はじめに
本来、老人ホームは穏やかな老後を過ごすための場所ですが、内容をよく調べずに入居した結果、トラブルに巻き込まれてしまう場合もあります。
そこで本記事では、老擬人ホームでよくあるトラブルについて解説します。トラブルの事例を理解し、万が一に備えましょう。
老人ホームでよくあるトラブルとは?
多くの人達が集団で生活するため、人間関係のトラブルには避けて通れない部分もあります。実際にあるトラブルの一例は、次の通りです。
・パンフレットの月額費用と実際の請求額が違う
・サービスの内容が契約書と違う
・介護サービスの質が低い・良くない
・終身介護のはずが途中退去を求められる
・運営会社が倒産してしまう
・他の入居者と喧嘩してしまう
このようにトラブルの内容は多岐にわたります。そこで、次より各トラブルの内容を詳しく見ていきましょう。
トラブルの内容
ここからは、老人ホームで起こり得るトラブルの内容についてそれぞれ解説します。
パンフレットの月額費用と実際の請求額が違う
月額費用に関するものとして、パンフレットに記載されたものと実際の請求額が大きく異なり、老人ホーム側とトラブルになるケースがあります。
一般的な有料老人ホームの月額費用は15万円~30万円程度であり、内訳は居住用の家賃や食費、施設の維持管理や事務費、上乗せ介護費やサービス加算などが挙げられます。
しかし、老人ホームによっては、月額費用に食費や介護保険の1割負担が含まれていないところもあり、オムツ料など日常生活費やイベント(レクリエーションなど)参加費が別途請求になる場合も。パンフレットを読み込めば料金体系などは理解できますが、実際に入居しないと分からない部分も多いため、老人ホーム側の丁寧な説明も必要です。
サービスの内容が契約書と異なる
老人ホームの中には、契約書どおりのサービスを行っていないケースがあります。
代表的なものは「スタッフ人数が少ない」や「入浴回数が少ない」などです。本来は介護保険法により人員基準が決まっているため、重要事項説明書やパンフレットに「3:1(入居者3人に職員1人を配置)」などと記載されています。
介護サービスの質が低い・良くない
老人ホームでは、入居者と家族が安心できるサービスを提供するものですが、介護サービスの質が低い・良くないといったケースもあります。そのため、見学時や体験入居時のチェックが重要です。
まず異臭がないか、食堂のテーブルや床に食べカスが付いていないかなど、衛生面をよく見るようにしてください。他にも入居者の衣服の汚れ、髪や爪が伸びておらず清潔か、身体拘束された入居者がいないかを確認しましょう。
ただし、居室部分については徹底した掃除を希望する人、自分の持ち物を他人に触られるのが嫌な人などさまざまであり、本人の希望に沿った状態の可能性もあります。サービス品質に疑問を感じたときは、曖昧にならないよう質問するようにしてください。
短期間で良し悪しを見極めるのは難しい面もありますが、もし入居した後で問題が発覚した場合はクーリングオフ制度が使えます。有料老人ホームの場合、入居から90日以内であれば入居金は全額返還されるので、問題がある場合は我慢せずクーリングオフを活用しましょう。
終身介護のはずが途中退去を求められる
有料老人ホームの多くは利用権方式を採用し、終身介護が可能となっています。実際に老人ホームが終の住処になる方もおられますが、施設側の判断により退去を求められるケースも増加しています。
理由としては認知症の発症や病気治療のための長期入院、他の入居者とのトラブルなどがあります。このようなケース全てが退去事由になる訳ではなく、老人ホーム側の対応力によるところもありますが、どこまでが許容範囲なのか見学などの際にしっかり聞いておくべきでしょう。
運営会社が倒産してしまう
公営の特別養護老人ホームと違い、民間の有料老人ホームには倒産リスクがあります。運営会社の経営状態が悪ければ倒産の可能性は十分にあり、保全対策がとられていない老人ホームでは入居金の返還もできない場合があります。
また、要介護状態の入居者は生活を維持できなくなるため、命に関わる問題です。有料老人ホームが倒産すると負担や責任は全て家族にかかるため、経営面は必ずチェックしておきましょう。
他の入居者と喧嘩してしまう
新たな人間関係ができることは老人ホームのメリットといえますが、反面、他の入居者と喧嘩になることもあります。
有料老人ホームの場合、各入居者の居室は独立していますが、食事や入浴は共有スペースのため他の入居者とのかかわりは避けられません。相性の悪い人同士が言い争いになったり、いじめに発展したりするケースもあるようです。
特に10人程度の規模でサービスを受けるユニットケアの場合、生理的に合わない人と一緒になれば老人ホームでの暮らしが苦痛になるでしょう。
しかし、施設側の対応次第では大きなトラブルへの発展を防止できるため、スタッフや責任者の経験・ノウハウが重要となります。人との交流は健康維持や認知症予防に効果的ですが、ストレスに感じるようであれば早めにスタッフへ相談してください。
注意した方がいい老人ホームの特徴
トラブルを回避するためには入居前のチェックが重要です。施設の方針やスタッフの対応によって老人ホームの生活は大きく変わります。
注意した方がいい老人ホームについて、特徴やチェックポイントを解説しますので参考にしてください。
事前に契約書などの書類を渡さない
老人ホームに入居する際は、契約書や重要事項説明書、利用規定などを事前に入手できます。
パンフレットよりも詳しい内容であるため事前の閲覧は重要ですが、このような書類を渡そうとしない老人ホームには注意してください。契約時まで重要書類がもらえない場合、パンフレット記載の内容より実サービスの品質が低い、またはサービスを実施していないおそれがあります。
無理やり契約を結ぼうとする
一般的なマンションやアパート入居の際にもあることですが、入居を急がせ無理やり契約しようとする老人ホームも要注意です。
「今決めないと直ぐに埋まってしまいます」などの言葉を信じて入居したところ、実際には十分な空き居室があったというケースもあります。老人ホームで過ごす時間は長いため、本人や家族に施設をじっくり見てもらうべきであり、考える時間も必要となります。
有料老人ホームの届出をしていない
都道府県知事へ届出しているか・していないかもサービス品質の判断基準となります。届出している有料老人ホームは設備面でも一定の基準をクリアしており、行政の管理下におかれるため、著しくサービス品質が低いといったことは起こりにくくなっています。
一方、届出していない有料老人ホームは「類似施設」と呼ばれ、火災時に作動するスプリンクラーが設置されていないなど、十分な設備になっていない場合もあります。安心・安全な生活を送るためには届出済の施設を選ぶと安心です。
老人ホームでトラブルが起きた時の対処法
しっかりと調査した上で入居した老人ホームでも、トラブル遭遇の確率はゼロではありません。もしトラブルが起きた場合は必ずスタッフへ伝えるようにしてください。
万が一、トラブルが解決しない場合は以下の窓口に相談しましょう。
自治体の介護福祉科の苦情相談窓口に相談する
老人ホーム側がトラブル解決に消極的であれば、各自治体の窓口へ相談してください。介護福祉課などの苦情相談窓口では各種の相談を受け付けるほか、介護保険施設の指定を取り消す権限もあります。
各都道府県の国民健康保険団体連合会に相談する
自治体の窓口に相談しても解決しない場合は、お住まいの都道府県の国民健康保険連合会に相談しましょう。
国民健康保険団体連合会も介護サービスの苦情申し立て窓口として機能しており、介護事業者に対する調査や指導などの権限を持っています。
まとめ
有料老人ホームの増加に比例して入居前後でのトラブルが増えていますが、パンフレットや契約書をしっかりと確認すればリスクを最小限に抑えられます。
いろいろと検討するのは時間や手間もかかり大変です。けれども、不要なトラブルを避けるためにも事前にチェックを行い、自分や家族にとってベストな老人ホームを選ぶようにしましょう。