老後破産とは?
長寿化の進む現代では老後の必要資金も増えており、16人に1人が老後破産しているとされています。
現役時代は資金難に陥っても賞与、貸付などでリカバリーできますが、老後人生ではお金が不足した場合の対応策も限られてきます。
また、予期せぬライフイベントが発生しやすいのも老後であり、医療や介護などの費用が負担となり老後破産になってしまう人も増えつつあります。
今回は老後破産の原因や回避策について解説しますので、シニア世代やリタイヤ間近の人はぜひ参考にしてください。
老後破産の原因について
生活資金難となる老後破産には資金計画や健康状態が大きく関わっています。
老後になって突然発生するものではなく、日頃の生活習慣や金銭感覚が影響しているため、現役世代の人であっても気を付ける必要があります。
老後破産の原因は大きく3つに分けられるので、自分自身や身近な人が当てはまっていないかチェックしてみてください。
病気をしてしまう
老後には慢性的な持病などを発病することが多く、体力や免疫も低下するため完治までには時間や医療費もかかります。
若い頃であれば直ぐに治った病気でも長引くことがあり、お金を節約するため通院治療を選択する人も多いですが、結果的に完治までの期間が長くなり、交通費・医療費ともに高くなる場合があります。
重い病気にかかった場合は医療費も高額となり、同時に介護が必要となるケースもあるため、自己負担分が重くのしかかってしまうこともあります。
貯蓄がない
老後の生活資金が枯渇するケースでは、もともとの貯蓄額が足りない、または投資などの失敗による貯蓄額の減少が挙げられます。
老後資金の準備は現役時代から始まっていますが、住宅ローンや子どもの教育費などが負担となるため本格的な貯蓄は50代以降になる人がほとんどです。
仮に退職金も合わせて4,000万円を準備できたとしても、老後期間30年で均等割りすると月々11万円程度にしかならず、退職金で住宅ローンを返済した場合はさらに手元資金が減少します。
虎の子の退職金を運用で増やそうと考える人もいますが、十分な知識がなければ失敗する可能性は高いため、現役時代からの経験も必要です。
近年は晩婚化の傾向も強いため、定年のタイミングでも子どもが大学に通っている場合があり、貯蓄の重要性は分かっていてもなかなかできないといった人もいます。
生活レベルがそのまま
食費や衣料費、遊興費などを現役時代の感覚で使ってしまうと数年で老後資金は枯渇します。
特にリタイヤ直後は重責からの開放感や退職金もあるため気が大きくなり、自分やパートナーへのご褒美として海外旅行や高級外車などを購入するケースもあります。
資金計画に基づいた出費であれば特に問題はありませんが、現役時代と生活レベルが同じでは70歳まで貯蓄が持たない場合が多く、そのまま老後破産となってしまう人もいます。
老後破産をするとどうなる?
手元にお金がなく生活が困窮すると、消費生活だけではなく人間関係にも支障をきたします。
また、資金不足はそのままストレスにも繋がってしまうため、さまざまな悩みを抱えながら老後を生きていくことにもなります。
では老後破産するとどのような状況になってしまうのでしょうか?
老後も悩みを抱えることになる
本来であれば仕事から解放され悠々自適な暮らしになるはずですが、老後破産すると多くの悩みを抱えて生きなければなりません。
保険料を払えなくなると各種保障を受けることができず、延滞金の発生や財産の差し押さえに発展するケースもあります。
食費にも事欠くようであれば十分な栄養を摂ることができず、病気や介護リスクも高まるなど負の連鎖が続いてしまいます。
人に相談できなくなる
お金がなく生活に困っている状況はなかなか人に相談しにくいというのが現実です。
当座の資金であれば兄弟や子どもに相談するもの手ではありますが、気恥ずかしさや遠慮から1人で抱え込んでしまう人が非常に多いです。
その結果として、食費や税金が支払えなくなり、貧困状況が更に悪化してしまうこともあります。
人が離れていく
老後破産は人間関係にまで影響するため、孤独な状況ができ上ってしまいます。
お金がなければ外出もままならいため、友人だけではなく家族や親戚との交流も控えることになります。
香典や交通費を用意できなければ葬儀への参列もできず、自宅に人を招くこともできなくなるため次第に存在感が薄れ、周囲の人が離れていく状況になります。
また、老後破産する状況になると周囲も気付くため、ちょっとした食事の誘いなどでも声をかけにくくなり、距離をおかれることになるでしょう。
老後破産しないためにできること
余裕をもった老後人生には資金計画や健康管理が重要です。
60歳以降に始められる予防策もありますが早めに実践するほど効果は高いので、現役のうちから始めておくことをおすすめします。
老後に必要なお金のシミュレーション
頭では分かっているつもりでも資金計画を作成するとさまざまな漏れが発見されます。
まず、今後必要と予測される出費を全て書き出し、貯蓄や年金だけで対応できるかシミュレーションしてみましょう。
収支全体を予測するためには「ライフイベント表」の活用がおすすめであり、インターネット上からダウンロードできます。
ライフイベント表には基本的な生活費、ガソリン代や車検代など車両にかかる経費、税金やレジャー費など多くの項目が網羅されているため、計算する際の「抜け」が出にくくなります。
同時に「キャッシュフロー表」も作成しておけば将来の収支予測が立てやすくなり、こちらもインターネット上から様式をダウンロードできます。
健康管理に気を付ける
生命保険など「もしもの備え」も重要ですが、病気や要介護にならない体づくりも老後破産の防止策になります。
老後は病院にかかる回数も増えるため、1回あたりの料金は安くてもトータルでは高額になっている場合があります。
特に、生活習慣病は治療に時間がかかり、医療費も高額になるため気を付けましょう。
起床時間や就寝時間を決め、日中はなるべく体を動かすようにしてください。
また栄養に偏りが出ると免疫力が低下するため、バランスの良い食事を1日3回取るようにしてください。
貯蓄や資金運用をする
退職後からスタートできる貯蓄もありますが、なるべく現役時代から始めておきましょう。
資金運用も低リスク商品から始めておくと安全に投資を学べますし、年金の不足分を補完することもできます。
60歳で定年退職し、65歳から年金を受給する場合はつなぎ資金も必要なので、個人年金保険や貯蓄型保険など保険商品を活用することもできます。
資金運用であれば「つみたてNISA」や「iDeCo(イデコ)」がおすすめであり、投資商品には変わりありませんが比較的安全であることと、各種の優遇措置を受けられます。
つみたてNISAでは年間の運用益40万円までを非課税で再運用でき、iDeCo(イデコ)は積立金の運用益を60歳以降に非課税で受け取ることができ、所得控除の対象となっています。
おわりに
高齢化社会と長寿化は年々進んでいるため、老後破産は今後も増加すると予測されています。
老後破産しないためには早めの準備が必要であり、積極的な貯蓄や資金投資が必要となりますが、老後を意識しすぎるあまり現在の生活が窮屈になるのも考えものです。
健康面については医者、資金面ではファイナンシャルプランナー(FP)などの専門家がいるので、不安を感じている人は早めの相談をおすすめします。