高齢者が注意すべき特殊詐欺とは?

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はじめに

警察庁の発表によると、2019年の特殊詐欺被害額は約301億円と8年連続の300億円超えとなっており、一日あたりでは約8260万円が騙し取られている計算になります。
特殊詐欺については警察や銀行など様々な機関が注意を呼び掛けていますが、犯行の手口が複雑化している上に組織的な詐欺グループも増えている事から依然として「いたちごっこ」の状況に変わりはありません。
そこで今回は、高齢者が気を付けるべき特殊詐欺の手口や対策について解説していきます。

特殊詐欺とは?

高齢者が注意すべき特殊詐欺とは?
特殊詐欺とは、面識のない相手を電話やメールなどで騙す事によって金銭の振り込みを要求する犯罪行為を指します。
ただ、あくまで詐欺事件の総称なので恐喝による現金搾取やキャッシュカードのすり替えなども特殊詐欺に含まれます。特に、最近は銀行やATMで多額の現金を扱おうとすると職員によるチェックが必要になるので、現金ではなくクレジットカードやキャッシュカードなどを狙った特殊詐欺も増えています。

よくある特殊詐欺の種類

高齢者が注意すべき特殊詐欺とは?
特殊詐欺といえば「オレオレ詐欺」が代表的ですが、実際には以下の10種類に細かく分類されています。

  • ①オレオレ詐欺
  • ②預貯金詐欺
  • ③架空料金請求詐欺
  • ④還付金詐欺
  • ⑤融資保証金詐欺
  • ⑥金融商品詐欺
  • ⑦ギャンブル詐欺
  • ⑧交際あっせん詐欺
  • ⑨その他の特殊詐欺
  • ⑩キャッシュカード詐欺盗

特に、高齢者世代は多額の現金預金を持っている人が多いため、オレオレ詐欺や預貯金詐欺の対象になりやすいです。実際に、特殊詐欺の被害者のうち83.7%は65歳以上の高齢者ですし、男女別で見ると女性が65.3%を占めています。

オレオレ詐欺

最も有名な詐欺の手口であり、子供などの身内を装って現金やキャッシュカードを騙し取る手口です。
「俺だよ俺」から始まる手口のためオレオレ詐欺と呼ばれるようになりましたが、交通事故の示談金や借金の穴埋めをするために現金が必要など、色々な理由で電話をかけてきます。実名を知らなくても「オレ」という一人称は不自然ではないですし、電話は声が違って伝わるので不審に思われにくいという特徴があります。
また、最近では警察官や債権者などを装って自宅を訪問し、偽造した警察手帳を見せながらキャッシュカードの引き渡しを要求してくる場合もあります。

預貯金詐欺

現金や通帳などを騙し取る手口として預貯金詐欺があります。
犯人は警察官や役場の職員などを装って高齢者に接触し、以下のような手口で騙し取ろうとしてきます。

警察官を装った手口

「キャッシュカードが不正利用されているので新たなカードを発行して下さい」や「個人情報が悪用され預金が不正に引き出されているので通帳を預けて下さい」と連絡して、キャッシュカードや通帳を騙し取る手口です。
他にも「詐欺の犯人を逮捕したらあなたの口座情報を知っていたので、通帳やカードを確認させて下さい」と連絡してくる場合もあります。

役場職員を装った手口

自治体の役場職員を装い、「医療費を還付したいので、口座を確認させて下さい」などと伝え、ATMまで誘導して指示通りに操作させる手口です。
犯人の指示に従ってしまうと、自分の口座から犯人の口座へお金が振り込まれる仕組みになっています。

家電量販店やデパートの店員を装った手口

家電量販店やデパートの店員を装って「あなたのキャッシュカードを不正利用している人がいる」と連絡を行い、その後警官役の犯人から「キャッシュカードが偽造されている」と追加で連絡する事によって、騙し取る手口になります。

架空料金請求詐欺

身に覚えのない督促状やメールを送りつける詐欺を架空料金請求詐欺といいます。
手紙やメールを使って督促状を送りつけ、指定の金額を支払わないと民事訴訟や財産差押えなどの法的措置を取ると脅迫するのが主な手口であり、「○○債権回収機構」や「○○法律事務所」など架空の業者を装っている場合が多いです。
落ち着いて考えれば、業者が存在していなかったり、そもそも請求された料金に身に覚えがなかったりと破綻している点を見つける事ができますが、圧迫的な文面に焦ってしまい、犯人の思惑通りに動いてしまうケースが後を絶ちません。
ただ、架空料金請求詐欺には以下のような共通点があるので、しっかりと把握しておきましょう。

同じ督促メールが何度も届く

電子メールに多く、同じ文面の督促が短期間に何度も届きます。

携帯電話会社や消費者金融からのメール

世間一般に知られる会社から送られてきたメールであれば信用してしまう人が多いですが、送信元のアドレスを見れば判別する事ができます。

知人や友人を騙ったメール

昔の知り合いや友人を騙り、名字やあだ名で連絡してくるケースです。

延滞料金やキャンセル料についてのメール

架空料金請求詐欺では素早く送金させるために、延滞料金やキャンセル料などの言葉がよく使われます。受信者を焦らせる事が目的ですが、落ち着いて身に覚えがないか確認するようにしましょう。

受信者の興味を引く件名

「重要なお知らせ」または「大切なお知らせ」など、受信者の興味を引き起こし、不安な気持ちにさせる件名がよく使用されます。
他にも「最終通告」や「最後通告」などの表現も使用される事が多いので、このようなタイトルのメールには注意しましょう。

還付金詐欺

預貯金詐欺と共通する部分もありますが、還付金詐欺では医療費や保険料を還付するという名目で接触しようとしてきます。
犯人は自治体や年金事務所の職員を装い、「医療費・保険料を払い過ぎているので、過払い分を還付します」という連絡を入れた後に、銀行員役の犯人が自宅を訪問して通帳やキャッシュカードを回収するというのが一般的な手口です。
また、高齢者はATMの操作に不慣れな人も多いので、指示通りにすれば還付金が振り込まれるといって犯人の口座あてに送金させる手口もあります。

特殊詐欺の対策

高齢者が注意すべき特殊詐欺とは?
特殊詐欺では通帳やキャッシュカードが狙われる事が多いですが、警察や銀行がそれらを預かったり、現金を引き出すために必要な暗証番号を聞く事はありえません。
また、特殊詐欺の手口は日に日に高度化していますが、以下のような対策しておくと簡単に騙される事を防げます。

家族の間で合言葉を決めておく

家族同士で合言葉を決めておき、家族からの電話がかかってきた時に第一声で合言葉を言い合うようにすれば、詐欺にひっかかる事はありません。
もし、合言葉を拒絶したり間違った言葉を伝えてきた場合は、すぐに電話を切って警察などに通報するようにしましょう。

家族や友人と特殊詐欺の情報を共有する

特殊詐欺も手口が分からなければ対策をする事ができないので、日常的に情報収集を行い、その情報を家族や友人同士で共有するようにしましょう。

特殊詐欺防止用のチェックシートを作る

合言葉を知っているか、暗証番号を聞き出そうとしていないかなど、特殊詐欺の特徴をチェックシートにまとめて目につく場所に貼っておきましょう。

ナンバーディスプレイを利用する

着信元の電話番号を表示するナンバーディスプレイや、不審な着信に対する警告機能を持った電話機は特殊詐欺の対策として有効です。

在宅時でも留守番電話にしておく

犯人は証拠となる音声データが残る事を嫌うので、基本的に留守電にメッセージを残す事はありません。

ATMの利用限度額を低く設定しておく

万が一に備えて、ATMの利用限度額を低く設定しておく事も非常に有効です。

特殊詐欺だと思った時の対処法

特殊詐欺と思われる電話やメールを受けた場合は以下のように対処してください。特に、過剰な反応をしてしまうと犯人に余計な情報を与える危険性があるので、なるべく反応しない事が大切です。
・お金の話になったら一旦電話を切り、家族や友人に相談する
・警察に通報する
・特殊詐欺チェックシートを確認する
・必要以上に話をしない

まとめ

特殊詐欺の犯行グループは計画的に動いており、その手口も高度化している事から高齢者は尚更注意をする必要があります。
また、「自分は大丈夫」と過信している人は特殊詐欺の標的になりやすい傾向にあるので、自分一人で安心するのではなく家族や周囲の人たちと話し合ってお互いを守るようにしましょう。