はじめに
終活という言葉が使われるようになって10年以上経ちますが、当初は「人生の終焉に向けた準備活動」という意味合いでした。
しかし一般社団法人終活カウンセラー協会では「今を・より良く・自分らしく生きる・活動」として終活を定義しています。 「終活」と言葉にする機会は増えていますが、何をするべきか、何から始めてよいか分からないまま時間が経過することも多く、身近に相談相手もいないため1人で抱え込んでしまうケースも多く見受けられます。
そんなときに頼れるのが終活の専門家としてシニアの悩みに応える事を目的とした「終活カウンセラー」です。
終活カウンセラーとは
一般社団法人終活カウンセラー協会によって認定されるのが「終活カウンセラー」です。 終活カウンセラーには初級・上級・上級インストラクターの3資格があり、いずれも試験に合格することで認定されます。
初級の終活カウンセラーは、終活についての幅広い基礎知識を持ち、エンディングノートを作成できるレベルになります。上級になると適切なカウンセリングや案内スキルだけでなく、エンディングノートの作成アドバイスができるようになります。上級インストラクターは講師となって終活カウンセラーの育成に努めています。
終活カウンセラーに求められる知識は多岐にわたり、足腰の衰えた方に接する場合、介護に関する助言や基礎的な介護技術も必要となります。また介護施設等の現状を把握し、入居手続きや費用についてもアドバイスを行うことになります。医療関係についても同様であり、病気や障害のレベルに応じた助言として、終末期となった方を支えるターミナルケアやグリーフケアの知識も必要となります。
終活カウンセラーの主な仕事
終活カウンセラーの仕事は「終活を行う人のカウンセリング」「介護施設でのカウンセリング」「セミナーや相談会の開催」の3つに分けることができ、具体的な内容は以下のようになります。
終活に関するカウンセリング
最も多い仕事がカウンセリングであり、保険・相続・遺言・葬儀・お墓のほか、健康面や介護について相談者へアドバイスを行っています。終活を行っている方はもちろん、その家族を含む幅広い年齢層の悩みや困りごとに寄り添う事が求められます。
エンディングノートの書き方に関するアドバイス
エンディングノートには病気になったときの介護方法や延命措置、葬儀や埋葬方法など、本人の希望する内容を書き記しますが、「何をどこまで書くべきか?」と迷ってしまうこともあります。終活カウンセラーは人それぞれの状況に応じたエンディングノートの書き方もアドバイスしています。
専門家との連携
終活に関する悩みごとは人によって異なるため、弁護士や司法書士、税理士などの法律職や医療機関など、専門家への架け橋となることも終活カウンセラーの仕事になります。内容によっては葬儀業者や石材店への橋渡しも必要であり、相談者に同行したり打ち合わせに同席したりする場合もあります。
いずれも紹介先の選択を誤ることのないよう各業種の専門分野を把握し、相談内容の正確な分析も必要となります。 相談者の中には「問題を解決してくれる専門家が誰なのか分からない」といった方もおられるため、終活カウンセラーには総合案内的な役割もあるといえるでしょう。
行政手続きのサポート
終活を進める上で発生する行政手続きなどについて、終活カウンセラーが本人に付き添うこともあります。手続きそのものを代行することはありませんが、行政の窓口が苦手な方や、1人で手続きすることが不安な方への寄り添いも終活カウンセラーの仕事といえます。
セミナーや講習会の開催
終活の普及や理解を深めてもらうため、地域包括支援センター等と連携したセミナーや講習会を開催することもあります。
地域包括支援センターには社会福祉士や保健師、ケアマネージャー等(またはそれに準ずる資格保有者)の専門職が配置されているため、介護や健康面についての助力を得ながら充実したセミナーを開催することができます。
介護施設でのカウンセリング
定期的または必要に応じて介護施設へ通い、終活についてのカウンセリングやエンディングノートの作成をサポートします。
介護施設や老人ホームには終活についての悩み、困りごとを抱えた方が多く、家族との連絡も途絶え気味になっているため、終活カウンセラーの来所を心待ちにしている方もおられるようです。
終活カウンセラーになるためには
終活カウンセラーは検定試験に合格することで認定されますが、初級の場合はセミナー形式で行われ、最終確認としてテストを実施しています。広く終活を普及させることが目的なので合格率は98%であり、事前講習の中でテストに出るポイントなどもしっかり教えてもらえます。
初級の検定試験は月10回のペースで行われており、試験会場も全国にありますが、コロナ禍など昨今の事情を考慮しオンラインによる検定も実施しています。
初級終活カウンセラーの試験内容
受験申込は一般社団法人終活カウンセラー協会のホームページにアクセスし、申し込みフォームに必要事項を入力して送信します。
申込後は受付確認や受講料(受験料)についての案内メールが返信されるので、7日以内に終活カウンセラー協会あてに受講料を振り込みます。入金確認後には受講票やテキスト、練習問題が送付されるので、試験日に備えて学習しておきます。
検定試験は午前10時から始まり、昼食を挟んで午後4時30分までの日程となっています。 受講料(受験料)は9,970円となっており、合格した際には30円のカード発行費と5,000円の年会費を支払うことになっています。
上級終活カウンセラーの試験内容
上級の試験を受けるためには初級終活カウンセラーの資格が必要であり、スキップすることはできません。また終活カウンセラー協会開催の勉強会に年間1回以上参加し、事前のレポート提出も必要となります。
上級終活カウンセラーの場合は講習と試験を2日間で行い、受験料は45,000円(講習代・試験代・弁当代込み)、別途事前審査費が3,000円となっています。
上級インストラクターの試験内容
上級インストラクターの試験を受ける場合、上級終活カウンセラー合格者であること、協会開催の勉強会を年間2回受講していることが条件となります。
講習から試験までは5日間であり、各日程は以下のようになっています。
講習1日目:午前10時30分~午後6時
講習2日目:午前9時30分~午後5時
講習3日目:午前10時30分~午後6時
講習4日目:午前9時30分~午後5時
終活カウンセラーの年収
終活カウンセラーの資格や活動が収入に直結することは殆どなく、今のところ他の業務や国家資格を補完するものといえます。終活を行っている方への包括的なアプローチは必要ですが、弁護士法や税理士法などに抵触してはならないため、終活カウンセラー単独の資格で収入を得ることは難しいでしょう。
終活カウンセラーを取得する方には、自分自身や家族の終活に役立てたり、本業に活かせたりすることを目的としているケースが圧倒的に多いようです。また終活カウンセラーは歴史も浅く知名度も低いため、求人も殆どないようです。
しかし終活カウンセラーとしての知識や肩書きは、「相続問題や終活に強い」というアピールになるため、税理士や司法書士、ファイナンシャルプランナー等が積極的に資格取得するケースもあるようです。
終活カウンセラーの将来性
将来性をみた場合終活カウンセラーへの期待度は高く、活躍の場も広がるのではないかと想定されます。 総務省統計局の資料によると、2019年9月現在の総人口は前年比26万人の減少ですが、65歳以上の高齢者は32万人の増加となっています。総人口に対する比率も前年から0.3ポイント上昇した28.4%であり、過去最高となっています。
また1947年~1949年生まれの団塊世代を含め、70歳以上の人口は前年比98万人増であり、2040年頃には3.5人に1人が65歳以上の高齢者になると予測されています。 平均寿命についても、令和元年の厚生労働省資料では女性87.45歳、男性81.41歳となっており、2060年頃には女性90.93歳、男性84.19歳になると予測されています。
超高齢化社会では終活を実践する人も増大するため、終活カウンセラーとして活躍する場や機会は広がり、社会的意義や注目度も高まっていくと予測されます。
おわりに
歴史も浅く知名度も高くはない終活カウンセラーですが、興味のある方は早めに資格を取っておくべきかもしれません。
終活の基礎知識を早めに習得しておけば、今後確実に到来する超高齢化社会や、医療・介護分野の進歩にも戸惑うことなく順応できるでしょう。
また終活カウンセラーに求められる幅広い知識には法律に関するものも多いので、他の資格を取得する上でも有利といえます。現段階では「自分や家族のため」に取得した資格であっても、今後の状況次第では即戦力として仕事に活かせるようになるかもしれません。