おひとりさまのお墓問題
近年、大勢で楽しむことが多い施設や飲食店を一人で利用する人や、配偶者との別離によって一人で生活する人を「おひとりさま」と呼びます。
若いうちはおひとりさまも気楽で良いですが、年齢を重ねたおひとりさまは「孤独死」の問題に向き合わなければいけません。
また、自身の死後にお墓をどうするかも、あらかじめ決めておかなければいけない問題です。
自身や家族のだれかが「おひとりさま」として暮らしている場合、亡くなった後の対応を決めておく必要があるのです。
孤独死した場合に起こる問題
孤独死した場合、身元や連絡先が判明した上で遺族がいれば、遺体が引き渡され、埋葬するという流れとなります。
しかし、孤独死は事件性を疑われる場合もあり、警察の現場検証が行われます。現場検証で身元や連絡先がわからない場合、遺体は安置所へ搬送され、一定期間後に各自治体によって火葬や埋葬が行われます。
後々に遺族の連絡先が判明すれば遺骨は返還されますが、遺体の保管料や諸々の費用が遺族へ請求されます。
身元不明となった遺骨の埋葬
身元不明で自治体によって火葬された場合や遺族が引き取りを拒否した場合、遺骨は無縁塚に埋葬されます。
ただ、火葬後すぐに無縁塚に入るわけではなく、自治体が一定期間保管することになっています。保管期間は自治体によって異なりますが、5年程度が目安となります。
無縁塚に埋葬される遺骨はまとめて埋葬(合祀)されるため、埋葬後の引き取りはできません。
おひとりさまのお墓の選択肢
おひとりさまで、自身の死後の世話を行ってくれる方がいない場合、生前にお墓を用意する必要があります。
また最近では、友人と同じお墓に入る「墓友」が登場するなど、おひとりさまのお墓や埋葬も変化しています。おひとりさまのお墓の選択肢について、解説していきます。
永代供養墓
永代供養墓とは、お寺や霊園が供養・管理を行ってくれるお墓のことです。他の人と一緒に納骨される合葬型と、個別に納骨されるタイプに分けられます。ただし、個別に納骨されるタイプも一定期間後には合祀されることがほとんどです。
お彼岸などに合同法要を執り行う施設もあり、後継者はいないけれど自身に対する供養を大切にしたい方にも好評です。
納骨堂
納骨堂とは、遺骨をロッカー式などの個別のスペースに納骨する施設です。墓石を建てないタイプがほとんどで、低価格で定期的な管理も必要ありません。ただし、一定期間後には合祀されることになります。
ロッカー式では骨壺を納めるタイプが主流となっていますが、仏壇を設置するタイプなどもあり、施設によってさまざまな種類があります。
とくに、墓地のスペースが不足している都市部を中心に普及が進んでいます。
先祖のお墓に入る
先祖のお墓がある場合は、遺言書やエンディングノートにお墓への納骨の旨を記し、親族や友人へ依頼しておくとよいでしょう。
しかし、自分の世代以降のお墓の後継者がいない場合は、そのお墓はいずれ無縁墓となってしまいます。場合によっては自身の代での墓じまいを検討して、改葬先として永代供養墓などを検討してみましょう。
墓友と一緒のお墓
近年では、友人と同じお墓に入りたいという「墓友」と呼ばれる付き合い方が増えています。この場合も、継承を前提としない永代供養墓が選ばれます。
墓友はおひとりさまを中心とした文化ではありますが、「家族とのしがらみから解放されたい」と既婚者が検討するパターンもあります。
墓友との埋葬を希望される場合、無用なトラブルを避けるためにも家族や親族にはきちんと説明するようにしましょう。
女性専用のお墓
最近では埋葬に対する考え方も多様化しており、おひとりさまの女性専用のお墓が登場しています。
従来の考え方では家族で一緒のお墓に入ることが当然でしたが、夫婦仲が冷え切ってしまった場合などでは、同じお墓に入ることに抵抗を感じる人もいます。こうした要望からも、死後におひとりさまを選ぶ人が増えているようです。
おひとりさまのお墓に掛かる費用
先祖のお墓を持たないおひとりさまの場合、自身でお墓を用意しなければいけません。
新たにお墓を建てる場合は墓石代や管理費が必要になり、実際にお墓がかたちとなるまで1年近くかかること珍しくありません。墓地や霊園は早めに選定しましょう。
お墓の費用
お墓の費用は墓石と工事の規模によって変化しますが、100万円程度が相場になります。都市部の墓地や墓石の材質・デザインにこだわる場合などは、200~300万円以上になることも珍しくありません。
お墓選びはなるべく相見積もりを取り、アフターケアなども確認してから購入場所を選定しましょう。
管理費
お墓の管理費は年払いが一般的で、5千円~2万円程度が相場となっています。地方自治体が運営する公営墓地は、管理費が安価となります。また、地価の影響を受けることから都市部と地方でも異なります。
おひとりさまの場合、没後の管理費を誰が払うかが問題となります。管理費の支払いが滞った場合、猶予期間の後にお墓は撤去されてしまいます。この問題の解決のために、おひとりさまは永代供養簿を選ぶといっても過言ではありません。
まとめ
おひとりさまに対応したお墓は増えており、家族や血縁などのしがらみに捉われない埋葬も普及し始めています。
おひとりさまこそ、事前に死後の準備をしっかりと整え、エンディングノートなどを活用して、どのような埋葬を希望するか記録しておくことをおすすめします。