保険

    定期型死亡保険は、更新や満期があるタイプの死亡保険です。満期を迎えると、保障が終了するものが一般的です。定期保険は、保険期間が一定であるため終身保険よりも保険料が割安に設定されており、家計への負担を抑えつつ死亡に備えられる点がメリットです。

    ただし、保険期間の満了後に更新を迎えるタイプの場合、更新後に保険料が上昇します。

  • ②終身型死亡保険

    終身型死亡保険は、更新や満期がないタイプの死亡保険です。加入時のまま保険料・保障内容ともに変わることなく、亡くなるまで保障が続きます。終身型死亡保険の特徴としては、保険料負担が一生涯変わらないだけでなく、一定期間経過後に解約すると解約返戻金を受け取って老後資金に充てることができるものもあります。

また、相続税の生命保険金非課税枠を活用して相続税対策をするときにも、終身保険を利用するケースが多くあります(非課税となるのは、500万円×相続人の数)。

(2) 少額短期保険(葬儀保険)

少額短期保険とは、保険金額が「少額」(300〜1,000万円)、保険期間が1~2年(損害保険分野については2年)以内の保険です。その中で葬儀費用に特化した葬儀保険が販売されています。身内に迷惑はかけたくない、自分のことは自分で責任を持ちたいという方に人気です。
葬儀保険は加入できる年齢が通常の死亡保険よりも高めに設定されており、加入時に医師の診断書が不要な場合もあるため、加入しやすい保険です。

(3) 民間医療保険・入院保険

高齢になると心配なのが、病気やケガによる入院・手術の費用です。入院が長期化しやすく、治療費も高額になってしまうことも考えられニーズがあります。
保障内容としては、入院保障や手術保障が中心になっており、最近のものは先進医療を受けたときや、三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)を患ったときに手厚く保障を受け取れる「特約」が付加できるものがほとんどです。

特約を付加するほど、保険料負担が増えて保障内容も複雑になるため、自分にとって必要なものだけを選びます。また、医療保険加入時の保険会社による引受審査は、死亡保険やがん保険と比べて厳しい傾向にあるので、健康状態に不安がある人は加入時に断られる可能性があるので注意が必要です。

医療保険を選ぶうえで大切なのが、保険期間の違いです。医療保険の種類は、その保険期間の違いに応じて死亡保険と同様に「定期型」と「終身型」の二種類に分けることができます。
それぞれの特徴は次のような点です。

  • ①定期型医療保険

    保障期間があらかじめ決められているタイプの医療保険です。定期型の場合、1年、3年、5年、10年などです。その都度、更新か解約かを選ぶことができます。

    更新する場合は、更新前に比べて保障が小さくなったり、あるいは保険料が高くなったりするのが一般的です。

    また、定期型医療保険の多くは70歳や80歳を区切りとして満期が設定されており、満期を迎えた段階で保障も終了するので注意が必要です。

  • ②終身型医療保険

    保障が一生涯続くタイプの医療保険です。終身型の場合、保険料・保障内容ともに加入時のまま変わることはありません。

    また、なるべく健康で若いうちに加入すれば、高齢になってからの加入に比べて手頃な保険料で手厚い保障を持ち続けられます。

老後・退職後に加入する医療保険としては終身型の医療保険の方が適切と思えます。高齢な方だと、加入できる保険がないことも考えられ、更新や満期を迎えて新たな保険に加入しようと思っても、年齢や健康状態によって制限がある場合があります。

(4) がん保険

がん保険は、がんと診断された場合や、がんによる専門治療を受けた場合に保険金・給付金が支払われる保険です。入院給付金や手術給付金については、がん治療のための入院や手術のみが保障の対象となります。がん以外の病気は対象外ということになります。
また、がん保険は、過去にがんになったことがある人は加入できず、契約後90日間にがんと診断されても保障されないため注意が必要です。

がん保険の保障内容は、主に以下の7つです。いずれも、がんに限定しています。
・診断されたときに給付される一時金「診断給付金」
・治療で入院したときに給付される「入院給付金」
・手術をしたときに給付される「手術給付金」
・治療で通院したときに給付される「通院給付金」
・治療を目的として先進医療を受けたときに給付される「先進医療給付金」
・治療を目的として放射線治療を受けたときに給付される「放射線治療給付金」
・治療を目的として化学療法(抗がん剤治療、ホルモン剤治療など)を受けたときに給付される「抗がん剤治療・ホルモン剤治療給付金」

(5) 個人年金保険・トンチン保険

老後の生活資金は、個人年金保険やトンチン年金といった貯蓄型保険で準備するのもひとつの方法です。どちらも保険料を支払うことで所定の年齢から年金を受け取れる保険ですが、商品の内容に違いがあります。

  • ①個人年金保険

    個人年金保険は、年金の受取期間が10年や15年といった確定年金が主流です。そのため、基本的に支払った保険料以上の年金を受け取れますが、長生きしても受け取れる年金の額は変わりません。

  • ②トンチン年金

    トンチン年金はイタリアの銀行家トンチが考案した年金制度で、出資者が死亡すると、その年金が受け取る権利を持つ生存する出資者に権利が移される終身年金制度のことです。

解約時や死亡時の返戻金が低く設定されるため、年金原資が増加し、長生きする加入者に支払う年金を確保することが可能となります。生きている間は年金を継続して受け取れるメリットがありますが、反面、一定の年齢を超えないと受取総額が支払総額を大きく下回るデメリットも指摘されます。平均寿命を超えて長生きしなければ元本割れします。

(6) 民間介護保険

介護を受けることになったら、経済的にも精神的にも時間的にも家族に大きな負担をかけてしまうかもしれません。介護保険は公的介護保険に上乗せして老後・退職後に検討すべき保険の一つです。

  • ①公的介護サービスの利用の自己負担は1割~3割

    公的介護保険では、要介護認定を受けた場合、介護サービスを利用した際の自己負担が所得に応じて1割~3割となります。

    代表的な介護サービスとしては、自宅に訪問してもらう「訪問介護」、日帰りで施設に通う「デイサービス」、短いあいだ施設で過ごす「ショートステイ」、施設に入所する「施設入所」などです。

  • ②高額介護サービス費制度

    介護サービス費の自己負担額が定められた上限額を超えたとき、超過分が払い戻しされる制度があります。これを高額介護サービス費制度と呼びます。

  • ③民間の介護保険とは

    民間の介護保険とは、所定の介護状態になったときに年金もしくは一時金の形で保険金を受け取れる保険と言えます。

    一時金で受け取った保険金は、住宅の改修や車椅子の購入といった介護の初期費用に、年金形式で受け取った保険金は、介護サービスの利用に伴う自己負担に充てられます。

    また、民間介護保険で保険金が支払われる要件は、公的介護保険制度の介護認定と連動している場合と、保険会社が独自で基準を設けている場合があります。

(7) 引受基準緩和型保険

引受基準緩和型保険は、通常の生命保険や医療保険よりも告知の項目が少なく保険会社の引受基準も緩い傾向にあり、健康状態に不安がある人でも申し込みやすい保険です。所定の告知項目に該当しなければ契約できます。

引受基準緩和型保険は加入してから1年ほどは、保険金や給付金が削減されるだけでなく、保険料も通常の生命保険や医療保険より割高な点に注意が必要です。
通常の保険と無選択型・無告知型の中間的な位置づけになっている医療保険で、一般的に無選択型・無告知型の医療保険よりも保障内容の制限が少なく、保険料も抑えることができます(一般的に引受の審査基準が緩和されていない保険商品に比べると保険料は高くなります)。

(8) 無選択型保険

無選択型保険とは、加入時に健康状態を告知する必要がない保険です。そのため、健康状態にかかわらず申し込むことができます。
一方で、保険料は引受基準緩和型よりもさらに割高に設定されています。無選択型保険は、通常の保険や引受基準緩和型保険に加入できない場合に検討します。

まとめ

子どもが独立すれば保険の見直しによって解約したりし費用を抑えることができます。
その浮いた費用をシニアから必要なものに振り替えることが可能になります。
60歳を過ぎたら「生命保険(死亡保障)の見直し」「医療保障の見直し」「老後資金の確認」を考えてみてはいかがでしょうか?