はじめに
介護保険は40歳以上の健康保険加入者全員が加入しないといけないだけでなく、介護保険料も死亡するまで支払う義務があります。
しかし、生活の困窮など経済的な理由で介護保険料を支払えない人も増えつつあり、高齢化社会の実情を踏まえた新しい介護保険制度の制定が求められています。
そこで今回は介護保険料が支払えない際の対応やペナルティについて解説していきます。
介護保険とは
介護保険とは社会全体で高齢者の介護を支える事を目的として保険で、2000年から施行が開始しました。
基本的には健康保険加入者からの保険料と税金によって運営されており、保険の運営は各自治体が担っています。
また加入者は費用の1割を自己負担すれば介護サービスを受ける事が可能となります。
被保険者の区分
介護保険では65歳以上を第1号被保険者、40~64歳までを第2号被保険者として区分しています。
どちらも保険料の支払い義務はありますが、受給者として介護サービスを受ける事が出来るのは第1号被保険者のみであり、それ以外の受給者は特定の理由がない限りはサービスを利用する事は出来ません。
介護保険サービスの内容
要介護に認定された場合は訪問介護やデイケアなどの各種介護サービスを低負担で利用する事が出来るだけでなく、ケアマネージャーによるケアプラン作成や介護についての相談などにも対応してもらえるようになります。
また要介護認定については自治体や地域包括支援センターの調査員によって行われる審査に通れば認定されますが、必ずしも審査が通る訳ではないのでしっかりと介護の必要性や今の状況を伝えるようにしましょう。
介護保険の必要性
支援や介護が必要ない人からすると強制的に徴収される介護保険に対して否定的な考えを持っている人も多いと思います。
ただ厚労省が発表している介護保険事業状況報告がによると、65歳以上で要支援もしくは要介護認定を受けている人は18.3%であり、5人に1人が介護保険を利用している状況です。
また介護を必要とする原因の多くは認知症や脳卒中のような健康的な生活だけでは予防出来ない物が多く、今は健康だっだとしても高齢者になってから重い病気やケガによって生活が難しくなる可能性は誰にでもあります。
つまり今は必要ないとしても、将来的に自分も含めた多くの人が支援や介護が必要になる事を考えれば、健康なうちから介護保険をしっかりと支払う事は大切と言えるでしょう。
介護保険の自己負担額
介護保険の限度額は要支援や要介護のレベルによって違います。基本的にはケアマネージャーが限度額に合わせてケアプランを作成しますが、一部は自己負担となります。
また介護保険が開始した当時は要介護の度合いに関わらず1割負担でしたが、現在は少子高齢化の影響などもあり所得に合わせて自己負担の金額が変化します。例えば高齢者であっても現役世代と同等の収入を持っていたり、年金収入が340万円以上ある場合は自己負担の割合が3割になります。
要支援1: 限度額50,320円・負担額1割5,032円・負担額2割10,064円・負担額3割15,096円
要支援2:限度額105,310円・負担額1割10,531円・負担額2割21,062円・負担額3割31,593円
要介護1: 限度額167,650円・負担額1割16,765円・負担額2割33,530円・負担額3割50,295円
要介護2:限度額197,050円・負担額1割19,705円・負担額2割39,410円・負担額3割59,115円
要介護3:限度額270,480円・負担額1割27,048円・負担額2割54,096円・負担額3割81,144円
要介護4:限度額309,380円・負担額1割30,938円・負担額2割61,876円・負担額3割92,814円
要介護5:限度額362,170円・負担額1割36,217円・負担額2割72,434円・負担額3割108,651円
介護保険料を滞納した場合
介護保険料の支払いを滞納していると滞納期間に沿ったペナルティを受ける事になります。
最初は電話や訪問などによって納付の督促がありますが、これを無視していると介護サービスの自己負担額が増えたり一時的に給付金が停止する事になります。
また更に滞納期間が長くなると預金口座や生命保険が差し押さえられてしまうので、何らかの理由で支払いが難しい場合は滞納するのではなく自治体の窓口などに相談するようにしましょう。
1年以上滞納した場合
介護保険料を1年以上滞納すると、基本的には介護サービスが全額自己負担となります。この場合は滞納分を支払い、各自治体の担当窓口に領収書を提出すれば滞納処分が解除され、支払額の9割が2ヶ月後に返還されます。
1年6カ月以上滞納した場合
介護保険料を1年6カ月以上滞納した場合も介護サービスが全額自己負担になります。
さらに滞納分を支払う事によって返還される給付金も滞納期間に合わせて減っていくので、滞納に気付いた時点で速やかに支払うか各自治体の担当窓口に相談するようにしましょう。
2年以上滞納した場合
延滞期間が2年を超えると介護サービスが自己負担になるだけでなく、時効が成立するので滞納分の支払いを行う事が出来なくなります。
また自己負担が軽減される高額介護サービス費の支給も停止され、滞納分の保険料を補填するために預金口座などの各種財産が差し押さえられる可能性も出てきます。
介護保険料の滞納理由
サラリーマンやOLのように会社勤めをしている場合は、介護保険料が給与から自動で控除されるので滞納する事はないですが、定年を迎えると納付書で支払うようになります。
なので自分で支払いを行わないといけないのですが、高齢者になると人によっては物忘れが激しくなり納付書や督促状を受け取っていても支払いを忘れてしまう可能性があります。もちろん口座振替も出来ますが預金残高によっては審査が通らない場合もあるので、家族や友人同士でお互いに注意喚起するようにしましょう。
介護保険料の減免事由
介護保険料の支払いは相応の事由が認められた場合のみ減額や免除の措置を受ける事が出来ます。
例えば倒産や失業、事故などで収入が大きく減った時や、災害によって自宅や家財に損害が出た場合は減免措置が適用されます。
また漁師や農家などは自然環境の影響を受けやすいため、異常気象で不漁や不作になった場合でも申請が可能です。
ただ減免措置は自動で適用される物ではなく、自分で各自治体の担当窓口に相談や申請をしなければいけないので注意しましょう。
介護保険料の減免期間
介護保険料の減免期間は申請月から年度末までであり、納付済みの保険料は減免の対象外となります。
また保険料を滞納していると金額に関わらず減免措置の対象外となってしまうため、申請する前に滞納金の有無について確認するようにしましょう。
もし今年度の支払いだけでなく来年度以降の支払いも厳しい際は、減免の期間を更新する事も可能なので、困った場合は早いうちに自治体の窓口などに相談する事をオススメします。
まとめ
近年の日本では少子高齢化の流れが年々加速しているので、国民全体が互助の精神を持って助け合っていかなければいけません。
今回ご紹介した介護保険はその代表的な物であり、安心した老後を過ごすためには必要不可欠です。
仮に保険料の納付が難しくなったとしても、ちゃんと制度について知っていれば保険料の減免や支払期限の延長を受ける事が出来るので今からしっかりと勉強するようにしましょう。