はじめに
定年などで長年勤めてきた会社を退職すると、退職金として大きな金額を受け取る事が出来ます。
しかし実際には退職金にも給与や所得と同じように税金がかかるので、節税対策をしっかりと行わなければ自分が知らないうちに損する事になります。
そこで今回は退職金にまつわる税金制度や効果的な節税方法について解説していきます。
退職金に関する税制
通常の給与に所得税がかかるのと同様に、退職金も受け取る際には所得税を支払わなければいけません。ただし、退職金は長期間の勤務に対する報酬であり、退職後の生活資金になるという考え方から退職金にかかる所得税には優遇措置が設定されています。
例えば、実際に課税の対象となるのは退職金の半額ですし、退職金所得控除という名目で勤続年数によって一定の金額も控除する事が可能です。また退職金にかかる所得税は分離課税として毎月支払われる給与とは別枠での計算となります。
退職金の受け取り方法
退職金の受け取り方法には一時金方式と年金方式の2通りが存在しています。
自分の退職金がどちらの方式で支給されるかは勤務している会社ごとに違いますが、会社によっては自分の希望の方式を選ぶ事も可能です。
また一時金は退職所得として、年金は雑所得して計算されるので受け取り方法によって支払う税金が異なる点に注意しましょう。
退職金をまとめて受け取る一時金方式
一般的な退職金の受け取り方法であり、退職金が一括で支給されるという特徴があります。一時金は退職所得として分離課税の対象になるので、税金の負担を軽くしたい人に向いています。
また大きな金額がまとめて入ってくるので、退職金でローンの返済や住宅のリフォームを考えている人にとっても相性が良い方法です。
退職金を分割で受け取る年金方式
年金方式では退職金を分割して年金として受け取るので、老後の生活資金に関する不安や高齢者を狙った特殊詐欺のターゲットになるリスクを軽減する事が出来ます。
また企業によっては未払いの退職金を一定の利率で運用してくれる場合もあるので、長期的に見れば一時金方式よりも総支給額が多くなる可能性も考えられます。
一方で年金方式による所得は雑所得として分類されるので、分離課税の対象にはならず公的年金などと合算された上で課税額が決定します。なので単純に所得が増える事によって所得税や住民税だけでなく、社会保険料も増額となってしまいます。
一時金方式と年金方式の選択
実際に一時金方式と年金方式どちらで退職金を受け取った方が税制上のメリットが大きいのかは、その人の勤続年数や収入額によって変わってきます。
ただ基本的には一時金方式の方が、勤続年数によって非課税枠が増えていくので年金方式より税制上は有利とされています。
また最近では公的年金に対する課税強化の流れもあるので、企業が未払い分の退職金の運用を行ってくれるなど特殊な条件や状況がない限りは退職金は一時金方式で受け取る事をオススメします。
退職金を受け取る際の注意点
退職金を受け取る際には退職所得申告という手続きを行わないと、20.42%の税率で源泉徴収がされてしまうので注意しましょう。手続き自体は申請書を最寄りの税務署に提出するだけで問題ないので、時間や手間はかかりません。
また何かしらの事情があり退職所得申告を行わない場合は、所得税の納付のために確定申告の手続きが必要になりますが、この際に納めすぎた税金があると超過分を還付金として受け取る事が出来ます。
退職金と公的年金による所得増加の問題
退職金を年金方式で受け取る場合は公的年金控除が適用されるので、税金が適用される所得額は実際の収入額よりも低くなります。
しかし退職金の年金と公的年金の2つの支給が開始されると、それらが合算される事によって雑所得を含む所得額が膨らむので、結果として支払わないといけない税金も増えてしまいます。
また雑所得にかかる税率は、不動産収入や事業収入などの年金以外による収入源も合算した金額によって決定するので、退職後も何かしらの所得を持っている場合は相対的に高い税率が適用される事になります。
年金方式を選択する場合の節税対策
年金方式を選択する場合でも節税を行う事は十分に可能です。例えば、65歳から公的年金の受給を予定している場合は、退職金が発生する60歳から64歳までの計5年間で分割して受け取る事によって税金対策となります。
また年金による所得増にも基礎控除や配偶者控除などの各種控除は適用されるので、それらを上手く活用すれば実質的な課税額を抑える事も可能です。
年金方式で受け取る場合の社会保険料への影響
退職金による所得増加は所得税や住民税だけでなく、介護保険料などの社会保険料にも影響を与えます。
例えば介護保険料は住民税の課税状況や合計所得金額に応じて段階的に増えていくので、年金受給によって所得が増加すると負担割合も比例して上昇します。
また国民健康保険料は合計所得金額から33万円を控除した金額によって税率が変化するので、こちらも退職金を年金として受給する事によって負担が増加します。さらに合計所得金額が一定より低い場合に均等割や平等割に適用される軽減制度も利用する事が出来なくなるので注意しましょう。
まとめ
今回ご紹介した通り、退職金は金額が大きくなる場合が多いので、しっかりと税金制度を把握し節税対策を行う事が大切になってきます。
また最近では、税金や原資の関係から年金方式を採用する企業も増えつつあるので、退職金でローンの返済や住宅のリフォームを考えている人は退職後のライフプランについても再考する必要があるでしょう。