はじめに
「もしもの時」に備え、生命保険に加入している人は多いのではないでしょうか。生命保険に加入するのは、もしもの時に残された家族が生活に困らないようにするためです。
ただし、ライフステージが変われば、用意しておきたい金額も変化します。生命保険商品のひとつ、定期死亡保険(定期保険)について分かりやすくご説明します。
定期死亡保険(定期保険)とは
定期保険とは、期間が定まった間だけ保障される死亡保険です。
定期保険では、契約時に定めた保険期間中に被保険者が死亡または高度障害となった場合に限り、保険金が支払われます。
掛け捨て型の保険
一生涯の死亡保障が得られる終身保険と比べると、一般的な定期保険は貯蓄性がほとんどありません。
満期を迎えると保険契約が終了して保障はゼロになる、いわゆる掛け捨て型の保険です。
満期保険金は?
定期保険は、保険期間満了時に被保険者が生存していても、満期保険金は支払われません。
ただし、更新することで継続して保障を受けられる商品もあります。
解約返戻金
定期保険を解約した場合、通常、解約返戻金はありません。
その代わり、月々の保険料は比較的安価に設定されています。
保険期間の定め方
定期保険の保険期間の定め方は、10年・20年・30年などの年数で定める「年満了」と、60歳満了・65歳満了など被保険者の年齢で定める「歳満了」があります。
「歳満了」の商品は「全期型」とも呼ばれ、一部の商品を除いて基本的に更新がなく、設定した年齢を迎えた時点で保険契約が消滅し、保障も終了となります。
一方、「年満了」の商品は「更新型」と呼ばれ、満期を迎えると自動更新で保障が継続されます。
「10年定期で自動更新」が一般的です。保険期間を更新すると、月々の保険料が年齢に応じて見直され、少しずつ高くなっていく傾向があります。
更新型と全期型の違い
契約時の保険料は「更新型」の方が割安ですが、同じ条件ですと、期間が長い「全期型」の方が、払込保険料の総額は安く抑えられます。
更新時にライフスタイルの変化に応じて保障を見直したい人は「更新型」、長期間一定の保障が必要な場合は「全期型」を検討するのがよいでしょう。
定期保険の種類
定期保険の種類には、「平準型」や「逓減型」などがあり、仕組みが異なります。それぞれについて説明します。
①平準型
定期保険の中でもっとも基本的なのが、「平準型」の定期保険です。契約時に定めた保険期間中に死亡または高度障害状態などになった場合、保険金が支払われます。
保険金額は契約時から変わることなく一定で、満期を迎えると更新できる商品もあります。自動更新の際、更新時点の年齢に応じて保険料が再設定されます。
「平準型」でも、「長期平準定期保険」は保険期間が長期に渡るもので、法人が契約者となる場合が多いです。
②逓減型
「逓減型」は、毎月の保険料は一定ですが、契約した年の保険金額が最も大きく、年数が経過するとともに保険金額が徐々に減少していく点が特徴の定期保険です。
保険金額が減少していく分、元々の保険料が「平準型」よりも安く設定されています。逓減率は商品によって異なりますが、中には自分で設定できるものもあります。
保険金の受け取り方法は一括のみで、請求時点での金額を受け取ることになります。
③逓増型
「逓増型」は、保険料は定額で、年数の経過に伴い保険金額が増加する定期保険です。法人が契約者となる場合が多いです。
④収入保障型
「収入保障保険」も定期保険のひとつです。年数の経過とともに保険金額が減少していく点は「逓減型」と同じですが、保険金を年金形式で分割して受け取れるのが特徴です。
一時金で受け取ることもできますが、年金形式で受け取る場合の受け取り総額よりも少なくなります。
将来必要になるお金は徐々に減少していくという考え方に基づいて設計されているので、保険料は一般的な定期保険よりも割安になっています。
定期保険のメリット
定期保険のメリットは、終身保険や養老保険など貯蓄性の高い保険と比べると、加入年齢にもよりますが、比較的割安な保険料で大きな保障を準備できる点です。
住宅ローンや子供の学費など支出が多い場合、月々の保険料を抑えることができます。
また、保障の見直しがしやすい点もメリットとして挙げられます。自身のライフステージに合わせて保障期間の満了日を設定できるため、保険内容を適切に見直すことができます。
子どもが独立する時の年齢や定年を迎える60歳に満了日を設定するケースがよく見られます。
定期保険のデメリット
定期保険のデメリットは、解約返戻金がなく、貯蓄性がほとんどないことです。
保障期間が定められているので、満期や更新できなくなる年齢を迎えた後は、一切保障が受けられなくなります。
更新型の定期保険の場合、満期後に保障期間が自動更新されるのが一般的ですが、同額で更新すると、月々の保険料が更新前より高額になります。特に60歳を過ぎると高額になるので、注意が必要です。
定期保険に向いているのはどんな人?
定期保険は、リスクに備えたい期間と理由が明確な人に向いている保険といえます。
住宅ローンや子どもの教育資金など、大きな支出が控えていることがわかっていて、万が一の時に家族の当面の生活費をしっかり確保しておきたい人や、割安な保険料でも家族に大きな保障を残したい人は、定期保険の必要性が高いといえるでしょう。
たとえば、30歳~50歳の子育て世代には有効な保険です。
定期保険に向いていないのはどんな人?
老後を含めて遺族に確実に保険金を残したい人や将来に向けた貯蓄を考えている人、保険の解約時に返戻金を受け取りたい人には、貯蓄性の薄い定期保険は向いていません。
その場合は、終身保険などへの加入を検討したほうがよいでしょう。
また、子どもが高校や大学を卒業して教育費がかからなくなってくると、大型の死亡保障を設ける意味は薄れます。60歳を過ぎたときに保障を見直すことを考えましょう。
定年退職前後に保険を見直す際の3つのポイント
定年前後は、現役世代から続けてきた保険を見直す良いタイミングといわれています。その際のポイントを挙げておきます。
①子どもが独立しているかどうか。
教育費がかからなくなっているのであれば、多額の死亡保障は不要になります。
②住まいは持ち家か賃貸か。
賃貸の場合、毎月の家賃も考えて、死亡保障を見直しましょう。
③医療保障の内容はこのままで良いか。
貯金がある程度あれば、いざという時の入院にも対応できます。
「日帰り手術で100万円」「入院1日あたり1万円」など、病気やけがの際に給付金がもらえる医療保障の減額も検討しやすくなります。
保険の見直し
保険はいつでも見直しができるとは限らない点に注意が必要です。たとえば、健康診断の結果が悪ければ、新たな保険に入るのは難しくなります。
基本的に、若い時に入った保険ほど月々の保険料は安いです。不要になった特約を見直すなどして、できるだけ現在の契約を生かすのが得策です。
ライフステージと死亡保障額
死亡保障額については、一生涯同じ額が必要というわけではなく、ライフステージの変化によって必要な保障額も変動するものです。
特に、未婚か既婚か、子供がいるかいないかによって、備えるべき保障は変わってきます。
一般的に、結婚して子供が誕生し、家族が増えた時は、必要な保障額が高額になりやすい時期といえます。
ご自身の必要保障額を詳しく知りたい場合は、ファイナンシャルプランナーに相談してみてはいかがでしょうか。
まとめ
定期保険は、割安な保険料で大きな保障を得られるので、何かと支出の多い子育て世代に向いている保険であると言えましょう。
ただし、満期時に更新する度に保険料が上がり、特に60歳を過ぎると高額になるので、終活世代には向きません。
60歳で保険を見直し、一生涯保障が受けられる終身保険に切り替えることをおすすめします。