お墓にお供えする花はどうやって選べばいいの?

お墓

はじめに

お墓へのお供えに花は欠かせませんが風習として根付いた歴史はかなり古く、イラクで発掘されたネアンデルタール人の人骨の周囲からは花粉の成分も発見されています。 また古来の埋葬方法はほとんど土葬であったため、強い毒性をもつ樒(しきみ)をお墓に供え、動物が掘り返したり荒らしたりする事を防いだともいわれています。

ただ花のお供えについては、歴史を遡ると元々は自然発生的なものであり、宗教上の理由には関係しないというのが現代では通説とされています。 一方で、お釈迦様の教えでは遺体には花や香料などを供えて礼拝するよう伝えていた事から、こういった教えが今のお花や線香の文化に繋がったという説もあります。

いずれにせよ、お墓参りで使用するお花や線香のルーツは奥深いですが、故人の冥福や安らかな眠りを願う気持ちを表している事に変わりはありません。

お墓にお供えする花の種類

お墓にお供えする花はどうやって選べばいいの?

お墓にお供えする花を「供花(きょうか、くげ)」または「仏花(ぶっか)」と呼びますが、特にこれと決まったものはありません。基本的には自由に選べますが、四十九日の法要までは白い花をお供えすることが多く、花の種類では菊などが選ばれているようです。

ただ特に決まりがないとはいえお供えに適した花はいくつかあり、菊のように長持ちする花や季節の花が好まれる傾向にあります。

●春にお供えする花

春にお供えする花としては、キンセンカ、菊、スターチス、カーネーション、フリージア、孔雀草、トルコキキョウ、アネモネ、アイリスなどが好まれています。

●夏にお供えする花

夏の盛りは切り花が枯れやすく、また花立ての水も腐敗しやすいため、造花をお供えしても問題はありません。生花ではヒマワリ、マーガレット、ユリ、ケイトウ、りんどう、グラジオラス、ヤグルマ草といった花をお供えにします。

●秋にお供えする花

秋の供花にはコスモス、菊、ススキ、りんどう、センニチコウ、ケイトウ、ワレモコウなどがあります。秋のお彼岸に墓参りをする際は、夏に伸びきった雑草を処理しておくとよいので、軍手や剪定用のハサミなど必要な用具を揃えておきたいところです。

●冬にお供えする花

冬のお供えにはストック、スイートピー、菊、サザンカ、アイリスなどが好まれています。ストックは開花時期が冬と重なっており、「門出」の花言葉をもつスイートピーも新春に相応しい供花として人気があります。

お供えする花はスイートピーのように「花言葉」から選ぶのもおすすめであり、コスモスには愛情、アイリスには希望などの花言葉があります。故人への気持ちを花言葉であらわすのもよいでしょう。

また花をお供えする場合、マナーとして花が枯れた後のことも考えておかなければなりません。遠方からのお墓参りでは後日の回収が難しくなるので、その日に持ち帰りできるよう袋なども用意しておくとよいでしょう。

お供えに向いていない花の種類

お墓にお供えする花に厳密な決まりはありませんが、長持ちせず枯れた後に花びらが散逸してしまう花は、美観を損ねてしまうためお供えに向いていません。

また毒性の強い花は、お参りする人、墓地を管理する人にとって危険なため、お供えには不向きとされています。見た目は美しくても花や茎など全体に毒があるものも多く、水仙や彼岸花(曼珠沙華)、キョウチクトウなどの花は避けるべきだといわれています。

さらに毒性の強い植物は燃やして出る煙にも毒があるため、処分にも注意が必要です。トゲのある花は怪我をしてしまう可能性があるため、バラやアザミなどはお供え向きではないとされています。ユリのような香りの強い花もお供えには不向きとされており、中には虫を寄せ付けてしまう花もあります。もしユリをお供えしたい場合は香りの穏やかな鉄砲ユリがよいでしょう。

弦が伸びてしまうアサガオもお供えには向いておらず、首から落ちてしまう椿やサザンカも縁起が良くないとされ、お供えに使われることは少ないです。

お供え用の花の選び方

お墓にお供えする花はどうやって選べばいいの?

お供え用の花を選ぶ際は花の色から組み合わせを考えるのが一般的です。 供花では色彩豊かな組み合わせが好まれる傾向にあるので、3色を組み合わせる場合は「白・黄・紫」または「白・黄・ピンク」が人気となっています。

また4色では「白・黄・赤・紫」や「白・黄・ピンク・赤」を、5色の場合は「白・黄・ピンク・赤・紫」の組み合わせになるように選ぶ人が多いです。

セット販売の花であればバランスのよい配色になっていますが、故人の好きだった花をメインにする時は他の花を引き立て役としてアレンジするのがおすすめです。 墓地や霊園では華やかな供花をよく見かけますが、世代によってお供えの考え方が違うので年配者とお墓参りをする際は3色程度に抑えておくと無難です。

お墓にお供えする花には地域性もあり、お彼岸やお盆などの墓参りシーズンになるとスーパーなどで「しきみ」が販売されることもあります。本来は神道のお供えに使う花ですが、神仏習合の影響が残る地域では宗教や宗派に関係なく樒が一般的になっている場合もあります。

価格面からお花を選ぶ場合はスーパーやコンビニエンスストアでは安いもので300円、高くても800円前後なので、お墓が近く頻繁にお墓参りする場合はこの価格帯が標準になります。また花屋で購入する場合は1,000円程度が目安になりますが花の種類や色の組み合わせについても相談に乗ってもらえますし、予算内でお任せすることもできます。

お供え用の花を宅配便で送る場合は送料も込みで5,000円程度が一般的ですが、春や秋のお彼岸など墓参りする人が多いシーズンは花立ても一杯になってしまいます。時期によっては少しボリュームを落としておく配慮も必要でしょう。つい忘れがちですがお墓の花立ては2本なので、花も必ず2本セットで購入するようにしましょう。

宗教ごとの違い

お墓にお供えする花はどうやって選べばいいの?

お墓にお供えする花には宗教ごとに違いがあります。

例えば仏教では奇数になる本数で花束を作り、必ず対にするのがマナーとされています。花の色や種類に厳密な決まりはありませんが、菩薩の修行となる六波羅蜜の一つ「忍辱(にんにく)」では、花を供える行いが供養する人の心を清めるとされています。

お供えの花には極楽浄土をあらわす意味もあり、やがて枯れてしまう様から命の尊さや儚さを知る事も目的の一つとなります。 お彼岸の墓参りでは花立ても直ぐに一杯になってしまうことから、花の代わりに卒塔婆を用意する人もいますが、浄土真宗ではお墓に卒塔婆を立てることがないので注意するようにしましょう。

神道のお供え

神道の場合は花ではなく「榊(さかき)」をお供えします。サカキやヒサカキ、ホンサカキといった種類がありますが、お供えにはどの榊でも構わないとされています。

榊には邪気払いや周囲の空間を清める力があるとされており、木に神と書く文字からも縁起が良く、神様との繋がりを表すといわれています。祭事においては斎場を常緑樹で囲む目的で使用されていた事もあり、榊は神道に欠かせない物となっています。

また榊は玉串としても使われており、改まったお参りの際には紙垂や木綿をつけた榊の枝を神職や参拝者が奉納する事が一般的です。近年では故人の好きだった花をお供えする事も増えてきていますが、榊だけは欠かす事ができないので必ずお供えします。

キリスト教のお供え

キリスト教では死者の魂は天に召されるという風に考えられているので、お墓に魂が宿るといった仏教的な考え方はなく、お墓はあくまで故人の記念碑として捉える人が多いです。

花についても供花ではなく「献花」として故人へ敬意を表する意味として捧げられます。 献花は故人が好きだった花でも構いませんが、基本的には白い花を捧げる事が一般的とされており、白のカーネーションやユリが好まれています。

ただし仏花(仏教式の花)はマナー違反とされているので注意するようにしましょう。 キリスト教ではお墓や付帯物の形状も仏教と異なるため、花束やフラワーリングを墓石の上に置くことが多いですが、近年では花立てを設置したお墓も増えています。

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