父の遺産はゼロ!でも借金と生命保険金はありました いったいどうしたらいいの?

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相続はプラスの財産ばかりとは限りません。親が事業をしていた場合には、多額の借金や連帯保証をしていて、マイナスの財産のこともあります。相続では、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も引き継がなければなりません。

そこで、被相続人に借金があった場合、一般的には相続放棄の対策が取られますが、この時に生命保険をかけていたケースについて説明します。

相続放棄した場合でも生命保険は受け取れるのか?

生命保険には、相続放棄をしても保険金が受け取れるものと、受け取れないものがあります。
生命保険は、特定の人に病気や事故、死亡といった重大な出来事が起きた時、親族などの関係者に支払われるものです。

具体的には、「契約者(保険支払者)」「被保険者」「受取人」の3者がかかわっています。
では、どういう条件だと生命保険が受け取れるのでしょうか。

相続放棄をしても受け取れる生命保険金

相続放棄したとしても、法定相続人が受取人になっていれば保険金を受け取れます。

●「受取人=相続放棄をした人」と指定されているもの
● 受取人指定はないが「法定相続人=受取人」と約款等に定められているもの
こういった生命保険金は生命保険契約に基づいて支払われるため、受取人固有の財産となります。

  • ①相続財産ではないとされる

    相続放棄をすることは、「相続人が本来引き継ぐはずの財産や負債を一切受け取らない」ということです。しかし、なぜ生命保険金は受け取れるのでしょうか。

    それは、生命保険金が民法上の「相続財産」ではないからです。生命保険の「受取人固有の財産」であって、亡くなった人からの相続財産ではないからです。

    相続放棄が影響するのは、亡くなった被相続人固有の財産・債務の引き継ぎであって、受取人固有の財産である生命保険金には影響がありません。

    例えば、契約者・被保険者が夫、死亡保険金受取人が妻の場合、妻が受け取った死亡保険金は妻固有の財産になります。死亡した夫の財産ではないため、妻は相続を放棄しても死亡保険金を受け取ることができます。

    ただし、この死亡保険金は、税制上「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。

相続放棄をしてしまうと受け取れない生命保険金

一方、相続放棄をしてしまうと次の生命保険金は受け取れません。

● 被相続人が、自分自身を生命保険の受取人として指定している場合
終身払いの終身保険など、万が一の備えだけでなく、老後のための貯蓄を兼ねている生命保険だと、契約者本人が受取人に指定されているケースも少なくないので注意が必要です。

● 医療保険の入院給付金、ガン保険などで、受取人が亡くなった人自身となっているもの

● 亡くなった人が契約者のみに該当する生命保険の解約返戻金
こういった生命保険金は、亡くなった本人の財産と見なされ、本来の相続財産として扱われます。そのため、相続放棄をしてしまうと保険金が受け取れません。

なお、積立保険の解約返戻金についてですが、被相続人による積立式の生命保険については、死亡に伴い保険契約が解約され、一定の解約返戻金が支払われるというケースがあります。この解約返戻金は、あくまで契約当事者である被相続人に対して支払われるものであるため、当然、被相続人の相続財産となります。

このような被相続人の財産となる解約返戻金などの保険積立金を、相続人が使ってしまったり、処分したりすれば、それは「法定単純承認事由」となり、相続人は以後、相続放棄や限定承認ができなくなるのが原則です。

生命保険金を受け取った場合の相続税

生命保険金を受け取った際の相続税についても、いくつか注意すべきことがあります。

「みなし相続財産」として受取人に課税される。

相続放棄をしても生命保険金を受け取れる場合でも、税金については別で、亡くなった人が保険料を負担していた生命保険金は、「みなし相続財産」という扱いになり,
受取人が課税されます。

みなし相続財産とは、被相続人が亡くなったことで発生する財産を言い、死亡保険金や死亡退職金などがこれにあたります。
民法上の相続財産ではありませんが、税務上は相続財産とみなされます。

相続税法3条1項1号で、被相続人が保険料を支払った生命保険のうち、被相続人の死亡によって保険金が支払われるもの(いわゆる死亡保険金など)は、相続税の課税対象と位置付けられています。

相続放棄をすると非課税枠が使えない。

死亡保険金は「残された家族の生活保障」という大きな目的をもった遺産のため、一定の生命保険金が非課税とされています。相続人が保険金を受け取る場合に限り「500万円×法定相続人数」の額が非課税となります。

しかし、相続放棄をすると相続人とはみなされないため、生命保険金の非課税金額の適用を受けることはできません。

・生命保険金の非課税金額
相続放棄をした本人は非課税の適用を受けることはできませんが、非課税金額を計算する際の法定相続人の人数には、相続放棄をした人も含めます。
相続税法第19条の3には、「相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人」と規定されています。

相続を放棄した人がいても、相続しなかった場合の人として考えることになり、相続を放棄した人がいても、その人の分(1人当たり500万円)の非課税枠を計算に入れることができます。

例えば、法定相続人が3人(妻)・(子A)・(子B)、死亡保険金受取人が2人(妻)・(子A)で(子A)が相続放棄した場合、子Aは死亡保険金を受け取れますが、非課税の適用は受けられません。妻は「500万円×3人=1,500万円」まで非課税の適用を受けられます。

相続税が課税される生命保険金は、次の計算式で算出します。
その相続人が受け取った生命保険金の金額―(非課税限度額)×その相続人が受け取った生命保険金の金額÷すべての相続人が受け取った生命保険金の合計額=その相続人の課税される生命保険金の金額

・生命保険の受取人は、生命保険契約によっては、複数の人が分割して受け取ることも可能です。
・相続人以外が取得した生命保険額を含むことはできません。
・法定相続人の人数に入れることができる養子は、被相続人に実子がいない場合には2名まで、実子がいる場合には1名までに限られています。

相続税の基礎控除は適用されます。

相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人数」です。

例えば、法定相続人が3人(妻)・(子A)・(子B)で、全員が相続放棄した場合でも、相続税の基礎控除は適用されます。
相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」となります。
また、死亡保険金が基礎控除額の範囲内であれば、相続税はかかりません。

相続税以外にもある生命保険と税金の関係

生命保険は、契約方法によってかかる税金が異なります。生命保険では、下記の点が重要です。
・誰が契約者なのか
・誰が被保険者なのか
・誰が保険金の受取人なのか

保険料を負担している人によって、所得税や贈与税が課税される場合があります。なお、被保険者とは保険の対象となっている人のことです。

  • ①生命保険の保険料を被相続人が負担していた場合は、相続税がかかる。

    生命保険の保険料を被相続人自身が負担していた場合は、生命保険金に相続税が課税されます。

    例えば、父親が自分自身を被保険者とした生命保険に加入し、保険金の受取人を子供とした場合、生命保険金に対して相続税が課税されます。

  • ②生命保険の保険料を保険金受取人が負担していた場合は、所得税がかかる。

    生命保険の保険料を保険金受取人が負担していた場合は、受取人の生命保険金に所得税が課税されます。

    例えば、子供が父親に生命保険をかけ、保険金の受取人を自分自身と指定した場合、生命保険金に所得税が課税されます。

  • ③保険料負担者、被保険者、保険金受取人が異なる場合は、贈与税がかかる。

    保険料負担者、被保険者、保険金受取人が全て異なる場合は、生命保険金に贈与税が課税されます。

    例えば、妻が夫に生命保険をかけ、保険金の受取人を子供とした場合、生命保険金に対して贈与税が課税されます。

生命保険を受け取った後でも相続放棄は可能か

生命保険金を受け取った後に、相続を放棄することができるケースと、受け取った後からではできないケースがあります。

相続放棄ができるケース

生命保険の受取人が、亡くなった本人以外であれば、生命保険は相続される財産に該当しないので、生命保険を受け取った後でも相続放棄をすることが可能です。

また、生命保険の受取人が指定されていない場合でも、相続人のそれぞれが保険金を請求する権利を持つ者として扱われるため、生命保険は財産には該当せず、受け取った後でも相続放棄が認められます。

相続放棄ができないケース

生命保険の受取人が亡くなった本人に指定されている場合は、生命保険は契約者の財産に該当するので、保険金を受け取ってしまうと後から相続放棄をすることはできません。

亡くなった人の財産を一部でも消費してしまえば、相続を承認したもの(単純承認)と判断され、相続放棄が認められなくなる可能性があるのです。

次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。」(民法921条一)
生命保険の受け取りは、上記民法の『相続財産の一部を処分したとき』に該当します。

原則として、相続を承認したと判断されると、後からの訂正はできません。

生命保険の種類

生命保険は、広義には死亡や病気、ケガ、介護など、人の生命・身体に関するリスクに備える保険全般を指します。中でも代表的なものが、被保険者が死亡したときに保険金が支払われる死亡保障の保険(死亡保険)です。

今回は、相続人が相続放棄した場合に、受取人になっている保険が対象になります。一般的に、終身保険などが対象となるでしょう。養老保険などは、被相続人本人が受取人になっている場合があります。

生命保険(死亡保険)には、「定期保険」「養老保険」「終身保険」の3種類があります。ポイントは、保障期間と、貯蓄性の有無などです。

  • ①定期保険

    掛け捨てタイプの保険料が手頃な生命保険で、「定期」の意味は、保険期間が一定期間であることで、定められた保険期間中に、保険の対象となる人(被保険者)が亡くなった場合に、遺族が死亡保険金を受け取ることができるものです。

    定期保険は、保険期間終了時に戻ってくるお金(満期返戻金)はなく、貯蓄性がありません。

  • ②養老保険

    一定期間のみ保障・貯蓄性のある保険で、死亡保障と貯蓄を組み合わせた保険です。

    契約中に亡くなれば死亡保険金を、無事に契約期間満了を迎えられれば満期保険金を受け取れる保険が養老保険です。

    死亡保険金と満期保険金は同額で、死亡保障を付けつつ貯金を積み立てられる保険として広く知られていました。現在よりも予定利率が高い時代には人気がありましたが、現在では養老保険の予定利率が過去と比較して低く、新規加入は増えていない状況です。

  • ③終身保険

    一生涯保障してくれる保険・貯蓄性のある保険で、保険期間は一生涯で、途中で解約しない限り、遺族などは必ず死亡保険金を受け取ることができます。保険料の支払いは毎月が基本ですが、保険期間が設定されているものとないものがあります。

    終身保険は、解約した時に受け取ることができる解約返戻金があり、一般的に加入している期間が長くなればなるほど、多くの解約返戻金が受け取れます。

まとめー今回のポイント

相続放棄した場合でも受け取れる生命保険は
●「受取人=相続放棄をした人」と指定されているもの
● 受取人指定はないが、「法定相続人=受取人」と約款等に定められているもの
これらの生命保険金は生命保険契約に基づいて支払われるため、受取人固有の財産であり、相続放棄をしても受け取ることができます。

もし自身が保険契約者で、借金がある場合は事前にチェックしておいてください。
家族に借金を相続させないためにも、事前に手立てを考えておく必要があります。

終活と相続のまどぐち