はじめに
霊柩車といえば宮型の豪華な飾り付けがされているイメージを思いつく人が多いですが、そのような車を見かける機会は年々減りつつあります。 近隣住民との関係や人付き合いに対する考え方などによって、葬儀が限られた参列者で行う場合が多くなり、豪華な霊柩車は仰々しいと考える人が増えつつあります。
そこで今回は、普段は意識されていない霊柩車の手配方法や費用について紹介していきます。
霊柩車とは
霊柩車とは遺体を葬儀式場から火葬場まで運ぶときに使用する専用車です。 運転席や助手席の他に後部は納棺された遺体を棺ごと搬送する事ができるように可動レールが付属しています。また、喪体の輸送を目的とした特殊用途車両であるため、ナンバープレートは緑色の8ナンバーと規定されています。
霊柩車は地方自治体、貨物自動車運送事業法に基づく一般貨物とされ、構造要件としては、自動車運送事業の許可を受けた者等が、専ら柩又は遺体を運搬するために使用する自動車であって、柩又は遺体を収容するための担架を収納する専用の場所を有しており、かつ、柩又は担架を確実に固定できる装置を有するものを言います。
霊柩車の起源
霊柩車の起源は英国の「霊柩馬車」と言われていますが、日本では大正時代から霊柩車の使用が始まりました。自動車が欧米で開発され、そこに日本の「遺体を納めた棺を輿に乗せ、人が担いで運ぶ」という文化と唐揚破風の装飾が反映された事によって宮型霊柩車が誕生したとされています。
霊柩車と寝台車の違い
霊柩車は棺を運ぶ事を第一目的としているため、骨壺や遺影を持った人が助手席に乗る場合が多く、故人と極めて近しい人だけが乗車します。そのため、それ以外の親族や知人はマイクロバスなどで移動する場合が一般的です。
一方で、寝台車は病院から自宅や葬儀場に故人を搬送するための車なので、棺を運ぶ事を目的とした霊柩車とは明確に区別されています。また寝台車は一般の乗用車と変わらない形をしているので、霊柩車のような装飾はされていません。
霊柩車の種類
霊柩車には複数の種類があり、色も主流の黒色だけでなく青色や金色など多岐に渡ります。
宮型霊柩車
「宮型霊柩車」は最も一般的な霊柩車の種類であり、金箔や彫刻で装飾された屋根に豪華な宮が載せられています。車種もベンツやキャデラックのような高級リムジンを採用している事が多く、著名人や政治家など社会的影響力が大きい人の葬儀でも利用されます。
また、他の種類と比べて地域性が強く、関東型や関西型など各地域によって霊柩車の形状や塗り方が異なります。特に石川県の金沢で使用されている金沢型は、非常に巨大かつ豪華な装飾で有名です。
洋型霊柩車
「洋型霊柩車」は宮型霊柩車の代わりとして、近年人気になりつつある霊柩車の一種です。というのも、宮型霊柩車の見た目の派手さから乗り入れを禁止する自治体や火葬場が増えてきているので、見た目からは霊柩車だという事が分かりづらい洋型霊柩車が普及しつつあります。
また、洋型霊柩車は管理コストやメンテナンス性の面でも優れている事から、増車や経年劣化などによる車両の入れ替えの際に宮型霊柩車から洋型霊柩車に鞍替えする業者も多いです。
バン型霊柩車
「バン型霊柩車」は車の後部座席を外してレールとストレッチャー機能を付けたシンプルな霊柩車です。見た目からは霊柩車と分かりづらいので、周辺地域に配慮しなければいけない場合に使用される事が多いです、
また寝台車として遺体を病院から自宅や葬儀場へ運ぶ際にも利用されます。
バス型霊柩車
バスやマイクロバスを改造して作られる霊柩車であり、遺体以外にも遺族や僧侶などの関係者全員を乗せて火葬場まで移動する事ができます。火葬場までの距離が遠かったり、複数台の車を用意するのが難しい場合に利用される事が多いです。
霊柩車の手配方法
霊柩車を手配する場合は葬儀会社を通じて手配するケースが一般的です。 葬儀会社が霊柩車を自社で保有している事はあまりなく、各会社ごとに専門の霊柩車運行業者と提携しています。
また、遺族が業者に直接依頼する事も可能ですが、葬儀社のプランに霊柩車の費用が含まれている場合や、打合せの際に霊柩車の内容を決める場合が多いので、通常はそのまま葬儀社経由で霊柩車を手配する事になります。
霊柩車の費用
前述のように霊柩車には幾つかのタイプがあり、種類によって料金が変わってくるので事前に葬儀会社と打ち合わせし比較検討するようにしましょう。
ただし、葬儀会社によってはプランによって利用できる霊柩車の種類が決まっている場合もあるので注意して下さい。
基本料金
霊柩車の基本料金は「霊柩車のタイプ×標準設定距離+距離による加算額」によって決まります。料金は届け出が必要なだけで事実上自由化されていますが、国土交通省が適正と認める範囲でなくてはなりません。また、全国霊柩自動車協会が目安となる料金システムを公表しており、各業者はこの料金システムを参考にして個別に価格を決定しています。
実際の相場については利用する霊柩車の種類によって異なりますが、一般的には走行距離0~10kmで13,000~20,000円程度、それ以上の場合は10km単位で数千円程度づつ加算されていく場合が多いです。
追加料金が発生する場合
依頼主の都合で霊柩車の出発時間が変更となった場合には「待機時間料」が追加で発生します。
午後10時から午前5時の深夜時間帯には「深夜早朝割増料金」が、有料道路利用時には「高速、有料道路使用料」が追加で課せられます。寒冷地によっては12~3月の期間に「冬期割増料金」が適用される地域もあります。
また、霊柩車の運転手に3,000~5,000円程度の「心づけ」を渡す人もいますが、葬儀社によっては一切受け取らない方針を取っている事もあるので、その場合は無理に渡すような事は避けましょう。
おわりに
豪華な造りの宮型霊柩車は「棺を載せる車」と一目で認識できるので、結果として容易に死を連想させてしまいます。そのため霊柩車が頻繁に出入りする火葬場近隣の住民から、「迷惑施設」と考えられ不動産の価格が下がるなどの苦情が増えているのが現状です。
そういった近隣住民の心情に配慮し、とりわけ目立つ宮型霊柩車の使用を制限している自治体や火葬場もありますし、火葬場併設の葬儀場も一般的になってきている事から、霊柩車が使用される機会は今後も減っていくと予想されます。