はじめに
日本の長期的な経済不況と度重なる年金支給額の減額から、近年は高齢になるほど生活資金が乏しくなる傾向にあります。
これらの解消策として、自宅を担保に生活資金の融資を受けられるリバースモーゲージが、注目を集めつつあります。
そこで今回は、リバースモーゲージの特徴やメリット・デメリットについて解説していきます。
月々の老後の生活資金はいくら必要?
総務省による近年の家計調査によると、無職・独身の高齢者の場合、月々にかかる支出総額は16万円程度と試算されています。
しかし、実際の収入は12万円前後の世帯が多く、毎月4万円ほどの赤字が出てしまうため、貯蓄を取り崩しながら生活することを余儀なくされています。
また、夫婦2人世帯だと平均的な支出総額は26万円以上になるので、こちらも同様に赤字分を貯蓄から補填しなければいけません。
高齢になると突発的な出費も
高齢になると病気や怪我をする確率は高くなりますが、その場合入院費や治療費など、突発的な出費が発生することになります。
そのような状況に陥っても、しっかりとした貯蓄があれば問題ないですが、もし金銭面での不安を抱えていれば、治療費などが支払えない、もしくは無理に捻出した結果として破産してしまう可能性も考えられます。
そのため、一般的な生活費とは別に、突発的な出費に備えた貯蓄というのも高齢者には必要になってきます。
リバースモーゲージとは
リバースモーゲージとは英語の「逆」を意味するリバースと、「抵当権」を意味するモーゲージを組み合わせた造語です。
つまり、リバースモーゲージとは住宅ローンとは正反対に、自宅に抵当権を設定し、それを担保にすることで月々の生活資金を借り入れることができる制度です。
借主はそのまま自宅に住み続け、貸主は借り主が亡くなった際に担保となった自宅を取得・売却することで、貸付金を回収します。
そのため、借主は大きなリスクを背負う必要がないですし、金銭的に安定した老後生活を過ごすことができます。
不動産担保ローンとの違い
どちらも不動産を担保とする点では同じですが、不動産担保ローンは一括借り入れ、リバースモーゲージは分割借り入れという違いがあります。
また、不動産担保ローンは元金と利息の両方を返済しなければいけないですが、リバースモーゲージの場合は借主が死亡した際に元金の返済を行うので、生きている間の支払いは利息のみになります。
リバースモーゲージのメリット
リバースモーゲージにはどのようなメリットがあるでしょうか?
この章では高齢者が注目すべきメリットを3つご紹介します。
自宅に住みながら融資を受けられる
リバースモーゲージは自宅を担保に入れますが、融資を受けた後も継続して自宅に住み続けることができます。
そのため、高齢者は住む家を手放したり引っ越す必要がありません。
また、提供会社によっては借入金を生活資金だけではなく、自宅のリフォームに活用することもできます。
毎月の支払いは利息のみ
リバースモーゲージは一般的な住宅ローンとは違い、生きている間の返済は利息のみと決まっているため、借主は月々の借入金から利息を差し引いた現金を生活費の赤字補填や突発的な出費に充てることができます。
年齢や年収制限が緩め
リバースモーゲージは高齢者を対象にした融資制度のため、年齢や年収による融資制限が緩めに設定されています。
一般的には55歳または60歳から申し込むことができ、年収については仕事の収入よりも、十分な年金を安定的に受け取れているかが重視されます。
そのため、高齢になって生活資金に余裕がなくなってから申し込むこともできますし、元気なうちから資産形成の補助を目的として利用するも可能です。
リバースモーゲージのデメリット
リバースモーゲージには申請や利用上のデメリットがいくつか存在するだけでなく、最悪の場合だと近親者とのトラブルの原因になることもあります。
メリットも大切ですが、それと同じくらいデメリットも重要なので、ここでしっかりと把握しておきましょう。
対象エリアや資金用途が限定されている
リバースモーゲージは対象エリアや対象物件、資金の用途などがあらかじめて設定されていることが一般的です。
例えば、対象エリアについては東京・神奈川・千葉・埼玉といった地価が高い首都圏に限定されることが多いですが、これはリバースモーゲージの提供会社が貸し付けた元金を確実に回収するためです。
また、対象エリア内だったとしても分譲マンションでは審査段階で弾かれてしまうこともあります。
他にもリバースモーゲージは資金用途の制限が厳しいことでも知られています。
一般的な民間企業が提供している場合、貸し付ける資金については生活資金のみに使用可能、といった具合に制限がかけられています。
もし規定外の用途に使用してしまうと、利用規約に違反したとして、契約解除の上、元本や利息の一括変換を求められることもあります。
借入人が亡くなるまで元金が減らない
リバースモーゲージは自宅を担保として貸付人に提供し、生活資金などの資金融資を受けるのが一般的です。
借入人は元金据え置きで月々の利息のみ返済し、貸付人は借入人が死亡した時に自宅を売却して元金を回収します。
つまり一般的な住宅ローンとは違い、借入人が亡くなるまで元金は一切減りません。
そのため月々の利息は原則死ぬまで払い続ける必要があり、大きな借金をストレスと感じる人にはリバースモーゲージは苦痛になることがあります。
相続人がいる場合はトラブルの原因になる
リバースモーゲージの契約には妻や子供など、推定相続人全員の同意が必要になるため、もし相続人から同意が得られないと、老後の生活資金に困窮してしまう可能性があります。
また、相続人に知らせないまま契約を結ぶと、借主が死亡した後の相続や遺産処理の際に大きなトラブルに発展することもあります。
特にリバースモゲージの仕組み上、自宅の売却額が元本に満たない場合、差額分は負債として何れかの相続人が引き継がなければいけません。
仮に相続放棄するとしても、負債と同時に他の遺産も放棄することになるので、相続人からすると余計な面倒事を抱えることになってしまいます。
リバースモーゲージが抱えるリスク
ここからはリバースモーゲージが抱えるリスクついてご紹介していきます。
安全・快適な老後生活を送るためにも、リスクマネジメントを忘れずに行いましょう。
金利上昇のリスク
リバースモーゲージは仕組み上、景気の変動によって金利が変化すると、月々に支払う利息も変化します。
これは一般的にリバースモーゲージが変動金利を採用しているからであり、固定金利型の商品も一定期間後に変動金利型に移行する場合がほとんどです。
現在は長期の景気低迷とデフレの影響から、金利が非常に低く抑えられているため金利上昇の心配はありません。
しかし、今後も景気が変動しないという保障は存在しないので、仮にどこかのタイミングで景気が上振れし金利が上昇すると、返済不能に陥るリスクも考えられます。
担保評価下落のリスク
リバースモーゲージの融資枠は自宅の担保評価額を基準として決定されますが、契約後も融資限度額は随時見直されます。
つまり、契約中に自宅の担保評価が下がった場合、それに応じて融資限度額も下がるので、資金計画が狂ってしまうリスクは常に伴います。
また、借入残高が融資限度額を超えると、超過分を返済しないといけないので、生活資金をリバースモーゲージ一本に頼り切ることは危険といえます。
想定以上の長生きのリスク
前項でご紹介したように、リバースモーゲージには融資限度額が設定されていますが、借主が死亡するまで融資が確実に受けられるという保障はありません。
例えば、想定以上に長生きをした結果、借入金の総額がリバースモーゲージの融資限度額を超えると、その時点で金融機関から元本の返済を求められます。
そうなると、借主は自宅を手放すか現金で一括返済しなければいけないので、最悪路頭に迷うリスクも発生します。
まとめ
リバースモーゲージは自宅を持っている高齢者にとって、メリットの大きい融資制度ですが、一方で見落とすと危険なデメリットやリスクも存在します。
実際に利用する前には、必ず自分の状況や利用予定の商品内容をしっかりと把握した上で申し込むようにしましょう。