はじめに
老後2,000万円問題が話題になっているように、老後に豊かな生活をしていくためには公的年金だけでは不足することが指摘されています。
この問題に対処するポイントは、国に頼らず、自分自身で資産をなるべく早い段階から形成していくことです。
そこで非課税運用のできるつみたてNISAやiDecoといった長期積立投資が注目されていますが、それ以外にも老後資産のための積立投資の方法があります。
そこで今回は、個人年金保険の特徴やメリット・デメリットについてご紹介していきます。
個人年金保険とは?
年金といえば、国民年金保険や厚生年金保険をイメージする人も多いでしょう。
しかし、今回ご紹介する個人年金保険は、このふたつの年金保険とはまったく別のものになります。
どういった点が違うのか、なぜ個人年金保険が必要になるのかについて確認しましょう。
国民年金保険との違いは?
公的年金と呼ばれるものは、20歳から60歳未満まで加入が義務づけられている国民年金保険と、会社員や公務員が加入する厚生年金保険の2階建て構造になっています。
基本的に65歳から受給が開始されますが(繰り上げ・繰り下げ受給も可能)、公的年金は夫婦で月におよそ22万円の受給額です。
高齢者の夫婦1ヶ月あたりの生活費の平均がおよそ26万円(総務省家計調査報告家計収支参照)ですので、厚生年金保険に加入していたとしても4万円は不足します。
年間で48万円は貯蓄を切り崩していく必要があるのです。
そこでその不足分を補うためにできたのが私的年金の個人年金保険になります。
こちらはiDeco(確定拠出年金)と同じように任意での加入になります。
個人年金保険は、保険会社が扱っている保険商品なので、商品によってリターンやリスクは異なります。
また、受取期間や被保険者が死亡した場合の対応も変わってきます。
このように公的年金では不足することが見込まれる人が加入する任意の年金保険が、個人年金保険です。
個人年金保険の種類とそれぞれの特徴
個人年金保険の商品はいくつかの種類に分かれています。
ひとつは受給期間で区別するもので、もうひとつは運用益を事前に固定するか変動にするかといった区別になります。
自分のライフスタイルに合ったものを選ぶべきですので、どれがどのような特徴を持っているのか明確にしておくことが大切になります。
確定年金
受給期間については、「有限型」と「終身型」に分けられます。
有限型はさらに「確定年金」と「有限年金」に区別されています。
有限型という名前の通り、受給期間が固定されているものです。
5年、10年、15年といった期間を選ぶことができます。
確定年金と有限年金の違いは、被保険者が死亡した場合です。
確定年金であれば、年金受給期間に被保険者が死亡しても残りの期間に対応する年金(または一時金)を受給することができます。
一方で有限年金は被保険者が生存中のみ受給可能ですので、こちらの保険商品は割安になっています。
終身年金
終身型の個人年金保険を「終身年金」と呼びます。こ
ちらは受給期間に制限がないため、被保険者が生存している間は一生涯受給される仕組みです。有限年金よりも割高になります。
なお、被保険者が死亡した場合は受け取れません。
保証期間付終身年金もあり、この場合は保証期間中に被保険者が死亡すると、残りの保証期間に対応する年金(または一時金)を受け取ることができます。
夫婦年金の場合は、どちらかが生存している限り受給されるもので、さらにこれに10年といった保証期間が設定されている場合、保証期間中に夫婦両方が死亡すると残りの保証期間に対する年金(または一時金)を遺族が受け取ることができます。
定額年金
個人年金保険は運用方法によっても区別されており、契約時に「予定利率」を定めて運用していく商品を「定額年金」と呼びます。
予定利率というのは、運用益から手数料などを差し引いたもので、この数値が高くなればなるほど受給できる金額は大きくなります。
契約時に予定利率が決まっていますから、将来に受け取れる受給額を計算しやすいですし、安心感があります。
堅実に長期の積み立てをしていきたい人にお勧めですが、契約時の予定利率が低い状態でその後上昇していった場合、この後ご紹介する定額年金よりも運用益は小さなものになってしまいます。
ローリスクですが、ローリターンなのが定額年金の特徴です。
変額年金
契約時に予定利率を決定して運用していくのが定額年金なのに対し、運用実績によって受け取る年金額が変わるのが「変額年金」です。
定額年金よりも大きなリターンが期待できますが、その反面、支払ってきた保険料を下回る結果になるリスクもあります。
定額年金がいいのか、変額年金がいいのかは、人それぞれのライフプランによります。
また、定額年金にするのか、変動年金にするのかによって、この後でご紹介する個人年金保険のメリット・デメリットは変わってきますので、注意しましょう。
個人年金保険のメリット
資産形成のための投資の手段はいろいろあります。
株式、投資信託、不動産、外貨預金などたくさんの選択肢がある中で、個人年金保険を選ぶメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?
老後資金を安定して積み立てられる
個人年金保険のメリットのひとつは「安定感」です。定額年金を選べば利回りが確定し、堅実な資産形成をすることができます。
株式などは暴落によって元本を大きく割り込むリスクがありますが、個人年金保険はそういったリスクを低く抑えて着実に老後資金を積み立てすることができるのです。
利回りは決して高くはありません。
特に定額年金だと予定利率は1%ほどです。
しかし、現代は超低金利時代なので、定期預金として銀行に預けても0.01%ほどの利息しか受け取れません。
つまり定期預金よりも資産を増やしていくことができます。
また、iDecoなどは自分でリターンを決めながら運用をしていかなければならないため、投資経験や知識が必要となってきますが、個人年金保険の場合は、保険会社に任せておけるということで、投資経験が浅くても問題ないという点もメリットのひとつです。
所得控除を受けられる
株式や投資信託の平均利回りが、4~5%ほどですから、個人年金保険の利回りが1%と聞くとあまり魅力を感じないかもしれませんが、個人年金保険の実質利回りはこれよりも高くなります。
それは支払う保険料に応じて、「所得控除」を受けられるからです。
所得控除は、年間の支払い保険料が2万円以下であれば全額控除の対象となります。
2万円超4万円以下で、支払い保険料の50%+1万円の控除。4万円超8万円以下で、支払い保険料の25%+2万円の控除。8万円超だと一律4万円の控除が受けられます。
これが30年間ともなればかなり大きな金額の控除となります。
利回りが低くても、所得控除の分だけでもお得ですので、この「節税効果」が個人年金保険の一番のメリットだといえます。
ただし、定額年金は「個人年金保険料控除」の枠に該当しますが、変額年金は「一般生命保険料控除」の枠になりますので、変額年金を選ぶ場合は、他の生命保険と被ってしまわないように注意してください。
また、受給期間が「60歳以降で10年以上」の商品でなければ個人年金保険料控除を受けられないことになっています。
個人年金保険のデメリット
安定して長期の積み立てができ、さらに節税効果もある個人年金保険ですが、デメリットもありますので、その点は事前にしっかりと把握したうえで資産運用をしていく必要があります。
個人年金保険のデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?
インフレの影響を受けやすい
定額年金での運用の場合、予定利率が決まっているわけですが、それ以上に物価上昇が起きた場合、実質的な資産の価値は元本割れとなってしまうというリスクがあります。
利回りが低いだけに、「インフレに弱い」というというのが、個人年金保険のデメリットです。
しかし、物価上昇、金利上昇に伴い運用益も上昇するのであれば、インフレに対応することができます。
そういった点ではインフレに強いのは変額年金ということになるでしょう。日本は長くデフレの中にいますので、金利の上昇というイメージは湧きにくいですが、将来どうなるかはわかりません。
そう考えると、ひとつに集中投資するのではなく、バランスよく分散投資していくことが大切になります。
途中解約すると損になる
老後資産を形成していくためにも、個人年金保険は長期に積み立てしていくことになりますが、もしかすると保険料の支払いが厳しくなったなどの理由で、解約しなければならないケースも起きてくるかもしれません。
この場合、個人年金保険は貯蓄型ですから、解約すると「解約返戻金」を受け取ることができます。
基本的には途中解約すると、支払ってきた保険料よりも解約返戻金の方が少なくなります。
これは商品のプランや、解約時期にもよって異なり、加入時期が5年未満で解約すると返戻率はだいたい80%を割り込みます。
20年加入していても返戻率は100%に届かないぐらいです。
特に1年、2年で解約すると大幅な損失となりますので、途中解約する際はよく確認しておくべきですし、加入する際に無理のない積み立てができるように考慮すべきです。
このように「途中解約すると損になる」という点が、個人年金保険の一番のデメリットとなります。
老後の資産形成のための目標設定も大事ですが、途中解約にはならないようにどの商品のどんなプランにするのかを決めるようにしましょう。