高齢者がかかりやすい骨粗しょう症とは?原因や対策について

健康

はじめに

日本の骨粗しょう症患者は全国で約1280万人と言われており、50歳だと9人に1人、60歳を超えると3人に1人が発症しています。
そこで今回は骨粗しょう症の種類や特徴、健康寿命との関係性などについてご紹介していきます。

骨粗しょう症とは?

高齢者がかかりやすい骨粗しょう症とは?原因や対策について
骨粗しょう症は骨の中の「骨密度」が低下して骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気です。
20代~30代前半の若者は体の新陳代謝が活発で、要らなくなった古い骨を壊す「骨吸収」と、新しい骨を生み出す「骨形成」という骨の代謝作用が、体の中でバランスよく行なわれ、自然に骨密度が保たれています。

しかし、40歳を超えた頃から骨の代謝作用が徐々に弱まり、ほどんど自覚症状がないまま、ゆっくりと体中の骨密度が低下しはじめます。
そのまま骨粗しょう症対策をしなければ、60歳を超えた辺りから骨密度が加速度的に低下し始め、背骨や足腰の骨が実際にもろくなり、腰痛や膝の痛み、股関節の違和感、背中が丸くなるなどの具体的な症状が出てきます。

骨粗しょう症の原因はさまざまです。
例えば過食や不規則な食生活から発病する糖尿病や、内分泌代謝の異常、ステロイド剤の長期服用による副作用が、骨粗しょう症を引き起こす大きな要因とされています。
しかし、一番大きな原因は加齢による骨密度の低下と、女性ホルモンの減少です。
そのため、特に高齢女性は骨粗しょう症患者がとても多く、女性と男性の比率で言えば4対1ぐらいになります。

健康寿命との関係性

普段の生活に何の支障もなく健康に暮らせる期間を健康寿命といいます。
しかし、高齢者が骨粗しょう症を発症すると、くしゃみをするだけ肋骨を骨折する可能性があり、単に歩いていて不意に転ぶだけで、大腿骨を骨折する例も少なくありません。
特に大腿骨の骨折は、長期の寝たきり状態の原因になることも多く、そうなると足腰や脳の働きが弱まり、認知症を発症するリスクも高くなります。
当然寝たきり状態では普通の生活が維持できなくなるため、将来の健康寿命も相対的に短くなってしまいます。
つまり、健康寿命をできるだけ伸ばすためにも、骨粗しょう症の正しい知識を深め、効果的な対策を日々続けて行くことが重要です。

骨粗しょう症の種類とそれぞれの特徴

高齢者がかかりやすい骨粗しょう症とは?原因や対策について
骨粗しょう症には大きく分けて「原発性⾻粗鬆症」「続発性骨粗鬆症」「特発性骨粗鬆症」という3つの種類があります。
この章では3種類の骨粗しょう症の発症原因や特徴を詳しくご紹介します。

原発性⾻粗鬆症

原発性⾻粗鬆症は別の病気から引き起こされるものではなく、主に加齢や体内ホルモンの減少で引き起こされる場合に付けられる医学的な名称で、骨粗しょう症に掛かる患者の約90%を占めています。
代表的な原発性骨粗しょう症は、女性患者のうち約95%が発症する「閉経後骨粗しょう症」と、男性患者の約80%が発症する「男性骨粗しょう症」に分けられます。

閉経後骨粗しょう症は、女性が50代前半で閉経を迎えたあと、体内の女性ホルモンが急激に少なくなることで発症します。
具体的な症状は背骨がもろくなると、背中が丸くなって、上半身の姿勢が悪くなります。
腰椎がもろくなると腰椎が圧迫骨折して重度の腰痛を引き起こし、腰が徐々に曲がりはじめ、そのまま悪化すると、杖を突かないと歩けなくなる場合もあります。

男性骨粗しょう症の主な原因は加齢や喫煙、過度の飲酒、成人病、不規則な生活です。
男性が骨粗しょう症を発症する確率は女性に比べて4分の1程度ですが、それでも毎年300万人ほどが発症しています。

続発性骨粗鬆症

続発性骨粗鬆症は原因となる病気や薬の影響で、間接的に引き起こされる骨粗しょう症のことを言います。
続発性骨粗鬆症の原因として特に多いのが甲状腺:副甲状腺機能亢進症や、糖尿病などの内分泌異常と、慢性腎臓病による各種ビタミンや、ミネラルバランスの乱れなどから引き起こされる骨粗しょう症です。

特発性骨粗鬆症

突発性というのは医学用語で「原因不明」という意味で、原因不明の骨粗しょう症は「特発性骨粗鬆症」と呼ばれます。
特発性骨粗鬆症は中で一番多いのは「妊娠後骨粗鬆症」で、言葉の通り妊娠後に発覚することが多くなります。

よくあるケースでは、妊婦さんが子宮の中の胎児に体内のカルシウムが大きく奪われ、骨形成が滞り、出産後は赤ちゃんへの授乳で、急速に骨がもろくなります。
さらに育児期間は赤ちゃんを抱きあげたり背負ったりして、腰への負担が大きくなりがちです。
育児中の女性が特発性骨粗鬆症を発症すると、年齢が若くても腰椎を圧迫骨折することがよくあり、すぐに治療しないとますます病状が悪化します。

骨粗しょう症の原因

高齢者がかかりやすい骨粗しょう症とは?原因や対策について
骨粗しょう症の原因はさまざまですが、ここでは特に注意すべき3つの原因について、詳しく解説していきます。

加齢によるホルモンバランスの変化

卵巣細胞から放出されるエストロゲンは前述の古い骨を壊す骨吸収と、新しい骨を作り出す骨形成を、ちょうどよくバランスさせる作用があります。
しかし女性は閉経後、体内で生成されるエストロゲンの量が急減します。
エストロゲンが急減すると骨形成と骨吸収のバランスがくずれ、古い骨を壊す骨吸収のみが進行し、骨の中がスカスカになって骨がもろくなり、骨粗しょう症を発症します。

これは男性の場合も同様で、若い頃に体内で多く存在する、男性ホルモンの代表格「テストステロン」が、加齢により少しずつ減少します。
近年の研究ではこのテストステロンの減少が、血中でわずかに存在するエストロゲンの減少につながり、女性の閉経後骨粗しょう症と似たような作用順序で、ゆっくりと骨がもろくなるとされています。

病気や薬の副作用

例えば、甲状腺:副甲状腺機能亢進症は、体内で過剰に分泌される副甲状腺ホルモンの影響で、血中のカルシウム濃度が異常に高くなって骨がもろくなり、骨粗しょう症を引き起こします。
1型糖尿病はすい臓から分泌され、血糖値をさげる働きのある「インスリン」という体内ホルモンが、生まれつき不足する病気です。
インスリンは体内で新しい骨を作り、骨形成を促進させる「骨芽細胞」と密接な関係があります。
そのため生まれつきインスリンの分泌がほとんど無い1型糖尿病患者は、骨芽細胞による骨形成がなされず、骨がもろくなりやすいため、高齢になるほど骨粗しょう症の発症確率が高くなります。

そのほか慢性腎臓病が進行すると、腎機能が急速に弱まります。
腎機能が弱まると体内のカルシウムを吸収する際に必要なビタミンDが、体内に取り込めなくなり、体外へ多く排出されるようになります。
ビタミンDが不足すると、カルシウムが体内で吸収されず、新しい骨を作り出す骨形成が滞り、急速に骨がもろくなります。

薬の副作用で一番多い骨粗しょう症は「ステロイド性骨粗鬆症」です。
ステロイド薬にはさまざまな種類があり、アレルギーの病気や腎臓病、膠原病や関節リウマチなどに幅広く使われます。
しかしステロイド薬の長期使用は、骨形成の働きを弱め、骨吸収を増進させ、結果として骨粗しょう症に掛かりやすくなるため、注意が必要です。

生活習慣の乱れ

不規則な食習慣や暴飲暴食が原因で発症する2型糖尿病は、インスリン自体の分泌にはそれほど問題はありませんが、病気を放置して症状が悪化すると、高血糖の状態が長く続きやすくなります。
高血糖状態は「終末糖化産物」という、骨形成に悪影響を与える物質が多く生成されるため、結果として骨密度が低下し骨がもろくなり、骨粗しょう症を発症しやすくなります。

また、2型糖尿病は腎臓機能が大幅に低下する「糖尿病性腎症」を発症しやすくなります。
糖尿病性腎症は慢性腎臓病の1つで、腎臓からビタミンDが流出してカルシウムが大幅に不足し、骨がもろくなります。
そのため、2型糖尿病患者は主治医の指示の下、血糖値のコントロールを十分に行うようにしましょう。

今日から始められる予防策

高齢者がかかりやすい骨粗しょう症とは?原因や対策について
ここからは今すぐ始められる骨粗しょう症に効果的な予防策についてご紹介していきます。
自分ができる範囲のことから、しっかりと対策を積み重ねていきましょう。

適度な運動を継続する

骨は衝撃や負荷を与えると、新しい骨を作る骨形成が活発化し「骨密度が高まる」という性質を持っています。
その性質を活用して、骨に衝撃や負荷を継続的に与える運動は、骨粗しょう症予防にとても効果的です。

最も簡単なのは1日50回やるだけで効果を発揮する「その場でジャンプ」です。
やり方は簡単で、その場でジャンプを繰り返すだけですが、この運動を継続すると、特に下半身の骨密度が大きく高まります。

ただし、すでに骨粗しょう症を患っている方は無理をせず、医師の判断を聞いてから、適切な方法で運動を行いましょう。
そのほか膝をわずかに曲げて伸ばす軽いストレッチ運動や、いつもの散歩時間を少し増やすだけでも、骨粗しょう症の予防効果は高まります。

栄養バランスを意識する

カルシウムの定期的な摂取は骨粗しょう症予防に最適なので、牛乳やその他の乳製品、小魚や大豆食品などを積極的に食べましょう。
他にも、体内カルシウムを吸収する作用を持つビタミンDはウナギやサンマなどの魚介類、しいたけやきくらげなどのキノコ類に多く含まれています。

また、ニラや小松菜など青物野菜に含まれるビタミンKは新しい骨を作り出す骨形成を促進させる役割があります。
これらの栄養素が豊富な食品をバランス良く摂取することで、骨粗しょう症だけでなく他の生活習慣病などの発生リスクも大きく抑えることができます。

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