老人ホーム探しは早めに始めよう!
高齢者の大幅な増加に伴い、いま日本国内では老人ホームの需要が急速に伸びています。
老人ホームには大きく分けて公的施設と民間施設があり、そのどちらも入居に関して、さまざまな制約があるため、中々見つけ難いのが現状です。
そこで今回は、老人ホームの主な種類や賢い選び方について紹介していきます。
全国的に老人ホームの待機者が増えている?
例えば公的施設の代表格「特別養護老人ホーム」は通称「特養」と呼ばれ、体が不自由になった高齢者の受け皿として需要が高まっています。
しかし2017年に厚労省がまとめた「特別養護老人ホーム入居申し込み者の概況」によれば、全国で特養の入居を希望している入居待機者は、30万人以上にのぼります。
この大きな原因の1つに「介護人材の不足」があります。
介護職は仕事自体が重労働な上に、排泄の始末などがあり、他の業種に比べて低賃金なため、若い人材がなかなか集まらず、止む無く受け入れ制限を行う特養が多くなり、全国で入居待機者が増えるという悪循環に陥っています。
老人ホームの主な種類
先にご紹介した通り、老人ホームにはさまざまな種類があり、入居者や入居条件がこと細かに決められています。
この章では日本の代表的な老人ホームの種類とその特徴を、詳しくご紹介していきます。
住宅型施設
住宅型施設は民間企業が運営する住居型有料老人ホームの総称で、高齢者に特化したさまざまなサービスを受けることができます。
居住スペースは完全個室と全室バリアフリーが標準で、部屋ごとにトイレ、浴槽、洗面所、通路の手すりなどが完備されています。
他にレストランやカラオケ、図書室など、レクリエーションやリハビリのための広いスペースもあり、フィットネスルームや理容室、シアタールームなど、高級感あふれるハイクラスな空間が提供される施設もあります。
受け入れ可能な要介護度は1~5で、入居条件や対応可能な介護サービスは、それぞれの施設より大きく異なります。
例えば要介護度5の住居施設は介護職員のほか、複数の医師や看護師が24時間常駐し、総合病院並みの完全介護が受けられる施設もあります。
月々の家賃や初期費用は設備の充実度や、受けられるサービスの多様さで決まることが多く、一般的な老人ホームよりも割高になることが多いです。
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅は2011年に制定された「高齢者住まい法」の下で作られた、通称「サ高住」(さこうじゅう)と呼ばれる住居型施設の総称です。
サ高住は入居者の登録と管理監督を地方自治体が行い、施設の設立と運営は国から補助金を受ける形で、民間企業が受け持ちます。
入居条件は60歳以上の高齢者または要介護認定者及び、その同居人と定められていて、特別な理由がない限り、60歳以上の配偶者または親族以外の同居が認められません。
施設のタイプは「一般型」と「介護型」に分かれており、一般型は完全個室でトイレ、浴槽、キッチン、収納、手すり、バリアフリーなどが標準で完備されています。
入居者は自立可能及び、軽度な介護が必要な高齢者に限定され、認知症患者は受け入れていません。
対して介護型は自立可能な人から要介護度5までと幅広く、認知症患者も受け入れ可能で、在宅医療をはじめとした各種の介護サービスが受けられます。
民間の住居型施設よりは家賃が安く、初期費用も比較的低額で、入居者の外出も原則自由なため、一般的な公的老人ホームよりは窮屈な思いをせずに過ごせます。
分譲型シニアマンション
分譲型シニアマンションは民間の不動産業者が販売する、高齢者向けに改装された分譲マンションの総称で、こちらも全室バリアフリーで完全個室、トイレ、浴槽、キッチン、収納、廊下の手すりなど、高齢者の生活に必要な設備は全て揃っています。
現在は見守り、防犯、安否確認に特化した管理システムを取り入れている業者が多く、フロントのサービスも充実していて、マンション内はフィットネスジムやレストラン、多目的ルームなどのレクリエーション施設も充実しています。
そのほかは基本的に普通の分譲マンションと同様なため、介護が必要な場合は自分で選定したケアマネージャーを通し、外部の介護サービスを個別に受けることになります。
以上の点から入居は主に自立可能な高齢者が対象で、認知症患者は基本的に入居できません。
入居費用は分譲マンションのため、初期費用が非常に割高となりますが、1度購入すれば本人の資産となるため、のちに第三者へ譲渡することが可能です。
介護型施設
介護型施設とは独自の介護サービスを提供している、民間の有料老人介護施設全般を指します。
施設のタイプは入所型と通所型の2つ分けられ、入所型は食事、入浴、排泄、洗濯や掃除などの家事全般まで、要介護度に応じたサービスが受けられます。
また有料オプションとして買い物代行や、通院の付き添い、長時間の見守り、ゲストルームの提供など、入居者目線のきめ細かいサービスを提供している施設もあります。
通所型は食事と排泄、入浴とリハビリ、レクリエーションなどに特化した、日帰りのデイサービスを実施して、要介護者家族の介護負担を減らすことができます。
またこれらの施設は医療機関と連携した定期的な健康診断や、ショートステイという短期宿泊サービスも行っています。
費用は入所型施設の方が割高になり、通所型は介護保険で賄われる部分が多いため、比較的低額で利用できます。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホーム(特養)は地方自治体や社会福祉法人が運営する公的老人ホームの代表格で、初期費用や月々の費用を低額に抑えられるメリットがあり、前述の通り介護人材の不足で、入居待機者は全国で30万人以上になります。
入居条件は要介護度3~5の認定を受け、常に看護が必要な65歳以上の高齢者となっており、特に認知症状が重く、寝たきりの高齢者が優先して入居対象になります。
そのため入居までの待機期間は早くて数ヶ月、長い人は10年以上も待たされることがあります。
居住環境は施設の入居状況により、4人~10人の相部屋になることが多く、トイレ、浴槽、食堂は共用で、看護師が24時間常駐した完全看護を実施する施設もあります。
介護老人保健施設
介護老人保健施設(老健)は病院の入院治療を終了した高齢者が、自宅で生活できることを目指す公的な療養介護施設です。
入居条件は要介護度1~5までと幅広く、特に医療と身体的なリハビリに力点を置いたサービスを提供しています。
老健の入居期間は3ヶ月から最大6ヶ月に限定されるため、入居者の入れ替わりが早く、入居待機期間が短くなる傾向があります。
入居から6ヶ月以降は在宅復帰が可能かどうか、家庭での受け入れが可能かどうかが、総合的に判定され、どちらかが満たされてない場合は退去不可となり、引き続き療養介護を継続されることがあります。
居住環境は各施設ごとに異なりますが、基本的に個室と相部屋を入居の際に選択でき、トイレ、浴槽、食堂は共用のことが多いです。
入居に掛かる一時金は無料で月々の費用も介護保険が適用されるため、自己負担額は比較的低く抑えることができます。
また一定の所得要件を満たしている場合は、施設費用の自己負担分が一部免除される「特定入所者介護サービス費」という制度を利用できます。
介護療養型医療施設
介護療養型医療施設は医療法人が運営する介護施設で利用者に対し、一定数以上の医師や看護師の常駐が義務付けられています。
この施設は前述の老健よりも、さらに医学的管理と長期療養が必要な、要介護1~5の高齢者(65歳以上)を受け入れ対象にしているため、病床の空きが少なく、入居までの待機期間が数ヶ月掛かることもあります。
医療やリハビリケアは老健よりも充実しており、痰の吸引、胃ろう、酸素吸入など、要介護度が重い患者に特化した、手厚い看護サービスを実施している施設が多いです。
居住環境は多人数の相部屋が基本となり、トイレ、浴槽、食堂が共用で、大規模施設の場合、認知症状が悪く寝たきりの高齢者は、別区画の病床に分けて運営されています。
入居の際の初期費用は不要ですが、医学的管理が手厚くなる分、月々に掛かる介護費用は、老健よりも割高です。
福祉型施設
福祉型施設とは1963年に制定された「老人福祉法」に基づく、公的な老人福祉施設の総称で、大きく分けて3つのタイプがあります。
老人デイサービスセンター
こちらは高齢者の身体機能の改善とリハビリ、レクリエーションを目的にした、日帰りの通所施設で、入浴や食事、排泄介助を提供しています。
老人短期入所施設
主に自宅で生活ができなくて介護が必要な、65歳以上の高齢者を対象にした短期入所型の介護施設で、通称「ショートステイ」と呼ばれています。
現在は独居高齢者の1時的な養護と、介護者家族の負担軽減のために利用されることが多く、連続で利用できる期間は最大30日です。
養護老人ホーム
主に経済的な理由で自宅で生活できなくなった65歳以上の高齢者を養護するため、行政措置が適用され、入居が可能になる老人ホームです。
養護老人ホームは高齢健常者の自立と社会復帰が目的のため、原則施設内で介護サービスは行われてませんが、要介護認定された場合は、外部の在宅介護サービスを利用することが可能です。
居住条件は施設により違いますが、1人部屋または少人数の相部屋が基本となり、トイレ、浴槽、食堂が共用で、入居費用は無収入の場合、全額免除されるケースが多いです。
ケアハウス
ケアハウスは自宅での生活が困難になった60歳以上の高齢者が、低料金で食事や洗濯、買い物代行などの介護サービスが受けられる施設で「A型、B型、C型」の3つに区分され、運営は医療法人や社会福祉法人が担います。
このうちA型は食事サービスのみ、B型は入居者が自分で自炊することが条件で、1990年以降の新設が認められておらず、一定以上の所得がある場合は入居できません。
A型、B型の代わりに作られたのがC型のケアハウスで、こちらは所得制限がなく、個々の収入に応じて入居費用が決められます。
運営は地方自治体や社会福祉法人のほか、民間企業が国や自治体から補助金を受ける形で運営する場合もあり、他の介護施設と比べて低料金で利用できます。
ケアハウスは自立型と介護型の2つのタイプがあり、自立型は入居者の自立支援が目的のため、原則施設内で介護サービスは受けられませんが、要介護認定された場合は養護老人ホームと同じく、外部の介護サービスを利用することが可能です。
介護型ケアハウスでは65歳以上、要介護1~3の高齢者が対象で、重度の認知症患者は原則入居できません。
グループホーム
グループホームは「認知症対応型老人共同生活援助施設」とも呼ばれ、65歳以上で要介護1~2以上の認知症患者が対象となり、5人~9人ほどのグループが共同で生活をする民間運営の介護施設で、費用はケアハウスより少し割高です。
施設スタッフはレクリエーションやリハビリを通じて、入居者と積極的に交流し、認知症の改善に努力します。
そのため家族のような親密な関係性が自然に生まれ、お互いに寄り添って助け合いながら生活できるのが、グループホームの大きな特徴です。