日本の平均寿命が延びる中、定年後のお金はいくら必要なの?

生活

はじめに

若い皆さんは、喜んでよいのか悲しむべきか、とても複雑になるのが平均寿命の延びです。2019年には、男性は81.41歳、女性は87.45歳になりました。平均寿命は、今後ますます上昇する傾向にあります。

しかし、企業の定年制は大きく変わることなく、しかも、新しい人材育成のために「年功序列」方式をやめて実績を重んじる傾向にあります。こういった社会の中で、老後に向けて何を準備したほうがよいのでしょうか。

日本の平均寿命が延びる中、定年後のお金はいくら必要なの?

平均寿命と余命

2020年現在、企業や公務員の定年は、一部を除いて60歳といわれています。徐々に65歳に引き上げた企業や業界もありますが、60歳を境に給与が減額されたり、部署を変えられたりすることもあります。

しかし、晩婚化が進む昨今、60歳でも子どもが学生という人も増えています。まだ子育てにもお金がかかっているのに、すでに定年、老後のことを考えなければならない、というのが現状です。

それでは、あなたは何歳まで生きるのでしょう。そして定年からそれまでの間、年金だけで生活できるのでしょうか。

平均余命

初めに平均寿命について紹介しましたが、平均寿命というのは0歳や1歳と誕生時から含めて、人が何歳で亡くなっているのかという平均値です。実際には、生まれてすぐに病気や事故で命を落とす子どもも、若くして命を落とす人もいます。

事故や病気など、こういった人を含めての「平均寿命」です。戦前の平均寿命が極端に低いのには、流行病などで村全体の人が亡くなる、未熟児や生まれつきの病気で亡くなる、戦争に行って若い人が亡くなることが多かったという社会的な背景があります。

そこで、平均寿命だけでなく、平均余命、健康寿命などを多角的に見ていくと、定年後の残された年数や、健康に必要なお金が見えてきます。

まずは、平均余命を考えてみましょう。2020年現在の皆さんの年齢で、余命はどれくらいでしょうか。現在、40歳の男性は42.35歳、女性は48.11歳になります。つまり、82.35歳、88.11歳まで生きる可能性があるということです。

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日本の平均寿命が延びる中、定年後のお金はいくら必要なの?

50歳なら82.89歳、88.49歳、60歳なら83.97歳、89.17歳ということですね。

そして、70歳まで頑張って生きている人は、なんと男性は15.96年、女性は20.21年となり、男性は85.96歳、女性は90.21歳まで生きられる可能性があるということです。長生きをしている高齢者ほど、それだけ長生きできる可能性を秘めているということです。

健康寿命

男性も85歳まで生きるということになると、定年後25年、誰もが好きなことをして過ごすことができる、というわけではありません。認知症や寝たきり、持病など、加齢とともに、さまざまな衰えが始まります。

そこで大切になるのが健康寿命です。現在、介護を必要とせずに生活できるのは男性で72歳、女性で75歳といわれています。つまり、寿命が来るまでおよそ10年、認知症や寝たきりの生活になるリスクをはらんでいます。

定年後に好きなことができる、そのために資産を運用しなければ、といった話をよく耳にしますが、健康が前提です。認知症が進むと、「今」と同じことがほとんどできなくなります。

寝たきりになると、外に出ることも、風呂や排せつ、着替えも介助なしではできなくなります。定年後には「健康でいる間の資産」と「介護が必要になった場合の資産」の両方を考えて準備する必要があるのです。介護の経験のある人は「その通り」と同意してくれることでしょう。

そこで、まずは健康であることを想定し、必要なお金を算出してみましょう。

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健康で長生き

誰もが願うのが健康で長生きです。戦前には、50代は老人でした。
『サザエさん』という漫画をご存じでしょうか。初回のころのサザエさんでは、タラちゃんに「おばあちゃん」と呼ばれるフネさんは、なんと40代だったのです。波平さんもまだ50代前半です。

当時は、70歳を過ぎると「長生き」だったのです。2025年には戦後100年、私たちはなんと「長生き」になったことでしょう。しかし、戦後からあまり変わっていないのが「定年」です。

一昔前までは現役を退いて10年も経つと寿命を迎えました。現在も、「健康寿命」という点では、ちょうど現役を引退し、10年を超えると健康である状態から介護が必要な状態になる恐れがあるということです。

そこで、できる限り「健康」な状態を平均寿命まで保つことと、そのための経済的な支えも必要になってきます。それでは、一体どれほどの準備があれば、健康を保ちながら長生きすることが可能なのでしょうか。

健康で長生きするために

私たちが健康であるためには、衣食住の安定が必要です。さらに、病気やケガへの備え、生活習慣病の予防になるような備えが必要です。2020年現在、80~90代の高齢者のほとんどはバブル期に定年退職を迎えています。

当時は退職金も多く、現在の数倍から10倍で、退職と同時に海外旅行に出かけたり、移住したりする人もいました。家をもち、退職後も嘱託や天下りなど、70歳近くまで仕事をするチャンスがありました。

その後、安定した退職金と年金をもとに、老後を楽しむ人が増えています。趣味や学習、老人大学や老人向けのスポーツジム。健康で長生きをするために、身体を動かし、学ぶことで認知症の予防に努めている人もいます。

しかし、すべての高齢者に当てはまるわけではありません。こういったことを続けるには、経済的な余裕が必要なのです。

老後の資金はどこから?

現在、高齢者と呼ばれるのは65歳以上です。しかし、多くの企業は60歳を定年とし、その後、同じ会社の嘱託社員や系列会社、他の仕事で65歳までを繋いでいます。飲食業や個人商店、農業や漁業など自営業の人は、自分の仕事が続く限り、身体が続く限り働くのが一般的です。

しかし、こういった仕事をもつ人の間でも、さまざまな災害や都市開発などを機に、離職し、引退する人もいます。65歳を超えていれば年金の対象になりますが、それ以下の場合は早期受給として、かなり減額されてしまいます。そのため、何か仕事を見つけて収入を得ることが必要です。

65歳を過ぎると大半の人は離職し、年金暮らしになります。とはいうものの、年金だけで生活できるのでしょうか。老後を充実したものにするためには、一体どのくらいの資金が必要なのでしょうか。

年金はどれくらい?

65歳以上が生活を支えるために受け取る収入の大半は「年金」です。それでは年金は、実際にどれくらい受け取ることができるのでしょうか。

年金には色々な種類があります。私たちが一般的にいう年金は「老齢基礎年金」で、支払っていた人の大半が受けることができます。しかし、年金制度が厳しくなったのはここ10年ほどで、それ以前は、支払っていない人に対して厳しい罰則や請求がありませんでした。

会社員のように企業から「給与」を受け取っている場合は、「非消費支出」として「社会保険」が天引きされています。社会保険料には医療保険、介護保険、年金保険、雇用保険が含まれます。必然的に、給与のなかから支払っていくことになります。

しかし、自営の人は自分の収益から支払います。自営の人が必ず支払うのが「国民年金」です。会社員は年金保険のなかに、この「国民年金」が含まれています。

さらに、会社員の場合は国民年金の他に、「厚生年金」「企業年金」の三種類を支払うため、自営よりも会社員のほうが年金の支払い額は大きいのです。そのため、65歳になってからも「老齢年金」として、国民年金、厚生年金、企業年金の三種類を受け取ることができるのです。

国民年金だけを受け取る自営業の人は月額3~6万円(隔月のため支給時は2倍)、会社員の人は月額15万円~30万円支給されています。年金の差額は、年金を納めていた期間や企業によって異なります。

大企業で安定していると、現役時代の支払いも多くなりますが、年金の受け取りも大きくなります。「支払った分受け取れる」ということです。しかし、企業のなかには「倒産」してしまう場合もあります。この場合は、企業年金が受け取れません。

以前、日本航空(JAL)が不況と企業年金の重さで破綻しかけたことがあります。このとき、「会社を倒産させて0円になるか、それとも減額してでも会社を存続させるか」と説明されました。状況を把握した人は減額に納得していましたが、なかには理解できない人もいたようです。

その当時は、JAL以外にも月額50万円以上の年金を受け取っていた人もいました。しかし、その年金を支払うのは現役世代です。2018年現在では、2人が1人分の年金を支払っています。

現役の皆さんは、給与から年金として20万円も差し引かれたらどう思うでしょうか? 年金は、これからの世代の子どもたちには、さらに大きな負担になることが予想されています。

年金の受給額が不安になった方は、「日本年金機構」のホームページで、「年金見込額試算」というシミュレーションをしてみましょう。およその受取額が算出されます。

自己資金の準備

国は、老後の資金として2000万円は自己資金を用意してほしいと言っています。かつて退職金をたくさんもらっていた、現在の高齢者には可能だったかもしれません。しかし現在は、多くの企業で退職金が底をついている、と説明しています。

年金も少ない、退職金も出ないではどうしたらよいのでしょう。そのために必要なのが自己資金の準備です。一度は「年金見込額試算」をしてみましょう。特に、専業主婦や自営業で「国民年金」だけ支払っていた人は、65歳まで満額の支払いでも、受け取れるのは税込み6万5,008円です。

また、専業主婦の人は「夫の扶養」になりますが、自営、自分一人の場合はここから「健康保険料」が支払われます。さほど負担ではないでしょうが、それでも0円ではありません。

定年後に必要なお金

60歳で定年を迎え、5年間は第二の仕事をし、65歳から年金生活に入ったとしましょう。まず、毎月必要なお金の内訳は次のようになります。

・食費
・住宅費
・被服履物費
・電気ガス水道費
・交通通信費
・教養娯楽費
・日用品費
・交際費
・医療費
・車、ガソリン代
・医療保険、火災保険など

日本の平均寿命が延びる中、定年後のお金はいくら必要なの?

食費

まず、健康を保つために、最低限我慢せずに使ってほしいのが「食費」です。若いころのように外食でぜいたくすることはなくなっても、ごはんや野菜、肉、魚とバランスのよい食事は健康寿命にもかかわってきます。

最善の節約は自炊することです。料理が苦手な人は、今からしっかりと調理の腕を磨いておきましょう。

できる限りよいものを食べると、無駄なお金はかからず、健康を維持することになります。サプリメントなどを購入する必要もなく、元気に過ごすことができます。

住宅費

住宅費は持ち家か、賃貸かで大きく違います。持ち家の支払いが現役時代に終了していれば、残りの住宅費は「固定資産税」「維持管理費」のみになります。賃貸の場合、家賃は継続して必要です。ローンの支払いが完了していないと、こちらも継続して支払うようになります。

40代、50代の皆さんは、できる限り現役中に支払いの終わるローンの組み方を考え、より低い金利での借り換えをしておきましょう。家の改装が必要なら、50代前半のうちに済ませて、後々に引きずらないことも大切です。

賃貸はそのまま住むことができるわけではありません。家主の死去や都市開発などで、家主が変わることもあります。賃貸を続けるなら、どこかで持ち家を準備するか、公共の住宅に転居できるよう、情報を集めることを勧めます。

被服履物費

被服費はかからないように思えますが、高齢になると体型が変わり、若いころの服が着られなくなることがあります。足元がおぼつかないと、おしゃれなヒールの靴などをはくこともできません。

40代を過ぎたら、おしゃれな服もよいですが、飽きのこない、長く身に着けられる服や履物をそろえていきましょう。

電気・ガス・水道費

高齢になると、毎日入浴をしない人が増えてきます。しかし、清潔を保つことは、さまざまな感染症だけでなく、認知症の予防にもなります。また、80歳くらいになると、暑さに鈍く、寒さには弱くなります。

冷房を使わず、熱中症になりやすい人が多いのは、必ずしも水分が少なくなるだけではありません。このように暑さ・熱さに鈍い高齢者は、若い頃よりも冷房費より「暖房費」がかかることがあります。こういったことからも、高齢者の二人暮らしは、節約しているようでも、意外とお金がかかるようになります。

交通通信費

高齢者のあいだで、人気が上がっているのがネットを使ったサイトです。そこで、高齢者の二人暮らしでもパソコンやタブレット端末、スマホ、と通信費がかかります。タブレットなどの購入の際は、若い家族と一緒に購入しましょう。

使わない高級パソコンなど、「宝の持ち腐れ」になる、無駄な買い物をしている高齢者が意外と多くいます。

出かけることが多い人は、車を手放して公共交通を使う方法もあります。外に出かけたり、人とやり取りしたりすることは認知症の予防にもつながります。そこで、交通・通信費もしっかりと用意しましょう。

自家用車をもつことが節約のように見えますが、車は保険やガソリン代がかかります。特に高齢になると保険も高くなり、事故率も高まります。公共交通が可能な地域なら、公共交通での外出の方が安全で、節約にもつながります。

教養娯楽費

中高年の女性に人気のエクササイズジム「カーブス」は、月額で5,700円(税抜き)です。他にもゴルフや健康体操、スイミングとたくさんのスポーツを学ぶ場があります。しかし、いずれも月額5,000円以上はかかります。

さらに、老人大学や放送大学などで学び続ける場合、年間2~20万円ほど必要となります。このほかにも自治体が色々な取り組みを行っていますが、いずれも有料です。

しかし、自治体の体操教室などの費用は100円~500円と、かなり経済的です。高齢になったら、自治体の教室などにできるだけ参加するようにしましょう。

日用品費

トイレットペーパーに電池、シャンプーやせっけんと、私たちが生活する上で必要なものはたくさんあります。衛生面が悪くなると、健康にも影響してきます。清潔な体を保つためにも欠かせない費用です。

交際費

このなかで、特に節約することができるのは「交際費」「教養娯楽費」ですが、人とのふれあいが、認知症の予防や健康増進にもつながっていきます。旅行や趣味の教室、友人や家族とのお出かけや外食など、さまざまな交際費も用意しておきましょう。

医療費

一世代前は、10人が1人の高齢者を支えていたため、一定の年齢になると医療費は免除でした。しかし近年、高齢者医療の金額の高騰に、現在は1~2割負担となっています。病気になっても無料ではないので注意しましょう。

どうしても高額な医療を受けることもありますが、あらかじめ高額になることがわかっている場合は、「限度額適用認定証」を申請することで、自己負担額を超えた金額は戻ってきます。こういった制度は、自治体の保険課で相談できます、入院や手術が必要となった場合は、確認してください。

車、ガソリン代・医療保険、火災保険など

車を手放せば、車の維持費やガソリン代も0円です。しかし、災害や急な入院などの不測の事態に備えて、保険に入っておくことも大切です。そこで、40代、50代のうちに保険の見直しを一度しましょう。

若い世代は、死亡保険や三大疾病、ガン保険など、さまざまなリスクに備える必要があります。しかし、80代になって親兄弟にガンがいない場合、ガンにかかるリスクはかなり低い上に、高齢では手術や抗がん剤治療に耐えられるだけの体力はほとんどありません。

こういった場合、高額なガン保険に入っていても無駄になる場合があります。50代でも遺伝的にガンになる率が低い場合は、ガン保険の見直しをしてみましょう。2000円未満で入れる保険もあります。

自己資金の準備を

会社員夫婦の老後は、年金の支給額の平均が月額22万円です。ぜいたくをしなければ、十分に生活できます。しかし、現在の現役世代はさらに減額されると予想されます。そこで、毎月5~10万円は自己資金を準備する必要があります。30年なら1800万円~3600万円です。

そこで40代の皆さんは、「イデコ」や「ニーサ」など、より安全で高い運用率のある資金計画をしましょう。50代の皆さんは「イデコ」はメリットがありませんので、他の形で資金運用を考えるのも大切です。

まとめ

定年になったら家でのんびり過ごそうと思っていませんか。確かに、日々の疲れをためている現役世代にとっては、夢のような生活です。しかし、そのままの生活を続けると体が弱ります。

ネット社会の今、家にいればお金を使わない、という時代でもありません。高齢になっても続けられる仕事を見つけ、元気なうちは「働く」ことも考えましょう。収入は減っても、社会に出て収入を得るのは生きがいになります。

これからは、人生を全うするまで、仕事と生活を両立する時代になるのかもしれません。

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