はじめに
今から投資を始める人に向けた制度として「つみたてNISA」という制度があります。
投資に興味はあるけど最初の一歩が踏み出せないという人や、どんな商品を買えば良いのか分からないといった人でも、「つみたてNISA」であれば難しい判断は必要ありません。
そこで今回は、初心者にとって最適な投資方法である「つみたてNISA」について解説していきます。
つみたてNISAとは?
NISAとは日本版ISA(少額投資非課税)制度の総称であり、つみたてNISAはその内の一種類になります。
つみたてNISAは少額の積み立てで資産運用が始められるだけでなく、年間40万円分の投資枠が最長で20年間も非課税の対象になります。
また、金融庁が認定した金融商品などにバランス良く投資する事ができるので、初心者にとっても利用しやすい制度となっています。
一般NISAとの違い
つみたてNISAより4年早くスタートした「一般NISA」も非課税の対象になりますが、非課税枠や投資対象などに大きな違いがあります。
【非課税投資期間】
・一般NISA~5年
・つみたてNISA~20年
【口座開設期間】
・一般NISA~2023年開始分まで
・つみたてNISA~2042年開始分まで
【投資枠】
・一般NISA~120万円(2024年から122万円)
・つみたてNISA~40万円
【投資方法】
・一般NISA~積立式、スポット購入
・つみたてNISA~積立式
【ロールオーバー(非課税投資枠の再利用)】
・一般NISA~できる
・つみたてNISA~できない
【投資対象】
・一般NISA~株式投資信託、国内外株、国内外ETF、上場投資証券(ETN)、国内外REIT、ワラント債(新株予約権付社債)
・つみたてNISA~金融庁が認めた投資信託や上場株式投資信託(ETF)
一般NISAは投資対象の商品が多くスポット購入(一括購入)もできるので、投資経験や金融商品の知識がある人向けになります。
一方で、つみたてNISAは投資初心者でも始めやすく、投資対象は金融庁が認めた商品だけなので、比較的安全な投資と言えます。
コツコツと資産形成する制度ではありますが、最大800万円の投資元本から発生する収益が非課税となる点は大きな魅力です。
つみたてNISAの始め方
専用の非課税口座開設からつみたてNISAはスタートします。
手続きは銀行や郵便局、信用金庫、信用組合、JA、労働金庫、証券会社及び信託銀行で受け付けており、税務署の確認を経て開設完了となります。
また、口座開設の必要期間は2週間程度ですが、「簡易NISA口座」を開設すれば、税務署の承認前でも投資信託等を購入できます。
口座は3種類から選ぶ
銀行等で開設する口座には「一般口座」「特定口座(源泉徴収あり)」「特定口座(源泉徴収なし)」の3種類があります。
特定口座を選ぶ事で税額計算を金融機関に代行する事が可能ですし、源泉徴収ありにしておけば確定申告の手間も不要となります。
つみたてNISAのメリット
今から投資を始める方は、以下のメリットを参考につみたてNISAを検討してみましょう。
最長20年間は運用益・分配金が非課税
つみたてNISAの最大のメリットは、最長20年間に渡って運用益や分配金が非課税になる点です。
本来は所得税や住民税を合わせた20.315%が課税の対象になりますが、つみたてNISAでは税金分も運用に回せるのでロスを抑えながら投資を行う事ができます。
投資タイミングの判断が要らない
つみたてNISAの投資方法は「積立型」のみであり、スポット購入(一括購入)はできない仕組みになっています。
つまり、どのタイミングで「買い」を行うかの判断が不要なので、投資経験や専門的な知識は不要です。
また、投資タイミング(積立タイミング)は基本的に毎月ですが、金融機関によっては毎日や毎週などの期間でも設定可能です。
低コストで長期運用が可能
一般的に手数料が高いとされている投資商品ですが、つみたてNISAの場合は手数料の面でも優遇されています。
具体的には、売買手数料や信託報酬が低くなるように設定されていますし、特にインデックス投資信託では売買手数料が0円(ノーロード)なので、長期的に見ると手数料の差額が大きな金額になります。
いつでも換金できる
つみたてNISAの換金性が高く、好きなタイミングで売却して現金に換える事ができるので、住宅の改修資金や老後資金の補填などの出費に備える事も可能です。
つみたてNISAのデメリット
つみたてNISAを利用する事によって、色々な優遇を受けながら投資する事ができますが、デメリットも存在しています。
特に他の投資をしている場合は税負担の面で不利になる事もあるので、今からつみたてNISAを始める方は事前にしっかりと把握しておきましょう。
元本割れのリスクがある
つみたてNISAでは金融庁が選定した商品を購入しますが、投資である以上「元本割れ」のリスクと無縁ではありません。
諸々の情勢により、売却時に元本割れも十分考えられるので、あくまでもリスク商品の購入である事は理解しておきましょう。
ただし、積立型の投資では「良い時」も「悪い時」も購入を続ける事になるので、長期的な運用ではプラスに転じる可能性の方が高いです。
また、スポット購入では投資対象やタイミングを誤ると大きな損害に繋がりますが、つみたてNISAの場合はそのようなリスクは発生しません。
選べる金融商品が少ない
比較的安全な投資である反面、商品ラインナップの少なさがつみたてNISAのデメリットになっています。
つみたてNISAでは金融庁の審査をパスした投資信託やETFのみを取り扱っているので、国内で取り扱う投資信託(約6,000種類)全体を考えると種類は少なめになります。
2020年12月現在のつみたてNISA対象商品は193本であり、内訳は以下のようになっています。
・公募投信(株式型)~国内41本、内外12本、海外45本
・公募投信(資産複合型)~国内5本、内外81本、海外2本
・ETF~国内3本、海外4本
NISAの制度を利用しながら他の商品(国内、海外のREITなど)を購入したい場合、一般NISAを選んだ方が良い場合もあります。
また、上記の対象商品193本についても全ての金融機関が扱っているわけではないので、利用予定の商品を取り扱っている銀行や金融機関を選ぶようにしましょう。
非課税枠を翌年に持ち越せない
一般NISAでは可能な非課税枠の持ち越し(ロールオーバー)ですが、つみたてNISAでは適用されないので、仮に20万円の非課税枠が残っていたとしても、ロールオーバーによって翌年の非課税枠を60万円にする事はできません。
つみたてNISAの年間非課税枠は40万円であり、1ヶ月あたり約3.3万円となっているので、なるべく非課税枠を使い切るような運用がベストです。
損益通算・損失の繰越控除ができない
一般的な投資では、税制面で有利となる損益通算や繰越控除の制度を使えますが、つみたてNISAでは利用できません。
この点もつみたてNISAを始めるかどうかの判断基準になるので、理解しておきましょう。
損益通算できないデメリットとは?
一般的な投資の例として、商品Aで100万円の運用益が発生し、Bの商品では80万円の損失が出たとすると、利益から損失を差し引いて残った20万円の利益に対して課税するのが損益通算の仕組みです。
しかし、つみたてNISAでは損益通算を利用する事ができないので、運用益がそのまま課税対象になってしまいます。
損失の繰越控除ができないデメリットとは?
一般的な投資の場合、運用で発生した損失は3年間の繰り越しが認められています。
例えば、前年に100万円の損失が発生していても、翌年に100万円の運用益が出た場合は相殺できるるので、利益を0円として計上できます。
この仕組みを「繰越控除」といいますが、つみたてNISAで使う事ができません。
既に他の投資をしている場合は、損益通算や繰越控除できないデメリットを考慮した上でつみたてNISAの利用を検討するべきでしょう。
おわりに
つみたてNISAは幅広い年齢層に利用されており、老後に退職金などを元手にしてスタートする人も多いです。
投資には「危険・ハイリスク」といったイメージもありますが、金融庁が厳選した商品のみを取り扱っているため、一般的な投資よりもリスクは低いです。
また、低水準な手数料や運用益の非課税制度によって、投資期間が長くなるほど利益が大きくなるので、じっくりコツコツと運用したい人は、「つみたてNISA」を検討してみてはいかがでしょうか。