高齢者に多い慢性腎臓病とは?原因や予防法について徹底解説

健康

はじめに

食の欧米化や運動量の減少などによって、近年の日本では慢性腎臓病患者が急激に増加しつつあります。
そこで今回は、慢性腎臓病の主な原因や効果的な予防法などについて解説していきます。

慢性腎臓病とは?

高齢者に多い慢性腎臓病とは?原因や予防法について徹底解説
慢性腎臓病とは腎機能が健康な人と比較して60%以下に低下するか、腎臓でろ過され体内に取り込まれるべきタンパク質が、3ヶ月以上体外に排出されている状態のことを指します。
慢性腎臓病は根本的な治療方法がないので、厳しい食事制限と服薬によって、病気の進行を遅らせることしかできません。
また、更に悪化すれば人工透析が必要になり、4~5時間かかる透析を週に何度も行わなければいけません。
このように慢性腎臓病は非常に恐ろしい病気である一方で、誰しもが発症する可能性があります。

急性腎障害との違い

腎臓病は急性腎障害と、慢性腎障害に分けられます。
急性腎障害とは感染症や薬物、何らかの毒物の影響で、腎機能が一時的に低下した状態のことで、基本的に病院で適切な治療を受ければ、腎機能は元に戻る可能性が高いです。
一方で、慢性腎障害の慢性腎臓病は数ヶ月から数十年の長い期間を経て、徐々に病状が悪化し、その間に低下した腎機能は元に戻りません。

健康寿命は伸びても腎臓病患者は増え続けている?

健康寿命とは国連世界保健機関(WHO)が提唱している指標で、平均寿命から介護が必要な期間を差し引いた期間のことを指します。
例えば、2016年度の統計では、日本人の健康寿命は男性が72.14年、女性が74.79年というデータが報告されています。
ただし、腎臓病患者も毎年増加しており、日本全国で約1,330万人の患者が居ると推計されています。

これは成人の8人に1人が発病している計算になり、近年ではかなり身近な国民病として認知されつつあります。
腎臓病は健康寿命を大きく縮めることから、全ての人が自分事として捉える必要があります。

慢性腎臓病に含まれる主な病気

高齢者に多い慢性腎臓病とは?原因や予防法について徹底解説
通常、慢性腎臓病は単体で引き起こされる病気ではなく、その他の病気をきっかけとして悪化することが多いです。
この章では患者数が多く、特に注意すべき腎臓病の関連疾患を3つご紹介します。

糖尿病性腎症

糖尿病性腎症は糖尿病で引き起こされる深刻な合併症の1つです。
糖尿病はすい臓から分泌されるインスリンが少なくなり、血中の糖分が増え、血管が高血糖化する病気です。
一方で、腎臓は血液を常にろ過し、血中の糖やタンパク質を回収したり、不要な塩分や老廃物を尿と一緒に排出し、血液の状態を、正常に保つ機能を持っています。

しかし糖尿病で血管の高血糖状態が長く続くと、腎臓内でろ過を担当する「糸球体」の毛細血管が、徐々に損傷して腎機能が低下していきます。このような状態を「糖尿病性腎症」と呼びます。
糖尿病性腎症を未治療のまま放置すれば、体から腎機能がほぼ完全に失われた「腎不全」になる可能性が高くなります。

腎硬化症

腎硬化症とは高血圧の影響で、腎臓の血管に異常が起こり、腎機能が低下する病気です。
高血圧の原因は塩分の取り過ぎや、運動不足による肥満など様々な要因が考えられますし、場合によっては肉親から遺伝する可能性もあります。

高血圧を放置すると、腎臓の細動脈(細い動脈)が動脈硬化を引き起こすことで、細動脈の内径が狭くなります。
内径が狭くなると腎臓に流入する血液が減り、毛細血管の集合体である糸球体が徐々に硬化し、腎機能も低下していきます。
近年の腎硬化症は高齢者だけではなく、30~40代前後の若い世代にも広がりつつあります。

慢性糸球体腎

慢性糸球体腎は主に「IgA腎症」により引き起こされ、タンパク尿や血尿が長期間持続的に続く症状のことを指します。
IgA腎症のはっきりとした原因は分かっていませんが、細菌やウイルスによる感染症を発症した後、体内で生成されるIgAが腎臓の糸球体に付着して炎症を起こし、腎機能が低下するとされています。
そのため慢性糸球体腎は、あらゆる世代で発症の可能性があります。

IgA腎症が悪化すると、「ネフローゼ症候群」や「低タンパク血症」などを併発する可能性が高くなることから、早期治療が必須になります。

慢性腎臓病には初期症状がない?

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慢性腎臓病は目立った初期症状がなく、かなり症状が進まない限り、自覚することが難しいとされています。
自覚症状が現れ始めた時には、既に腎機能の半分以上が失われてることも多く、そうなると人工透析に移らざるをえなくなります。
そのようなシナリオを避けるためには、何よりも早期発見と早期治療が重要です。

慢性腎臓病が進行すると現れる症状

慢性腎臓病は腎機能の半分が失われた頃から、頻繁な夜間尿、少し疲れやすいなどの自覚症状が現れます。
それらを放置すると腎機能が30%以下に低下し、極度の疲労感、吐き気、食欲の低下、手足のしびれなどが現れます。
更に腎機能が15%以下になると、血中のカリウム濃度が大きく上がることで「高カリウム血症」を併発し、最終的には死に至ることになります。

慢性腎臓病に効果的な予防法

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慢性腎臓病は恐ろしい病気ですが、しっかりと予防すれば発症確率を大きく下げることが可能です。
ここでは今日からお手軽に始められる予防法を3つご紹介します。

塩分と脂質を取りすぎない

高血圧の主な要因として塩分の過剰摂取が、大きく関わっているとされています。
塩分(ナトリウム)が過剰に体内に入ると、塩分濃度を調整するために摂取する水分量が増えるので、結果として血圧が向上することになります。
また、塩分と脂質が合わさると、食欲が平常時よりも増加することが科学的に解明されていますし、脂質自体にも動脈硬化や血栓を引き起こす効果があります。
そのため、塩分と脂質の摂取量には十分に注意して、健康的な食生活を目指しましょう。

感染症対策をしっかりと行う

細菌やウィルスによる感染症は腎臓の病気を引き起こすことがあります。
例えば、細菌に冒され膀胱炎になり、炎症が尿管を通って腎臓に及ぶと「腎盂腎炎」という、高熱が出る深刻な病気を発症します。
腎盂腎炎は腎機能を大きく低下させ、医療機関に入院して早期に治療を行なわないと全身が細菌に冒され、より重篤な「敗血症」を引き起こす可能性があります。
他にもB型やC型肝炎は腎臓の血流に影響を及ぼすことがあり、症状次第では腎機能の低下に繋がります。

過剰な服薬は避ける

主に薬物は血中から肝臓や腎臓を通り、尿の中に排出されます。
そのため風邪薬や頭痛薬、漢方薬などの過剰な服薬は、肝臓や腎臓の負担となり、腎機能を低下させる要因になることがあります。
特に高齢者が新しい薬の服用を開始する場合は、持病の薬との飲み合わせなども医師に相談し、適切な量を服薬することが大切です。

慢性腎臓病は定期健診で発見できる?

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腎臓病は職場で行なわれる定期健診で見つかることが多く、ある医学統計では腎臓病患者の約7割が、何らかの健康診断を受けた結果、判明したとされています。
そのため、自営業やフリーランスなど、定期的な健康診断を受けられない人も、年一回の健康診断は自費で受けることをおすすめします。

費用は血液検査や血圧、尿検査がセットで5000円程度から、胃カメラや大腸内視鏡、MRIなど人間ドックの場合は5万円~10万円ほどで受けられます。
また、現在ではインターネットで血液検査キットを購入して自分で採血し、専門の検査機関に送って診断を受ける方法もあります。

尿検査

尿検査は主に尿中の血液反応や、タンパク質、糖が出ているかどうかを調べる検査です。
もしも、尿検査で血液反応やタンパク質が検出された場合は再度検査を受け、そこでも検出された場合は腎機能が低下している可能性があります。
また、尿中に糖が何度も検出された場合は糖尿病の疑いがあるため、医療機関を受診しなければなりません。
現在ではAmazonなどのショッピングサイトで、尿中の糖やタンパク質を検出できる簡易検査キットが販売されており、自分で手軽に調べることが可能です。

血液検査

血液検査では腎機能をさらに詳しく調べることができます。
さまざまな数値がありますが、中でも特に重要なのが「血清クレアチニン値(Cr)」です。
クレアチニンは筋肉の老廃物で、腎機能が正常なら糸球体でろ過され、尿と一緒にほとんどが体外に排出されます。

しかし、慢性腎臓病の場合は糸球体の働きが低下し、クレアチニンがろ過されず、再度体内に戻され、血中に蓄積されます。
正常な血清クレアチニン値は、男性1.2mg/dl以下、女性1.0mg/dl以下ですが、慢性腎臓病患者は自覚症状が無い状態で2mg/dlを超えることもあり、一般的には8mg/dl以上で人工透析が必要になります。

まとめ

残念ですが、慢性腎臓病で低下した腎機能を正常な状態に戻すことは、現在の医学では不可能とされています。
つまり、慢性腎臓病を防ぐには節度のある食生活と、健康診断を定期的に行うことが最も重要です。
仮に健康診断で異常が発見されたとしても、早期の段階で治療を受けることができれば、健康寿命への影響は最小化することができます。

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