亡くなった人を埋葬する際、葬儀を行った後は寺院墓地や霊園などに埋葬するのが日本の一般的な埋葬形式です。しかし、代々の墓地が遠方にあって気軽にお参りできないというケースや、新しくお墓を用意するのに数百万円もかかってしまうというケースも珍しくありません。そこで近年では、コストを抑えつつ故人を身近に感じられる供養の方法として、自宅墓という選択肢が新しく注目を集めつつあります。
自宅墓とは?
自宅墓とは、自宅の中に遺骨を安置するための小型の墓地のことです。
最近では、納骨するためのスペースが用意されている仏壇や骨壺をコンパクトに収納できる自宅供養墓なども販売されており、段々と普及が進んでいます。
自宅墓は違法?
遺骨の埋葬方法というと、決められた墓地に埋葬するイメージが強いですが、自宅で遺骨を供養することは法律に違反しないのでしょうか?
ここでは自宅墓に関する法律について解説しています。
遺骨の埋葬は違法
自宅の庭や敷地内にお墓を建てること自体は違法ではないですが、そのお墓に遺骨を納骨することは法律により禁止されています。墓石の建立や遺骨の埋葬については「墓地、埋葬等に関する法律」により定められており、この法律では「遺骨の埋葬は行政が許可した墓地でしか行えない」としています。
作ること自体は違法ではない
「墓地、埋葬等に関する法律」では、自宅の庭や敷地内に墓石を建立する行為自体は禁止していないので、お墓を作ったとしても法律で処罰されることはありません。ただし、住宅地や隣接している道路などから見える場所に墓石を建てると、近隣住民から反発されたり、トラブルに繋がることもあります。
最近では価値観が多様化しつつありますが、「お墓は寺院や霊園に建てるもの」という昔ながらの価値観を持っている人は多いですし、法律上は問題なくとも、気持ちの問題では受け入れてもらえない可能性があります。そのため、自宅にお墓を建てる場合は、不要なトラブルを起こさないように設置場所などにも注意するようにしましょう。
遺骨を置くことは合法
行政が許可した墓地以外の区画に遺骨を埋葬することは法律で禁止されていますが、自宅で遺骨を供養することは問題ありません。「墓地、埋葬等に関する法律」で定められているのは遺骨を埋葬・埋蔵する行為であり、自宅で遺骨を保管すること自体は制限されていません。一部の宗教・宗派では納骨を勧められることもありますが、遺族や故人の納得する形で供養を続けることが最も大切です。
自宅墓を作るメリット
遺骨を自宅で供養する方法は「手元供養」とも呼ばれており、先祖代々のお墓が遠方にある人や新しいお墓を建てることが難しい人を中心に広がっています。ここでは自宅墓を作るメリットについて紹介していきます。
故人を身近に感じることができる
大切な人を亡くした時、お墓に納骨することで心の距離まで遠くなったように感じてしまい、遺骨を手放すことができない人は多いです。しかし、自宅墓の場合は遺骨が常に側にあることで、自分の好きな時に故人を思い出し供養することができるので、故人と寄り添って生きていきたいという遺族にとっては望ましい供養の仕方です。また、室内に保管するので一般的なお墓よりもデザインの自由度が高く、故人の希望に合わせたり、自宅のインテリアと融合した供養の場所を作ることもできます。
費用を抑えられる
お墓を建てる場合は寺院墓地や霊園などの選択肢がありますが、いずれも初期費用だけで100~300万円程度の費用が必要になります。さらに墓地の管理団体に支払う年間の供養料や管理費なども別に用意しなければいけないので、お墓を継承する人は大きな経済的負担を負わなければいけません。その点、自宅墓は数万円程度が相場で管理費なども必要がないので、金銭面での不安がある人にとっては大きなメリットになります。
お参りしやすい
先祖代々のお墓が遠方にあったり、転勤や引っ越しが多い人にとって、どこにお墓を建てるかというのは死活問題です。また、年齢を重ねて思うように外出できなくなった時にお墓参りができなくなるという不安を抱えている人もいらっしゃいます。自宅墓なら時間や天気に関わらず、いつでも故人に手を合わせることができますし、転勤や引っ越しの時も一緒にお墓を持っていくことができます。屋外での掃除や無縁墓になってしまう心配もないので、墓前法要で親戚が集まる際も自宅で手軽に行えます。
自宅墓を作る際の注意点
経済的にも心情的にも色々なメリットがある自宅墓ですが、実際に作る際には衛生管理をしっかりと行いましょう。遺骨は乾燥しているのでカビなどは生えにくいですが、日本は高湿度かつ気温の上げ下げが激しいので、管理を怠ると不衛生な状態になってしまいます。そのため、自宅墓を設置する場合は風通しや日当たりに気を付けて、定期的に設置場所などを掃除することをおすすめします。
また、自宅で遺骨を供養する場合は、遺骨をパウダー状に加工する粉骨サービスを利用する方法もあります。パウダー状にした遺骨を真空パックに保管するので、カビの繁殖を防げるだけでなく、大きさも半分程度になるので省スペース化も行えます。粉骨サービスは1万円程度が相場なので、自宅で長期間保管する際は利用を検討することをおすすめします。
まとめ
自宅の中に遺骨を安置するための小型の墓地、自宅墓を選ぶ方も増えています。昔のように代々お墓を引き継いでいくことが難しい現代人にとっては、自宅墓も一つの選択肢でしょう。しかし墓石の建立や遺骨の埋葬については「墓地、埋葬等に関する法律」により定められており、「遺骨の埋葬は行政が許可した墓地でしか行えない」となっています。自宅墓を作りたいと思った場合も、遺骨を埋葬してはいけないことは知っておきましょう。