はじめに
家族が亡くなった場合、葬式や四十九日などで時間はあっという間に過ぎていきますが、家族が亡くなった後に発生するさまざまな手続きにも対応しなければなりません。
死亡後の手続きは意外に多いため分かっているつもりでも見落としてしまうことがあり、早めに対応しなければ払わなくてもよかった税金や料金等も発生します。
死亡後すぐに行うべき手続き
家族が亡くなった後は気が動転しているため、平常時であれば分かっていることでも抜け落ちが出てしまいます。
手続きを進める遺族が現役の人であれば、あまり多くの時間は割けないため優先順位や必要書類などを事前に把握する必要もあります。
特に埋葬や行政関係の手続きは重要であるため、いざというときに備え手帳などへメモしておくことをおすすめします。
死亡診断書の受け取り
死亡の証明となるのが死亡診断書であり、担当医師によって作成されます。
死亡の事実が確認できなければ火葬を受け付けてもらえず、年金の支給や納税義務も継続されるため忘れずに発行を依頼してください。
亡くなった家族が入院していれば担当医師によって作成されますが、入院していない場合はかかりつけの医師によって作成されます。
入院もなく特に診療も受けていない状態で亡くなられた場合は、死亡診断書ではなく死体検案書が作成されることもあります。
死亡診断書の発行料金は病院によってまちまちであり3千円~1万円程度が相場となっていますが、死体検案書の場合は3万円~1万円程度になります。
死亡診断書が必要となる手続きはいくつかありますが、役所へ提出したものは返還されないため、必要部数を発行してもらうかコピーしておくことをおすすめします。
死亡届の提出と火葬許可証の受け取り
死亡届と死亡診断書は1枚の様式になっているので、亡くなった人の氏名や住所、死亡した日時や場所などを記入して役所へ提出します。
死亡届の提出先は亡くなった人の本籍地、亡くなった場所、届出人が住民登録している地域のいずれかの役所になり、窓口は1年中24時間開かれています。
提出の際には届出人の印鑑が必要ですが認め印でも構わず、印鑑を用意できない場合は自筆署名でも可とされています。
死亡届は遺族による提出が一般的ですが、場合によっては亡くなった人の成年後見人や家主等が提出することもあり、代理人として葬儀業者へ提出を依頼するケースもあります。
死亡届と同時に火葬許可も申請しますが、記載内容に問題がなければ火葬許可証は即時発行されます。
なお、死亡届は死亡の事実を知った日から7日以内が提出期限となっており、期限を過ぎた場合、正当な理由がなければ5万円以下の過料になる場合があります。
健康保険証と介護保険者証の返却
家族が亡くなると健康保険や介護保険の被保険者ではなくなるため、資格喪失の手続きとともに保険証を返却します。
健康保険証や介護保険者証の資格喪失や返却手続きには期限が設定されているため、なるべく早めの対応をおすすめします。
健康保険の手続き
会社勤めで健康保険に加入していた人が亡くなった場合、年金事務所へ健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届を提出しますが、一般的には会社側が対応します。
亡くなった人本人とともに被扶養者も資格喪失するため、死亡日の翌日から14日以内に国民健康保険に加入するか、他の家族の被扶養者になります。
国民健康保険の手続き
自営業または無職の人で国民健康保険に加入している場合、死亡後14日以内に役所へ国民健康保険資格喪失届を提出し、保険証も返却します。
世帯主の死亡であり、家族も国民健康保険に加入していた場合は全員の保険証も返却し、世帯主変更と新たな健康保険証の発行を申請します。
亡くなった人が70歳~74歳であれば高齢受給者証も返却してください。
後期高齢者医療保険制度の手続き
75歳以上の人、または65歳~74歳で障害のある人は後期高齢者医療資格喪失届とともに後期高齢者医療被保険者証を返却します。
なお、健康保険や国民健康保険の加入者が死亡した場合、一時金として葬儀費用が支給されます。
健康保険の場合は職場の健康保険組合または年金事務所へ申請すると埋葬料として5万円が支給され、国民健康保険または後期高齢者医療保険の加入者であれば葬祭費として3万円~7万円程度が支給されます。
申請期限は死亡日の翌日から2年以内ですが、健康保険証の返却や資格喪失手続きと同じタイミングでの申請をおすすめします。
介護保険者証の手続き
65歳以上の第1号被保険者または40歳以上65歳未満の第2号被保険者は、介護保険資格取得・異動・喪失届の手続きとともに保険証を返却します。
手続きは役所の介護保険課など担当部署で行いますが、資格喪失から14日以内が期限とされています。
介護保険料の納めすぎや未支給となっている介護サービス費がある場合は後日振込みされるため、口座番号等が分かるよう通帳やカードを持参するとよいでしょう。
年金の受給停止届の提出
国民年金の場合は死亡日から14日以内、厚生年金であれば10日以内に年金受給者死亡届を提出しますが、日本年金機構にマイナンバーが登録されている場合は年金受給者死亡届を省略できます。
手続きは年金事務所または年金相談センターで行いますが、年金証書とともに死亡診断書の写しまたは戸籍謄本を提出して死亡の事実を証明します。
受給停止届の提出が遅延すると年金は継続支給されるため、受け取り過ぎた年金は日本年金機構へ返納します。手続きを放置すると年金の不正受給を疑われる場合もあるため、早めに対応するとよいでしょう。
世帯主変更の手続き
亡くなった人が世帯主であった場合は住所地の役所で世帯主変更の手続きが必要です。
世帯主変更届を提出すれば住民票の世帯主変更は完了しますが、死亡日から14日が期限なので他の手続きと同時に行うことをおすすめします。
世帯主が亡くなった後の世帯員が1人であれば手続きは不要であり、故人の配偶者と未成年の子が世帯員の場合、配偶者が次の世帯主になることが明らかなので、この場合も手続きは不要です。
なお、住民票からの抹消は死亡届の提出によって処理されるため手続きは不要です。
その他の必要な手続き
家族の死亡後は各種サービスの利用停止や名義の変更など民間事業者との手続きも発生します。
運転免許証などは家族の誰もが知るところですが、休眠状態の銀行口座やネット銀行に口座開設している場合もあります。
家族のあずかり知らない契約などもあるので、遺品整理と同時進行で手続きするとよいでしょう。
車や不動産の名義変更
亡くなった家族が所有していた車を継続して使用する場合、名義変更の手続きが必要となります。
道路運送車両法では所有者が変わった際には15日以内に手続きするよう定めていますが、期間を過ぎたとしても特にペナルティはありませんが、故人名義のままだと売却などができません。
車の名義変更に必要となる主な書類は以下のとおりですが、全て揃えるためには相当な労力と時間を要します。
もし遺族だけで対応するのが困難な場合は、行政書士などの専門家へ手続きを依頼するようにしましょう。
・有効期限内の車検証
・亡くなった人の戸籍謄本または除籍謄本
・相続人全員の戸籍または戸籍の全部事項証明書
・遺産分割協議書
・新たな所有者以外の相続人全員による譲渡証明書
・新たな所有者の実印と印鑑証明書
・車庫証明書
・ナンバープレート
自宅家屋や土地などの不動産は所有権移転登記が必要であり法務局へ申請します。
特に期限はありませんが故人名義では売却や活用ができず、数次相続が発生すると共有者も増えるため、手続きを放置しないように注意しましょう。
不動産の移転登記には以下の書類が必要となります。
・遺言書(遺言がある場合)
・遺産分割協議書(遺言がない場合)
・相続関係説明図
・亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍、戸籍の附表、除籍謄本等
・亡くなった人の住民票の除票
・不動産の固定資産評価証明書
・不動産を承継する相続人の住民票と印鑑
・相続人全員の戸籍謄本
運転免許証やパスポートの返納
亡くなった人の運転免許証やパスポートは自動的に失効し、返納については「遅滞なく」「速やかに」となっているため特に期限はありません。
ただし公的機関が発行した顔写真付きの証明書は本人確認書類として使えるため、悪用されないとも限りません。
運転免許証の場合は近隣の警察署や運転免許センター、パスポートは旅券事務所または役所の担当部署へ返納するようにしましょう。
クレジットカードや銀行口座の利用停止
亡くなった人がクレジットカードを利用していた場合、カード会社に連絡して利用停止の手続きを行います。
法定相続人による手続きが原則であり、死亡の事実や亡くなった人との関係が分かるよう戸籍謄本や除籍謄本、死亡診断書等の提出が必要となります。
なお、残債があった場合はマイナス財産として相続対象になり、カード会社へ一括返済します。
銀行口座は解約手続きに必要な書類が揃うまで凍結状態にするため、相続人が取引銀行に届出します。
申し出の際に必要となる書類等は銀行によって異なるため、あらかじめ電話確認することをおすすめします。
以下の書類が揃えて提出すると概ね1週間~2週間で手続きが完了し、解約金が相続人の口座へ振り込まれます。
・預金通帳、キャッシュカード
・遺言書(遺言がある場合)
・遺産分割協議書(遺言がない場合)
・亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍、戸籍の附表、除籍謄本等
・亡くなった人の住民票の除票
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の印鑑証明書
生命保険金の受取り
保険金には保険会社ごとの支払期限があるため、加入者の家族が亡くなった場合は早めに保険会社へ連絡してください。
生命保険金の受取りに必要な書類は以下のとおりですが、詳細は保険会社に確認するようにしてください。
・保険証券
・支払請求書
・被保険者の住民票
・保険金受取人の戸籍抄本
・保険金受取人の印鑑証明
・死亡診断書または死体検案書
おわりに
家族の死亡とともに発生する手続きには種類が多く、必要書類の準備だけでも大変な作業になります。
しかし、各手続きの必要書類には共通するものが多いため、取得の手続きは1回で済ませることが理想的です。
利用中のサービス等を整理し、手続きの優先順位も確認しておくことをおすすめします。