相続登記を放置するとどうなるの?

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はじめに

他人から土地や建物などの不動産を相続する場合は名義を変更する必要があるのですが、この手続を相続登記と呼びます。所有権の移譲に合わせて必要書類を法務局に提出しなければいけないのですが、手続きが複雑な事から相続登記を後回しにして忘れてしまう人が多いです。

そこで今回は相続登記を放置した場合に起こりうるトラブルやその対策について解説していきます。

相続登記が放置されやすい理由

相続登記を放置するとどうなるの?

近年になって相続登記の放置が社会的に問題となっていますが、放置される理由の多くは相続登記の必要性について知らない、もしくは自動で変更されると勘違いしているからです。

実際には各種書類を作成して法務局に提出しないといけないのですが、相続登記は現段階では義務化されていないですし、手続きに関する期限もないので放置が多発しています。

また相続登記には土地や不動産の評価額に対して0.4%の登録免許税がかかるので、相続する土地や不動産の価値が高ければ納めなければいけない税金も増えます。さらに相続登記の複雑な手続きを司法書士などの専門家に依頼すれば依頼料もかかってくるので、そういったコストを嫌って相続登記を行わないケースもあります。

遺産分割協議が成立しない

土地や不動産の相続について遺言書に記載がない場合は、遺産分割協議を行い分配方法について相続人全員の同意を得る必要があります。この際に1人でも反対する人がいると協議は成立せず、相続登記による名義の変更が出来なくなります。

そのような状態が長く続けば土地や不動産に関する権利や納税義務が宙に浮いたままになってしまいます。

知らない不動産が発覚した

相続登記の放置は相続人が全ての土地や不動産を把握出来ていない場合にも発生します。

特に故人が遺言書やエンディングノートに記載を忘れてしまう事はよくありますし、原野商法や不動産投資詐欺などに引っかかり購入した土地や不動産について家族に黙ったまま亡くなる人もいます。このような場合だと固定資産税が低いので相続しても負担にならないケースが多いですが、それとは別に相続税が跳ね上がってしまう可能性はあるので注意しましょう。

相続登記を放置した場合

相続登記を放置するとどうなるの?

相続登記の放置に関する法的罰則はないですが、様々なトラブルに繋がる可能性があるので注意しましょう。

土地や不動産の売却が出来なくなる

基本的に故人名義の土地や不動産は売却する事が出来ません。なので管理費や修繕費などの負担を減らすために売却や賃借をするためには相続登記が必要ですし、不動産を担保にした借入れについても同じです。

2015年以降は保安上もしくは衛生上有害を与える危険性がある空き家については特定空家に指定され、固定資産税の優遇措置が適用されなくなります。この特定空家に指定された後に自治体からの勧告に従わないと、さらに最大50万円の罰金が課される事もあります。

また自分以外の相続人が故人の土地や不動産を利用して担保を受けている場合に返済を滞納すると、その土地や不動産は差し押さえられています。仮に差し押さえが認められると、担保を受けている相続人だけでなく自分の相続権も無効化されてしまい相続する事が出来なくなるので注意しましょう。

権利関係が複雑化する

所有者が亡くなった土地や不動産は相続登記によって名義変更されるまでは、相続人全員の共有財産となります。

その際にしっかりと相続登記を行えば問題ないですが、もし相続登記を放置したまま自分や他の相続人に子供や孫が生まれると、その子供たちにも相続権が発生する事になります。

もちろん相続人が増えれば増えるほど、相続登記で用意しないといけない書類や手間も増えていくので、なるべく早い段階で相続登記をするようにしましょう。

近隣住民との関係悪化

相続登記が放置され土地や不動産の管理を行う人がいなくなると、治安が悪くなるだけでなく野良犬や野良猫の巣になり近隣住民に迷惑がかかる可能性があります。また場合によってはゴミの不法投棄場所になってしまいゴミや悪臭によって住環境が悪化する事もあるので、相続した土地や不動産はしっかりと責任を持って管理しなければいけません。

もし遺産分割協議が上手くまとまらず誰が相続するのか決まらなかったとしても、相続権を持っている人が

相続登記の放置を防ぐためには

相続登記を放置するとどうなるの?

相続登記の放置を防ぐためには相続人が土地や不動産を相続した時に面倒くさがらずに相続登記を行うのが一番ですが、現実には葬儀の執り行いや遺産分割協議などで忙しく手が回らない事はよくあります。

なので最も効果的なのは、被相続人が相続登記に関する文言を遺言書に記載し遺言執行者が必要な手続きを行うという形です。遺言書に記載すれば法的効力が期待出来ますし、遺言執行者は相続人の代表として遺言の内容を実現するために努力する義務が発生するので相続登記を放置するリスクは大きく下がります。

もちろん遺言執行者は相続人同士が話し合い合意の上で決定するものなので、相続登記やその他手続きが面倒くさいという理由で誰かに押し付けてはいけません。しっかりと当事者間で話し合い、後腐れがないようにしましょう。

専門家へ依頼する

相続登記を行うためには各種書類を作成して法務局に提出しなければいけないのですが、仮に書類に不備があれば修正や再提出のために何度も法務局に足を運ばなければいけない上に、法務局は平日しか開いていないので、会社勤めの人が一人で手続きを行うのは非常に大変です。

そこで司法書士のような専門回へ依頼すれば、ほとんどの作業や手続きを代行してくれるだけでなく、相続税対策や各種特例の適応なども行ってくれるのでオススメです。基本的には10~20万円程度が相場となっているので、その金額で無駄な時間や手間を省けると考えれば決して高くはないでしょう。

ただ司法書士だからといって全員が相続登記や相続税対策に詳しい訳ではないので、事前に近隣の司法書士を調べるなどしてから相談するようにしましょう。

まとめ

今回ご紹介した通り、相続登記を放置してしまうと土地や不動産を有効活用する事が難しくなり、負債となってしまう危険性があります。

また相続登記の放置化が多発している事から、義務化に関する議論も進んでおり将来的には相続登記を行わないと罰則が課せられるようになる可能性も十分考えられます。

なので今のうちから、専門家に相談するなどして相続登記をしっかりと行うようにしましょう。

終活と相続のまどぐち