はじめに
日本の厳しい経済状況を背景に、株式に投資するだけではなく株主優待制度を使ってさらに投資効果を上げ、生活資金の節約に繋げようとする個人投資家が増えています。
この記事では株主優待の概要や、正しい株式銘柄の選び方、おすすめの株主優待銘柄などを詳しく説明していきます。
株主優待とは?
株主優待とは企業が自社の株を買ってくれた株主に対し、自社製品をプレゼントしたり、自社サービスの割引券を配布したりする制度のことです。
現在は東証1部上場企業の約4割がこの株主優待を行っており、さまざまな優待特典で競い合い、株主を呼び込もうとしています。
例えば大手航空会社は国内線の搭乗券を50%割引するクーポン券を配布したり、小売大手のイオングループは持ち株に応じて、傘下のイオンスーパーで買い物をすると、掛かった金額の3%~7%をキャッシュバックする「オーナーズカード」を配布しています。
ほかにも企業によっては株式を長期保有すると、さらにお得な株主優待を付与するなど、さまざまな形で他社との差別化を行っています。
株主優待は日本独自の文化?
海外では業績好調な企業が年間の配当金の回数を増やす等の特典を付けている銘柄はありますが、日本のような株主優待制度を実施ている国は、まず見当たりません。
なぜ日本で株主優待が始まったかについては諸説あり、現在では日本のお中元やお歳暮などの「贈答文化」が起源になったという説が、一番有力です。
つまり株主が株式を買って企業の成長を応援する代わりに、企業側は感謝の意味を込めて株主優待という「贈り物」を株主に届けたところ、大いに喜ばれたため、日本にだけこの制度が定着したと言われています。
株主優待の条件
株主優待と配当金には必ず押さえるべき条件が幾つかあります。
この章では配当金や株主優待の権利を得るための必要な株式数や、株式の保有期限について詳しくご紹介します。
必要な枚数の株式を購入する
株式優待は多くの投資家が自社の株式に投資して貰う制度なため、多くの銘柄が東証1部上場の最低売買単位である、100株に合わせて株式優待を実施しています。
しかし銘柄によっては200株以上保有しないと株式優待が受けられなかったり、500株以上に設定している場合もあるため、注意が必要です。
権利付き最終日まで保有する
配当金や株式優待には「権利確定日」という制度があります。
権利確定日とは株式名簿に記載され、株主としての権利が確定する日のことを言います。
権利確定日は通常、上半期や年度末ごとに設定され、株主は株式優待や配当金が得られます。
ややこしいのは「権利確定日の2営業日前」までに株式を買い、翌営業日まで持ち越さないと、この権利が発生しないことです。
権利確定日の2日前を「権利付き最終日」と呼び、この日に株式を持っているかどうかで、権利を得られるかが決定します。
例えば月末の28日が権利確定日とすれば、その2日前の26日、つまり権利付き最終日までに株式を保有し、翌日の27日(営業日)まで持ち越さないと権利が得られません。
なお配当金や株主優待が人気の銘柄は、権利付き最終日の前に株価が上昇することがよくあり、短期的なリターンを得たい場合は、過去の株式チャートを参考にしながら、積極的に投資するのもおすすめです。
株主優待の正しい選び方
株式優待は投資先の企業をさまざまな基準で見極めることがとても重要です。
ここでは有望な株式銘柄を見極める3つのポイントを、詳しくお伝えしていきます。
投資先として共感できるか?
いくら大手企業であっても裏で不正を行い莫大な利益を上げていたり、政治家と結託して有利な条件を引き出す、などという場合は、投資家の共感が得られず、逆に大きな反感を買っているため、成長どころか暴落の危険が常にあります。
逆に納得できる確かな技術や、身近なサービスを長年提供しているなど、さまざまな形で多くの投資家の共感を得られる企業は、順調に成長する可能性が高く、投資先に向いていると言えます。
配当利回りや成長率は悪くないか?
配当利回り(%)とは株価に対してどれだけの配当金が得られるのかを示した指標で、1株あたりの配当利回りは「年間配当金÷株価×100」の計算式で求められます。
例えば年間の配当金が5万円で株価が100万円だとすると配当利回りは5%になり、銘柄同士を比べて同じ株価の場合は、配当金が多いほど年間の配当利回りが上がり、逆なら下がります。
配当金とは企業が確定した利益の中から、投資家に分配されるお金のことです。
成長している企業は利益が多く、配当金も多くなると考えがちですが、成長しているからこそ、事業規模を拡張したり、新規事業に乗り出すことが多いです。
そのために配当金を低く押さえ、内部留保(企業が保有する資金)に回すことがよくあり、逆にこれ以上成長が望めない企業は、配当金を増やすことで株式市場から多くの資金を得ようと考えます。
配当利回りはこれらのことをよく踏まえつつ、慎重に投資先を選ぶべきでしょう。
必要株式数や保有年数に問題はないか?
先にご紹介しましたが株式優待には、必要な株式数が設けられています。
また株式の保有数により、受けられる優待が違うことが多いため、この辺りの情報を事前によく調べて投資することが大切です。
もうの注意点は1つは株式の継続保有期間です。
銘柄の中には権利確定日の半年前や1年前から、株式を保有しなければ「優待が受けられない」ことがあるため、事前によく調べましょう。
おすすめ株主優待5選
ここまで株主優待の概要や正しい選び方を詳しくご紹介しましたが、それでもうまく銘柄が選べない方のために、お得な株主優待が受けられる、おすすめの銘柄を5つご紹介ます。
オリックス(8591)
オリックスはホテルや銀行、生命保険、金融業など、多角的に業務展開している国内最大規模の総合リース会社で、オリックス・バファローズというプロ野球球団を80年以上経営しています。
株主だけに配布される「ふるさと優待」という特別なカタログギフトの中から、1点無料で貰えます(保有株式年数により2コースあり)。
そのほか「株主カード」も配布され、プロ野球観戦や水族館の利用、ホテルの宿泊、食事、カーリースなどがすべて割引価格となり、有効期限内なら何度でも利用可能です。
すかいらーくホールディングス(3197)
すかいらーくホールディングスは大手ファミリーレストランとして有名な「ガスト」や「バーミヤン」を、全国でチェーン展開している外食企業です。
優待カードを持ち株数に応じて配布し、すかいらーく系列のファミリーレストランで割引(500円単位)が可能です。
年間100株から299株は4000円、300株から499株は1万円、500株から999株は16000円、1000株以上なら年間合計34000円の割引が受けられます(※2020年6月末の権利確定日より変更して実施)。
イオン(8267)
イオンは全国で「イオン」ブランドのスーパーマーケットを全国でチェーン展開している、国内最大規模の流通企業グループです。
電子マネーのWAONやイオンクレジットなど、金融の分野にも積極的に参入しています。
株主にはイオンオーナーズカードが配布され、イオンで買い物をすると、持ち株数に応じてキャッシュバックを増やすことができます。
100株から499株は3%、500株から999株は4%、1000株から2999株は5%、3000株以上は7%のキャッシュバックを、ほぼ半年ごとに受けられます。
日清食品ホールディングス(2897)
日清食品ホールディングスは世界初のカップ麺「カップヌードル」を始め、さまざまなインスタント食品を数多く手掛ける、国内最大規模の食品総合メーカーです。
株主は日清食品グループの製品詰め合わせセット、あるいは「ひよこちゃん」という非売品のオリジナルグッズを選び、持ち株数に応じて配布されます。
また優待のすべてをWFP(国際連合世界食糧計画)に寄付することも可能です。
優待の配布は以下の通りになります。
・100株から299株は3000円相当が年1回配布
・300株から999株は3500円相当が年2回配布
・1000株から2999株は4500円相当が年2回配布
・3000株以上は5500円相当が年2回配布
その他、3年以上株式を長期保有している株主(300株以上)には、配布される優待に+1000円分の特典が付きます。
日本マクドナルドホールディングス(2702)
日本マクドナルドホールディングスは「マクドナルド」という有名ハンバーガーショップを、全国でチェーン展開している大手フランチャイズ企業です。
株主はハンバーガーや各種ドリンク、サイドメニューの引換券が、6枚ずつセットになった冊子が、持ち株数に応じて貰えます。
100株から299株は年間1冊、300株から499株は年間3冊、500株以上は年間5冊が配布されます。
まとめ
株式優待や配当金目的の投資は、名の通っている国内企業の中から、確かな技術やサービスを長年提供し続けて成長している、堅実な企業の銘柄を選ぶことが大切です。
さらに保有株式数や保有期間、優待や配当の権利が確定する日数と期限を把握しつつ、着実に投資すれば、株の相場が大きく下がった時にも、確かなリターンに繋がり、あなたの生活の大きな支えとなるはずです。