なぜ相続税の節税が必要なの?
実際に相続税の申告が必要な人は全体の5%ほどで、90%以上の人は相続税がかからないため申告をする必要もありません。
しかし、無申告の状態で税務署から調査が入り、相続税がかかることが判明した場合、ペナルティーとして延滞税や加算税が課せられることになります。
相続税については大幅な節税が可能なので、事前に準備と対策を行っておけば、仮に相続税の対象となっても心配の必要はありません。
また、余計な納税を避けるためには、可能な範囲で節税対策を継続することが重要です。
相続財産から控除できるもの
相続税には基礎控除が設定されているので、「3,000万円+法定相続人×600万円」の合計額が非課税となります。
また、以下のような項目も相続財産から控除することができるので、しっかりとチェックしておきましょう。
借入金などの債務
被相続者のローン残金や未払い金などの借入金、いわゆる負債ですが、こちらも相続財産から控除されます。
仮に負債額の方が大きい場合は、相続放棄や限定承認といった選択肢もあります。
その際には被相続者が亡くなった日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述書を提出しなければなりません。
一般的な葬式費用
被相続者が亡くなった後に行う通夜や葬式にかかる費用も、控除の対象になります。
該当するのは、会場費・食事代・お布施などであり、交通費や香典返し、初七日の法要などの費用は控除外なので注意しましょう。
お布施については領収書が発行されない場合が多いですが、その場合はメモを取っておけば問題ありません。
その他の費用については領収書を大切に保管しておきましょう。
なお、被相続者が亡くなると預金口座は凍結されますが、法定相続人全員の同意書があれば、凍結を解除して、その口座から葬儀費用を支払うことも可能です。
課税対象にならない非課税財産
相続税の金額を確認する際には、全ての財産を金額化して計算する必要がありますが、最初から課税対象にならない「非課税財産」というものがあります。
特に生命保険や死亡退職金については金額が大きくなりやすいので、非課税財産の対象については事前に把握しておきましょう。
墓石や仏壇などの祭祀物
被相続者が生前に購入していた墓石や仏壇などの祭祀物は非課税財産となります。
ただし、非課税財産になるのは生前に現金で購入したものだけであり、被相続者が亡くなってから購入した場合は対象外になります。
また、骨董品のような換金性が高いものは、祭祀物であったとしても非課税財産とは認められません。
非課税財産と思っていたものが税務署の指摘によって課税対象になる場合もあるので、祭祀物を購入する際は注意しましょう。
生命保険金・死亡退職金
生命保険や死亡退職金は「みなし財産」と呼ばれており、非課税財産になります。
ただし、法定相続人の数×500万円と非課税枠が決まっており、超過分については課税対象になります。
なお、法定相続人については「相続放棄した人も含まれます」。
また死亡退職金については被相続者が亡くなって3年以内に支給されたものが対象となり、こちらの非課税枠も生命保険とまったく同じものです。
つまり法定相続人×500万円が非課税枠です。
国やNPOに寄付した財産
国や地方公共団体、認定NPO法人へ寄付した財産についても非課税となります。
ただし、寄付してから2年経過しても公益活動が認められない場合は非課税にならないリスクもあるので注意が必要です。
さらに、相続する財産が基礎控除額以上で、公益法人に寄付したことで相続税が0円になった場合は、そのことを税務署に知らせる義務があります。
仮に申告しなければ寄付した財産は非課税の対象にはならないので、その点も忘れないように気を付けましょう。
相続税の節税対策はどうすれば?
では実際に相続税を節税するにはどうすればいいのでしょうか?
以下で紹介するように色々な方法がありますが、いずれにせよ生前からコツコツと準備を進めることが重要なので、長い目線で取り組みましょう。
毎年110万円を生前贈与する
相続税の節税方法として最も有効なのが生前贈与です。
生前贈与は贈与税の対象になりますが、年間110万円までは非課税枠が認められています。
そのため、毎年110万円の生前贈与を行うことによって、10年間で1,000万円以上の節税効果が見込めます。
ただし、被相続者が亡くなる3年前までの生前贈与については相続財産に加算されます。
また、毎年同時期に同じ金額を贈与していると、税務署から多額の資産を贈与する計画だったと見なされ、追加で贈与税が課せられる場合もあります。
このようなリスクを避けるためにも、贈与時期や金額にバラツキを持たせたり、数年に一度のペースで非課税枠を超えて贈与するなどの工夫をおすすめします。
養子縁組を組んで基礎控除を増やす
養子縁組を組んで法定相続人を増やすことによって、節税を行うことも可能です。
例えば、養子縁組によって法定相続人が1人増えれば、600万円の基礎控除を受けることができます。
一般的には娘婿を養子に加えるケースが多いですが、実子がいる場合は養子縁組によって法定相続人にできるのは1人まで、実子がいない場合でも2人までと限度が決まっています。
また、養子縁組が相続トラブルの原因になる場合もあるので、慎重に検討することをおすすめします。
非課税限度額の生命保険に加入する
生命保険は非課税枠が定められているので、法定相続人の人数に合わせて生命保険に加入すると節税対策になります。
例えば、相続人が5人いるのであれば、500万×5=2500万円分の生命保険に加入することによって非課税枠をフルに活用できます。
また、仮に非課税枠を超過したとしても、相続税には基礎控除があるので、多額の相続税が課される心配はありません。
生命保険に加入する場合は、上記の内容に加えて、相続財産の金額や法定相続人の人数などを考慮して、最適な商品を選ぶようにしましょう。
賃貸物件を建てて土地の評価額を下げる
アパートなどの賃貸物件を建てると、その土地は賃貸建付地となり自由地よりも評価額が30%程度下がります。
また、賃貸物件を建てるため借り入れた借入金は、負債として按分されるので非常に大きな節税対策になります。
とはいえ、返済計画がしっかりしていないと、負債を引き継いだ配偶者や子供が苦労するリスクもありますし、自然災害などで建物が消失することもあります。
なので安直に手を出すのではなく、事前に周辺リスクを洗い出すなどして総合的に判断するようにしましょう。
困った時は税理士に相談しよう
相続税の基礎控除などによって納税が必要ない場合は、わざわざ節税対策を行う必要はありません。
ただし相続税が発生する可能性があるのであれば、できる限り事前に税理士に相談することをおすすめします。
税理士を挟むことによって相続税の計算間違いや遺産分割のトラブルを回避することができますし、納税にかかる時間も節約できます。
終活と相続のまどぐち