親の相続財産はどうやって探せばいい?財産調査の方法についてご紹介

相続

財産調査とは?

親の相続財産はどうやって探せばいい?財産調査の方法についてご紹介
財産調査は主に亡くなった被相続人の遺産を、相続人同士で分配する時に行われます。
正式には相続財産調査と呼ばれ、遺言状に記載されていない預貯金や株式のほか、土地や家屋などの不動産を1つずつ調べていきます。

相続財産には借金などのマイナスの財産も含まれるため、うっかり相続してしまうと後で遺産トラブルに発展する恐れがあります。
この記事では財産調査の重要性を始め、個別財産の具体的な調べ方や相続放棄の種類のほか、専門家による問題解決の方法をご紹介していきます。

相続人が全ての財産を把握しているとは限らない

なぜ財産調査が必要かといえば、相続人が被相続人の財産を全て正確に把握しているとは限らないからです。
例えば被相続人が保有する預貯金や知人からの借金の1部を、生前から忘れていれば聞き取りをしてもこの分の調査は難しくなります。
また被相続人が認知症を発症して記憶が曖昧になれば、財産のことを聞き出すのがもっと困難になります。

そのほかにも被相続人と相続人が疎遠だったり、別居状態が長く財産の現状が分からない時は、法律家などの第三者に調査を依頼することがあります。

財産調査を怠るとどうなるの?

親の相続財産はどうやって探せばいい?財産調査の方法についてご紹介
相続人が財産調査を怠ったまま負の遺産を相続すると、後でさまざまな問題が発生することがあります。
ここからは遺産相続後に発生しやすいトラブルを、2つ取り上げご紹介します。

税金の滞納金や遅延税が請求される

被相続人が生前に滞納していた税金の支払い義務は、遺産を受け継いだ相続人に課せられます。
例えば被相続人に未納の所得税や法人税があり、それらを相続人が把握できなかった場合は、未納分に滞納金や遅延税が上乗せされ、延滞期間が長くなるほど合計金額が膨らんでいきます。

その後は国や都道府県で被相続人の財産調査が行われ、最終的な支払い義務のある相続人に滞納分の税金が全て請求されます。
この時にもしも請求分が支払えなかった場合は、相続人の財産が差し押さえの対象になることがあります。

債権者から借金の返済を求められる

滞納した税金と同じく、被相続人がした借金の支払い義務も遺産を相続した相続人に課せられます。
例えば被相続人が生前に消費者金融から多額の借金をしていた場合は、相続人に支払い義務が生じるため、債権者から借金の返済を求められます。
金額が大きくて支払えない場合は、相続人の財産が差し押さえられたり、最悪のケースでは自己破産に追い込まれることがあります。

調査の対象となる主な財産

親の相続財産はどうやって探せばいい?財産調査の方法についてご紹介
財産調査では被相続人の預貯金や金融資産のほか、美術品や貴金属、土地や家屋などの不動産が主な調査対象となります。
他にも知人からの借金や税金の滞納状況を重点的に調べ、全てを明らかにすることが重要です。

負債も相続対象に含まれる

なぜ被相続人の負債を詳しく調べなければならないのでしょうか?
それは被相続人の負債の全てが相続対象に含まれるため、相続人に対して負債の支払い義務が生じるからです。
そのため1つでも負債を調べ忘れると後でトラブルの元になりやすく、支払う金額が大きくなれば相続人の財産も危うくなります。

マイナスが上回った場合は相続放棄を

財産調査で遺産の中に多額の負債が見つかってマイナスが上回り、相続する価値が無いと判断した場合は、限定承認か相続放棄を選択しましょう。
相続放棄は被相続人の財産を全て放棄し、多くは相続人に対する負債の支払い義務を無効とするために行われます。
対して限定承認は財産調査の結果、借金の総額が不明な場合や、どうしても必要な相続財産を限定して残す場合に多く行われます。

まとめると限定承認は、プラスの財産を上回る分のマイナスの財産だけを限定的に放棄できる法的手段です。
つまり判明の有無に関わらず、プラスの財産を上回る全ての負債の支払い義務を無効にでき、さらにプラスの財産が後で発見された場合は、その分を相続財産に充当できます。

限定承認と相続放棄は相続開始から3ヶ月以内に

限定承認を含めた相続放棄は、相続人が「相続開始があったことを知った日」から3ヶ月以内に行わなければなりません。
この相続開始があったことを知った日とは通常、被相続人の死亡の事実を相続人が「知った時から」とされる場合が多いです。

限定承認の手続きは少し複雑なため今回は省略しますが、相続放棄の具体的な手順は、まず所轄の家庭裁判所に連絡を入れ、相続放棄の申請手続きを始めます。
次に家庭裁判所から相続放棄申述書を直接または郵送で取り寄せて必要事項を記入した後、折返し提出して相続放棄を申し立てます。
10日ぐらいすると家庭裁判所から相続放棄に関する紹介書が届きますので、再度必要事項を記入して返送します。
その後は10日前後で家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届き、相続放棄が正式に受理されます。

なお、相続放棄の申請期間が過ぎると事実上の自動承認である単純承認が適用され、特段の理由が無い限り相続放棄はできなくなります。
つまり、相続開始から3ヶ月以内に限定承認または相続放棄を「しなかった場合」は、判明の有無に関わらず全ての遺産が相続対象になるため注意しましょう。

財産調査の方法

親の相続財産はどうやって探せばいい?財産調査の方法についてご紹介
財産調査にはさまざまな方法や手順があり、必要な情報を事前によく把握して行わないと、後で思わぬ問題が生じる恐れがあります。
ここからは不動産や金融資産など、個別の財産調査の方法を4つ取り上げ、詳しくご紹介します。

預貯金の調べ方

被相続人の預貯金を調べるには、まず遺品の中から預金通帳やキャッシュカードを全て選び出し1つずつ確認していきます。
口座の残高を確認するためには、自分が法定相続人であることを証明する必要があるため、事前に市役所で戸籍謄本を発行し、各銀行の窓口に提出して残高を照会します。

また複数の支店に口座を持っている可能性がある場合も、通常は1つの支店に照会すれば全ての支店の口座が判明します。

不動産の調べ方

不動産の調査は土地や家屋の権利書のほか、登記識別情報や固定資産税の納付書などを遺品の中から探しましょう。
例えば固定資産税の納付書が見つかれば、市役所に保管されている名寄帳から、被相続人が所有する土地や家屋の一覧表を入手できます。

名寄帳の開示申請には固定資産税の納付書のほか、法定相続人の証明が必要なため、事前に免許証や保険証などの身分証明書を市役所の窓口で提示しましょう。

金融資産の調べ方

金融資産の調査方法は被相続人が所有していた株式や債券のほか、投資信託や各種の投資履歴などを探し出すことから始めます。
しかし現在は昔と違い現物の株券や債券を個人が保有せず、証券保管振替機構:通称「ほふり」に一括して預けます。

このほふりに対して開示請求をすれば、被相続人が所有する有価証券や口座の開設履歴のほか、過去の売買履歴を一括して取り寄せることができます。
ただし、ほふりで開示できるのは上場されている有価証券のみのため、非上場の有価証券は独自に調べる必要があります。

負債の調べ方

被相続人の負債は借用書や請求書のほか、預金通帳の引き落とし履歴からも調べることができます。
また借金を長期間滞納していた場合は、たくさんの督促状が自宅に届いていることが多く、それらを探し出すことで実態を把握できることがあります。

さらに詳しく調べる場合は、個人ローンやクレジットカードの利用履歴を管理している信用情報機関に問い合わせれば、全ての履歴を郵送で取り寄せることができます。
これらの信用機関は「JICC、CIC、CIC」と3種類あり、履歴の取り寄せには本人確認書類と手数料(数千円)が必要です。

困った場合は専門家に相談しよう

親の相続財産はどうやって探せばいい?財産調査の方法についてご紹介
ここまでは相続人が自分で対応できる範囲の財産調査をご紹介してきましたが、中には専門家に依頼しなければ調べることができない財産もあります。
例えば非上場の有価証券は個人で調査するのが難しく、個人間の借金では借用書すら存在しないのに、相続後に返済義務が生じる恐れがあります。
さらに被相続人が非合法の闇金などから借りていた場合は、相続人に一切の返済義務はありませんが、闇金の取り立て屋から再三に渡り、嫌がらせをされるケースがあります。

このような場合は、その道のプロである法律家の出番となります。
例えば準独立行政法人の「法テラス」では相続問題に関する無料相談が可能で、相続の現状に詳しい法律家を個別に紹介して貰えます。

弁護士は全ての業務に対応可能

相続に関する問題は行政書士や司法書士のほか、弁護士が担当することが多いです。
中でも弁護士は相続に関する全ての業務に対処できるため、特にトラブルが発生した場合は頼もしい味方になります。

ただし、弁護士によっては問題が解決した時の成功報酬が高額になることがあるため、事前によく確認することが大切です。

終活と相続のまどぐち
タイトルとURLをコピーしました