がん予防には何が必要?原因になる生活習慣や効果的な予防法について

この記事は約7分で読めます。

はじめに

多くの人が老後生活で不安を感じる点が、「生活費などのお金の問題」、そして「健康の問題」です。
私的年金やつみたてNISAなどの長期積立によって、老後の資産形成を行っていくことができますが、健康を害してしまったのでは快適な老後の生活は送れません。
今回は健康面で最も注意しなければいけない「がん」について、発症の原因や効果的な予防策についてお伝えしていきます。
60歳からがん予防を始めても効果はあります。
遅すぎることはありませんので、ぜひ今後の生活の参考にされてください。

「がん」は高齢者の死因第1位

厚生労働省から結果が発表されている「人口動態統計」によると、令和元年の日本全体の志望要因第1位が「悪性新生物」(がん)で、27.3%です。
第2位は心疾患で、以降は老衰、脳血管疾患、肺炎と続きます。
これは平成30年も同様の順位で、がんは27.4%になっていました。

年代別に見ていっても、60歳から89歳の高齢者の死因第1位はがんです。
続いて心疾患となります。
90歳を超えるとがんの死因の割合は減り、心疾患が上位となってきます。
0歳を迎え、老後生活に突入して最も警戒すべき病気ががんということです。

ちなみに男性は高齢になると、消化器系(胃・大腸・肝臓)のがんの割合が減り、肺がんや前立腺がんの割合が増します。
女性は高齢になると、乳がんや子宮がん、卵巣がんの割合が減り、消化器系のがんと肺がんの割合が増えています。

「がん」の死亡率はどのくらい?

次にがんの「死亡率」に注目していきましょう。
令和元年のがんの死亡率は304.2という結果でした。
これは10万人あたりがんで亡くなる人の人数を示しています。
つまり10万人あたり304人ががんによって亡くなっているということです。
死因第2位の心疾患の死亡率が167.9ですから、その差は歴然です。
ちなみに平成30年のがんの死亡率も300.7と報告されていますので、ほとんど変化していないことがわかります。

全がんの死亡率を見ていくと、55~59歳までは男女とも差がなく250ぐらいですが、60歳を境に上昇し、さらに男女で大きな差が見られます。
70~74歳だと男性でおよそ800、女性でおよそ400です。
80~84歳だと男性でなんと1500超、女性で800まで死亡率が高まっています。
年齢が増すごとにがんのリスクが高くなっていることを物語っています。

「がん」の原因になる3つの生活習慣

がんを発症する原因は感染症に由来するものなどがありますが、心疾患や脳血管疾患の原因と共通する点が「生活習慣」です。
そのため、がん・心疾患・脳血管疾患は三大生活習慣病と呼ばれているのです。
ここでは生活習慣の中でも主要な3つの項目について触れていきます。

喫煙

がんのリスクを最も高めるのが「タバコの喫煙」です。
喫煙は、肺がんや口腔がん、咽頭がん、食道がん。
胃がんといった様々ながんのリスクを高めることで知られています。
実際にがんを発症した男性の30%、女性の5%は喫煙が関与していると考えられており、日常的に喫煙するという生活習慣が、がんを発症させる大きな原因です。

タバコの煙には、発がん性物質がおよそ70種類も含まれています。
そのため、自分自身は喫煙しないが、家族や身近な人が喫煙する場合、副流煙によって受動喫煙(間接喫煙)の状態に陥ります。
この場合でも肺がんのリスクは高まりますので、環境面にも注意が必要になります。

飲酒

お酒を飲むことが日常になっている場合、体質や摂取量にもよりますが、「飲酒」ががん発症のリスクを高めている可能性があります。
要因としては、体内に摂取されたエタノールが、発がん性のあるアセトアルデヒドに代謝されるためです。
特に分解酵素の弱い人(顔が赤くなったり、吐き気を起こすようなフラッシング反応)はより注意が必要です。

飲酒により、食道がんや口腔がん、咽頭がん、喉頭がんのリスクが高まり、さらに日常的に喫煙も行っている場合は、喫煙と飲酒の相互作用によって、よりがんの発症リスクが高まると考えられています。

塩分摂取

がんのリスクを高める要因のひとつに「塩分摂取」があります。塩蔵食品による高濃度塩分は、胃の粘膜を保護している粘膜に悪影響を及ぼし、胃酸による胃粘膜の炎症を引き起こします。
結果として胃がんのリスクが高まるのです。
また、塩蔵食品に含まれている亜硝酸やニトロン化合物は、発がん性物質を含んでいます。

ちなみに塩分摂取の過多だけではなく、牛や豚や羊といった赤肉・加工肉は大腸がんのリスクを高めますし、野菜不足や果物不足の場合は胃がんだけでなく食道がんのリスクを高めます。
つまり偏りのある食事が多いといった生活習慣の場合も、がん発症の可能性を高めているといえます。

5つの健康習慣で「がん」リスクは半減する?

細菌やウイルスによる感染については、ワクチンの接種や感染予防といった取り組みが必要になりますが、生活習慣病としてのがんについては健康習慣を改善することでリスクを軽減することが可能です。
ここでは、がんを予防するための5つの健康習慣についてお伝えしていきます。

5つすべての項目を実践した場合、1つだけの項目を実践している人に比べ、がん発症のリスクが男性で43%減、女性で37%減と大幅に低下します。
ですから1つだけではなく、すべての項目を満たせるように健康習慣を見直してください。

適度に運動する

運動不足だとがんの結腸がんや乳がん、子宮がんのリスクを高めますので、「適度な運動」を取り入れるようにしましょう。
必要な運動は中・高強度のもので、64歳までであれば1日1時間ほどの歩行、週に1回1時間汗をかくほどの運動が該当します。
ただし、無理のない範囲での運動にしなければ逆効果になりますので注意してください。
65歳以上は体力を考慮しながら1日40分ほどの歩行で充分です。

運動不足が解消されると、肥満の解消にもなりますので、インスリンの働きが改善され、免疫機能が高まるとともに、がんが発症しにくくなります
。肥満解消は次の項目の適正体重を維持することにも繋がっていきます。
適度な運動を生活習慣に取り入れると、がん予防の好循環になるということです。

適正体重を維持する

肥満の場合、食道がんや膵臓がん、肝臓がん、大腸がんのリスクを高めます。日本人の場合、BMIの数値が22だと適正値で、25以上になると肥満というカテゴリーに入ります。
BMIの計算式は、体重(kg)÷身長(m)の2乗です。適正体重を維持すると、がんにかかりにくくなります。
ちなみに痩せすぎも栄養不足でがんのリスクを高めますので注意してください。
運動や食生活を改善して適正体重を維持することが大切になります。

食生活を見直す

野菜や果物には、発がん物質を解毒する酵素を活性化させるカロテンや葉酸、ビタミンやイソチオシアネートが含まれていますので、がんのリスクを低下させる効果が期待できます。
逆に野菜不足や果物不足は食道がんのリスクを高めます。

具体的には、非でんぷん野菜は口腔がん、咽頭がん、喉頭がんに効果があり、にんにくは大腸がん、果物は口腔がんや咽頭がん、喉頭がんや肺がんへの効果、牛乳は大腸がん、コーヒーは肝臓がんと子宮体がんに効果が期待できます。
バランスの悪い食事になっているようでしたら、野菜や果物を積極的に摂取できるバランスの良い食生活にしていきましょう。

禁煙する

喫煙している人は、タバコを吸わない人と比較して、がんを発症するリスクが1.5倍も高まります。
このようにがんのリスクを最も高めるのは喫煙であることが、科学的に証明されていますので、喫煙が習慣になっている人は、「禁煙する」ということが一番効果的な予防策になります。

さらにがん患者が喫煙すると、二次がんを発症するリスクが高まることが報告されています。
ですから喫煙しない生活習慣を何よりも優先して目指してください。
リスクはわかっていても喫煙をやめられない人は、禁煙外来など専門機関を利用する方法もあります。

ちなみに長年禁煙を続けた人は、人生で一度も喫煙したことのない人と、がんのリスクに差が無くなるという研究結果も、国立がん研究センターから発表されています。

節酒する

飲酒について、がんを予防するためにまったく飲まないところまで制限をかける必要はないでしょう。
問題は毎日飲み過ぎる状態が続いている場合です。これは生活習慣の改善が必要になってきます。

摂取された純エタノール量が46g以上になると、がんのリスクは40%増加し、69g以上になると60%も増加します。
このようにアルコールの飲み過ぎが、がんのリスクを高めますから、目安として「日本酒1合」または、「ビール大瓶1本」、「ワインボトル1/3」までというようにルールを決め、お酒を楽しむことをお勧めします。

心配な場合は主治医に相談しよう

乱れた生活習慣を長年に渡り続けてきたのだとしたら、がん発症の不安を感じているのではないでしょうか。
心配していても解決しませんので、できる限り生活習慣を改善しつつ、「がん検診」をしっかり受けるようにしてください。
がん検診を受けると、がんについてはっきりするわけですが、仮にがんだと判明した場合は、まずかかりつけの主治医(ファーストオピニオン)に相談してください。
もし主治医がいない、または主治医の説明がわかりにくいということがありましたら、がん専門相談員が待機している「がん相談支援センター」に連絡してみるのがいいでしょう。
全国のがん診療連携拠点病院に設置されており、通院していなくても無料で利用できます。