はじめに
一般的に戒名は亡くなってから故人に付けられるものです。しかし、戒名の本来の意味は違います。生前戒名とはどのようなものか、生前戒名を付ける意味はどこにあるのか、生前戒名のメリット、デメリットなどを解説します。
戒名の本来の意味とは
戒名とは、仏門に帰依した人が仏教の修行の基礎である、戒律を守ることを誓うときに生前授かる名前です。大乗仏教や上座部仏教の両方で行われているもので、通常は師僧が出家した人に対して与えます。決して亡くなってから授かるものではなく、本来は生きている時に授かるもの
仏教には、「戒律」と呼ぶ修行者の生活規律があり、すべての修行者は常に戒律を守らなければなりません。戒律とは、自発的に規律を守りたい心の表れを意味する「戒」と、信条や規則を指す「律」を組み合わせています。
仏教の戒律は、人々から非難を受ける行いや悪事を働く行いを禁じており、戒律を守らなければ地獄に落ちると教えている厳しい規範です。戒名を受けるのは、とても重要であるとみなしています。
現代の戒名と法名
在来仏教の浄土真宗以外のほとんどは戒名を授け、浄土真宗が法名を授けています。また、日蓮宗では法号という名で授ける場合も。
しかし実際は人が亡くなった時に葬儀などで僧侶から授けられるもので、あの世へいった時に俗名のままでは浄土へはいけないとし、死後の仏弟子としての名前が戒名として付けられています。
本来の生前の信仰や戒律とは無関係なものです。法名では本来の意味での生前での信仰の誓いの要素はありますが、実際には生前の信仰活動とどこまで結びついているかは定かではありません。そのため、戒名と同様に死後の世界の名前として授けられています。
生前戒名を付ける理由
戒名を生前に付けることを、生前戒名と言います。戒名が死後に付けられるようになった現実を反映してそのように言われます。
そのため、生前戒名を特別な事だと感じるかもしれません。そこで現実に沿って、生前に戒名を付ける意味はどこにあるのかを考えてみましょう。最近では「終活」の一つとして生前に戒名を求める人も増えてきています。
仏教の信仰を持ち、仏弟子として生きなおす
定年後などに寺院巡りやお遍路に出る方もいます。また、中には写経や仏像彫刻を行う方も。仏教により心の安らぎをえたりし、生きる反省をする場合もあります。
残された人生を、覚悟を持って生きる
武田信玄や真田幸村など戦国武将の多くは、生前に戒名を授かったと伝えられています。
誰しも死訪れるものなので、生前戒名をつけることで、いまをしっかり生きる覚悟ができると考える方もいます。
生前戒名はどんな人に向いているのか?
生前戒名は、残された家族に迷惑を掛けたくない方や生前にお墓を購入しておきたい方に向いています。
家族に迷惑を掛けたくない人
自分が死ぬ前にやれることはやっておいて遺族に迷惑はかけないと考える人が増えています。生前戒名では、戒名料を遺族に負担を掛けず自分の財産から支払うケースが多いです。
生前にお墓を購入する人
お墓を将来承継する人がいなくなることを心配し、ご自身で自分や配偶者が入るお墓を生前に購入する人が増えています。
特に納骨堂や樹木葬など将来的に永代供養できる方式が選ばれています。生前墓でも戒名は必要となり寺院墓地の場合は宗派の関係が生まれ、寺院墓地の宗派を反映した戒名を付けるとより遺族の手間を省くことが可能です。
生前戒名のメリット
あえて生前に自分で戒名を受けるメリットにはどんなものがあるのか、ひとつずつ確認していきましょう。
自分の意向に沿った戒名を決められる
自分の信念やモットー、自分のあるべき姿などを反映させられます。また、好きな漢字を使うことも可能です。
ただし、宗派の考えや決まりもあり住職と相談して決めましょう。
家族に負担をかけない。
自分でお寺に費用を払い、好きな戒名を受け取っておくことで家族にお金を使わせず、手間もかけません。
また生前戒名は生前墓や位牌にも使え、もちろん死後も使えます。
生前戒名の注意点
生前戒名をつける際に気をつけたい注意点もあるので、メリットとあわせて覚えておきましょう。
生前戒名の存在を家族が知らないと無意味になる
生前戒名を作った場合、家族にその存在を知らせておくことが必要不可欠です。自分が満足した戒名であったとしても、家族が知らなければ使われることはありません。
家族が生前戒名を作ったことを知らずに、別の戒名を作れば費用が二重にかかってしまいます。
菩提寺以外で作ると断られる可能性も
生前戒名を申込む場合、菩提寺に頼むのが一般的です。戒名は宗派により異なる場合が多く、宗派が異なると断られる可能性があります。
また、菩提寺にとっては同じ宗派でもお布施が入るか否かの問題もあります。菩提寺で戒名を付け直すことになると費用が二重にかかるので注意しましょう。
まとめ
本来の意味での戒名とは、仏門に帰依した人が仏教の修行の基礎である、戒律を守ることを誓うときに授かる名前で、本来は生きている時に授かるものです。
しかし現代では本来の意味とは異なり、人が亡くなった時に葬儀などで僧侶から授けられるものになりました。あの世へいった時に俗名のままでは浄土へはいけないとされ、死後の名前が戒名として付けられています。
生前戒名を受けると、自分の意向に沿った戒名を決めらたりお布施を抑えたりすることが可能です。またお寺にとってもその方の葬儀の生前契約にもなります。
自身がもしもの時に家族に負担をかけないために、生前戒名を受けることを考えてみるのもおすすめです。ただし生前戒名を授与した時は、必ず家族に伝えることを忘れないようにしましょう。