はじめに
最近、「日銀がETFを701億円買い入れた」というニュースが流れました。
これだけ聞くと、「ETFは大企業や国レベルの話で、自分には関係ない」と思う人もいるかもしれませんが、実はETFは個人投資家が手軽に資産を増やすことができる投資方法です。
そこで今回は、そんなETFの仕組みやメリット・デメリットについてご紹介していきます。
ETF(上場投資信託)とは?
ETFは「Exchange Traded Fund」の略で、「上場投資信託」とも呼ばれることがあります。
一般的には、日経平均株価指数のようなインデックスに連動した運用益を目標としており、一般投資家はETFを購入することで購入額に応じた分配益を受け取ることができます。
投資信託との違い
ETFは投資信託に含まれますが、インデックスと連動しているため、常に値動きをしています。
個人投資家はその価格をチェックしながら、24時間いつでも自由に売買できるため、投資信託よりもフレキシブルに取引を行えます。
一方で、一般的な投資信託と異なり、ETFは基本的には自動積立に対応していないので、毎月自分で計画を立てて購入や売却をしなければいけません。
そのため、ある程度チャートや相場を見る力が求められます。
ETFの主な種類
2021年6月21日に日銀が買い入れたETFはTOPIX型のみでしたが、ETFには他にも様々な種類があります。
実はETFは経済情勢に関わらず利益を出すことが可能なので、種類別の特徴を知って上手に使い分けましょう。
国内株式型
日本において代表的なETFといえば、「国内株式型」が該当します。
国内株式型は日本の大企業225社の株価で構成された「日経平均株価指数」(日経225)と、2,000社で構成された「東証株価指数」(TOPIX)を指標とすることが一般的です。
どちらとも大企業の株価と連動しており、預かり資産額も大きいためETFの中でも安定度は突出して高い銘柄と言われています。
特にTOPIXは日銀の買い支え対象でもあるので、リターンよりもリスクを優先する人におすすめです。
外国株式型
「外国株式型」は名前の通り、外国のインデックスと連動するETFです。
有名なインデックスとしては、アメリカの「ダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価」(NYダウ)やGAFAを中心としたIT企業で構成される「S&P500」、NASDAQの3,000社の中から時価総額の高い100社を抽出した「NASDAQ100」などが挙げられます。
日本よりも成長率や経済情勢が良い国のインデックスと連動するETFを購入することで、利益の最大化が見込めますし、日本国内で問題が発生した際のリスクヘッジにもなります。
コモディティ型
「コモディティ型」は貴金属やエネルギー、穀物といった市場で取引されている商品の値動きに連動しています。
リーマンショックのような世界同時株安の際にも、株式や債券とは異なる値動きをするため、リスクヘッドとして利用されることが多いです。
レバレッジ型・インバース型
ETFには「レバレッジ型」と「インバース型」と呼ばれる、連動するインデックスの2倍の値動きをする特殊なタイプも存在します。
レバレッジ型は2倍の値動きをするので通常以上の利益を上げることが可能ですが、同じように損失が2倍になるリスクもあるので、上級者向けと言えます。
一方、インバース型は基準となるインデックスにマイナスをかけたものと連動するので、例えばインデックスが2%下落すれば、その逆となる2%の利益を得ることになります。
基本的な仕組みは空売りと同じなので、下落相場で利益を出すことができます。
また、インバース型の一種としてレバレッジが2倍になるダブルインバース型というのも存在しますが、こちらはハイリスク・ハイリターンなので取り扱いには注意しましょう。
ETFのメリット
ETFには独自のメリットがたくさんあるので、上手に活用すれば投資初心者でも安定して利益を出すことができます。
まずはETFのメリットを理解して、自分の投資方法や方針に一致するか考えてみましょう。
効率よく分散投資を行える
投資の世界では投資先が集中するのはリスクを高めるため、出来だけ投資先を分散させる方が良いとされています。
その点、ETFのようなインデックス型の投資信託は、間接的に特定のインデックスを構成する株式などを全種類保有していることになるので、効率よく分散投資を行えます。
例えば、S&P500に連動するETFを購入するということは、S&P500を構成する500社の株式を均等に購入したことと同じと言えます。
信託報酬が安い
投資信託の場合、信託銀行や運用会社に一定の手数料を支払う必要があります。
もちろんETFにも手数料は発生しますが、ETFの信託報酬は一般的な投資信託よりも安く設定されています。
国内株式型の投資信託の信託報酬は平均して1.11%程かかりますが、ETFであれば0.37%程度に収まります。
の信託報酬の差は、運用期間が長期化するほど大きな金額になっていくので、保有コストの安いETFは長期投資にも向いています。
信用取引ができる
ETFは株式と同じように証券会社の信用取引口座を開設しておけば、保証金を担保にして約3.3倍までの信用取引が可能になります。
信用取引によって現物がなくても信用売りすることができるので、インバース型と同じように下落相場でも利益を出すことが可能です。
ただし信用取引の場合はレバレッジが効いているので、限界までポジションを保有してしまうと含み損で証拠金維持率が低下してしまい、追証が発生するリスクがあります。
ETFのデメリット
ETFは手数料も安いですし、簡単に分散投資ができるので投資初心者にはおすすめですが、特有のデメリットもあります。
始める前に、しっかりとデメリットについても把握しておきましょう。
銘柄数が限られている
日本国内の個別株式は約4,000個以上、投資信託にいたっては6,000種類以上あるとされていますが、ETFの銘柄は200種類程度しかありません。
厳選されているので選びやすいと考えることもできますが、銘柄数が限られていると投資の自由度は下がります。
この問題を解決するためには、他の投資方法も活用する必要があるので、ETFのみの資産運用を考えている場合は、ある程度投資の幅が狭まることを許容しなければいけません。
上場廃止や繰上償還のリスクがある
ETFには「上場廃止」になってしまうという大きなリスクがあります。
上場廃止は珍しいケースですが、これまでに100種類程度のETFが上場廃止となっており、国内でも実際に起こっています。
ETFの上場廃止が決定すると、整理銘柄という扱いになり1ヶ月間の取引期間が猶予として設定されますが、上場廃止銘柄を購入する人は少ないので、売買が成立しづらくなります。
また、証券会社に買取請求を行うことはできるので完全に価値がゼロになる訳ではないですが、元本割れを避けることは難しいです。
また、純資産額が思ったように増えず、申込者が減少するといった理由で信託期間が終了する前に運用が停止になることもあり、この場合は繰上償還となります。
上場廃止や繰上償還といったリスクを回避するためには、預かり資産額の多い銘柄のETFを選ぶことがポイントです。
価格が乖離する場合がある
ETFは二重価格構造になっているので、それらの価格が乖離する可能性があります。
まずETFは、市場の需要供給によってリアルタイムで変動する「市場価格」を保有しています。
また、一般的な投資信託のように前日の終値で決まり、24時間固定される「基準価格」も保有しているので、基準価格の固定後に市場価格が変動すると、価格の乖離が発生します。
一般的に評価が高いETFの方が、価格の乖離は小さく収まりますが、気づかぬ内に希望と異なる価格で取引しないように、チャートの確認は定期的に行いましょう。