高齢者に必要な防災対策とは?

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はじめに

近年の大規模災害による犠牲者のうち、高齢者の占める割合が増えています。NHKが行った調査によると、東日本大震災で亡くなった人の6割を超える人が60歳以上の高齢者と言われています。。

また、認知症の症状がある方は環境の変化やストレスに敏感なため、自宅以外の場所で避難生活を送る事になると落ち着かない状態が続いたり、症状が悪化してしまったりする事も考えられます。認知症の方との避難は、介護する家族にとっても大きな負担となるでしょう。

そこで今回は、高齢者に必要な防災対策や要介護者のための避難所などについてご紹介していきます。

高齢者が注意すべき災害

高齢者に必要な防災対策とは?

日本は地震や台風、洪水などの自然災害が多い国です。地球温暖化の影響もあり毎年のように巨大な台風や大雨・洪水被害が起こるだけでなく、阪神大震災や東日本大震災のような大地震も頻繁に発生するようになっています。

では、災害時に高齢者はどのように災害対策を行えばいいのでしょうか。

台風対策

台風は地震と異なり予測が比較的容易とされています。そのため天気予報や地方自治体の災害、避難情報を聞いて備える事が重要です。

・懐中電灯の用意(停電に備える)

・電化製品のコンセントは抜く(雷対策)

・ベランダがある場合は、植木鉢や物干し竿は飛ばされないように片付ける

・窓対策で雨戸やシャッターを閉める

・食料や水を準備する(非常時には外出しない)

・住宅に暴風雨に弱い所がないか点検し修理しておく

・緊急避難場所を確認しておく

・災害伝言ダイヤル171の使い方を確認しておく

地震対策

地震の時に最優先すべきは自分の身を守る事です。

地震が起きる前の準備

・家の中を片付け脱出経路の確保をしておく

・家具を固定しておく

・感電ブレーカーを設置する

地震が起きた後の対応

・慌てて家の外に飛び出さない

・テーブルの下などで頭を保護する

・使っている火はすぐに消す

・火事などの二次災害を防ぐためにガスの元栓を締める。

・電気のブレーカーを落とす

・ドアや窓を開ける

・エレベーターが使えても階段を使うようにする

その他の災害時の基本対策

台風や地震など災害の種類に関係なく共通して行える基本的な対策も把握しておきましょう。

水分の確保

断水した場合は水分の摂取量を意図的に減らす人が多いですが、脱水の危険性を考えると水分の摂取量は変えない方がいいです。

また、飲料水の代わりとして井戸水や浴槽に貯めた水を使用する際は、煮沸などによる滅菌を必ず行いましょう。

衛生管理

非常時には食品やトイレの衛生管理を怠りがちですが、薬などが不足している状況で下痢や腹痛になると、しっかりとした治療を受ける事ができず完治するまでに時間がかかる可能性が高いです。

だからこそ、使用した調理器具の洗浄や細かい手洗い・うがいは忘れないようにしましょう。

エコノミークラス症候群対策

車などの狭い座席に長時間座っていると、血行不良によって血液が固まりやすくなります。その結果、血の固まりが血管を詰まらせ肺塞栓などを誘発する恐れがあります。

こうした危険を予防するためには、定期的に体を動かし、十分に水分を取る事が大切となってきます。

防災情報の把握の仕方

高齢者に必要な防災対策とは?

防災情報はテレビでの収集が一般的ですが、もし避難が必要になった場合はテレビを使用する事ができないので、ハンディタイプのラジオを用意しておきましょう。また、各自治体のウェブサイトやSNS、消防団の広報なども日常的な情報収集に役立ちます。

自治体から発令される避難情報

自治体から発令される避難情報には、以下の3つがあります。

避難準備・高齢者等避難開始

避難勧告や避難指示を発令する事が予想される場合に出されます。避難に時間を要する方(高齢者・障害のある方・乳幼児など)とその支援者が避難行動を開始しなければならない段階です。

避難勧告

災害による被害が予想され、人的被害が発生する可能性が高まった場合に出されます。 通常の避難行動ができる方が速やかに避難場所へ避難する段階です。

避難指示

災害が発生するなど状況がさらに悪化し、人的被害の危険性が非常に高まった場合に出されます。まだ避難していない方が緊急に避難場所へ避難する段階です。

高齢者に必要な防災グッズ

高齢者に必要な防災対策とは?

高齢者のみの家庭や在宅介護の家庭では次のような物を用意しておきましょう。

非常用介護食

非常用介護食として高齢者でも食べられる缶詰やレトルト食品が各メーカーから販売されています。

また、避難所に避難した場合はパンやおにぎりが支給されますが、嚥下機能が衰えている高齢者は誤嚥の危険性があるので、とろみ剤を準備しておくと、喉に流れ込むスピードが緩やかになり誤嚥を予防する事ができます。

常備薬やおむつ

服薬しないと日常生活に支障をきたしたり、調子が悪くなる可能性がある人は予備の薬を用意しておきましょう。その場合は、お薬手帳があると避難先の近くの薬局でも利用できるので避難する場合は服薬している薬と一緒に持っていく事をおすすめします。

また、高齢者用のおむつは吸水性が高いので、汚れている所を拭いたり、ビニール袋と合わせて簡易トイレとしても使えます。特に避難所のトイレは使いにくい事が多いので、普段はあまりおむつを使用しない方でも準備しておくと役に立ちます。

福祉用具

最近では高齢者でも利用しやすいキャリー式の防災リュックが販売されているので、重い荷物を背負えない人はキャリー式の防災リュックに必要な福祉用具を入れておきましょう。特に老眼鏡や入れ歯、補聴器などは災害時に破損して使えなくなる可能性が高いので、日常的に使用している物とは別に予備も用意する事をおすすめします。

また要介護者がいる場合は、災害によって路面状況が悪化し普通の車いすや杖が使えなくなる状況を想定して、おんぶ紐やけん引式車椅子補助装置なども用意しておきましょう。

要介護者の避難方法

高齢者に必要な防災対策とは?

自治体から示されている自宅近くの「指定緊急避難場所」を予め確認し、その道順や所要時間を体感しておく事が大切です。

ただし、指定緊急避難場所への避難がかえって危険な時は、近くの安全な場所や屋内のより安全な場所へ移動します。例えば大雨などの場合は、最上階が浸水しない高い建物や川沿いでない建物など、より安全と思われる場所へ避難します。

福祉避難所とは

福祉避難所とは大勢の人が集まる一般の避難所での生活が困難な「要配慮者」を対象に受け入れを行い、生活上で必要な介護や生活支援を提供する施設です。福祉避難所となる場所は老人福祉施設や障がい者施設などで、事前に各自治体が指定・公表を行っています。

ただ、福祉避難所はあくまで二次的な受け入れ先というのが制度上の位置づけであり、まず一般の避難場所で保健師などから指定を受けた人のみが福祉避難所に移る事ができます。

福祉避難所が抱える課題

福祉避難所が抱える大きな課題として、その数の不足があります。というのも、一般の人が利用する指定避難所は2014年の時点で全国に 48,014 箇所も設置されていますが、福祉避難所は 7,647 箇所しか設置されていません。

また、福祉避難所は社会的な認知度が低く、自分の住んでいる地域の福祉避難所の所在地を知らない人が多数います。その結果として、2016年に起きた熊本地震では福祉避難所が適切に利用されず、多くの要配慮者が一般の指定避難所で避難生活を過ごしました。

おわりに

今回ご紹介した通り、災害の死亡者の6割は60歳以上の高齢者であり、災害が起きた後の避難生活で体調を崩して亡くなってしまう「災害関連死」と認定された人の約9割も高齢者とされています。

だからこそ常日頃から災害に関する情報を収集し、もしもの場合に備えて準備をしておく必要があります。また行政や周囲の人たちからの支援に依存するのではなく、自分でできる事はしっかりと自分で行う事が大切になってくるでしょう。

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