菩提寺がわからない人のための葬儀方法

葬儀・仏事

はじめに

葬儀のことを調べていると、「菩提寺」という言葉によく出合います。先祖代々のお墓を守り、弔うお寺のことを指しますが、近年は、菩提寺がない人、あったとしてもどこにあるかわからない人、遠方のために不便を感じている人が多くなっています。
そうした人のために、菩提寺の持つ役割を理解したうえで、菩提寺がなくてもできる葬儀のやり方についてわかりやすく説明します。弔事は急を要することがほとんどです。いざという時に備えてあわてないように、基礎知識を学んでおきましょう。

菩提寺とは

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そもそも「菩提寺」とはどういうものなのでしょうか? 
菩提寺とは、宗派に帰依した人が信仰するにあたって指針を示すお寺のことで、先祖代々のお墓を守り、追善供養を営む役割を担っています。
基本的には家単位でお寺の檀家となり、お墓を守り供養をしてもらう代わりに、檀家はお布施などでお寺の継続を経済的に支援するという仕組みです。檀家は法要の際には、本堂などのお寺の施設を利用することができます。

「菩提」は悟りの意味

「菩提(ぼだい)」は、目覚めや悟りを意味する古代インドのサンスクリット語「ボーディ」に漢字を当てた言葉です。
つまり、菩提寺とは、家族や親族がお釈迦様と同じように目覚め、煩悩が除かれた悟りの境地に達するようにとの願いを込めて建てられたのが始まりでした。

先祖の冥福を祈るのが目的

日本のお寺にもさまざまな種類があって、ひとつひとつ建てられた理由も異なります。
そうした中で、多数を占める一般的な菩提寺は、先祖の冥福を祈り、法要を営むことを目的として建てられたお寺といえます。

菩提寺の歴史

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日本の菩提寺の歴史は、17世紀初めの江戸初期に発せられた「キリスト教禁止令」が始まりとされています。発布当初は、キリシタンに寺請証文を書かせて檀家へと転じさせることが目的でしたが、やがてキリスト教徒でないことを証明するために、人々の間に広まりました。
お寺のご住職はこれら檀家を管理しはじめ、今のカタチの菩提寺の制度がつくられていきました。

菩提寺と檀家のつながりに変化

先に述べた通り、お寺は檀家のお墓を守り供養を執り行い、檀家はお布施などでお寺を経済的支援するという相互関係が成り立っています。
ただ、時代とともに菩提寺と檀家の関係性は変化してきました。
昔はお寺の新築や改築・修繕などの費用や本山への上納金といったように、檀家にかかる経済的な負担は大きいものでした。現在は、檀家というカタチで菩提寺に所属しなくても、供養・法要を執り行ってもらえるケースが増えており、過大な経済的支援は必ずしも求められなくなりつつあります。
特に都市部では、近隣とのつながりが薄くなり、家の歴史についての知識も希薄になっているので、自分の家の菩提寺を知らない、わからないというケースが増えています。管理しているのは親なので、子どもはまったく知らないケースも珍しくありません。

菩提寺の探し方

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菩提寺があるかどうかを知るには、まずは先祖のお墓を確認するのが良いでしょう。お墓参りを兼ねて参拝し、ご住職に聞いてみることです。
お墓のありかがわからない場合は、親族に聞くのも有効です。親族と同じお寺に所属していることが多いからです。親族の葬儀や法要などの際に呼んだ僧侶がいれば、そこからたどっていくこともできます。
手間と時間はかかるかもしれませんが、地元周辺のお寺に総当たりで問い合わせるという方法もあります。かなりの割合で自家の菩提寺を探し出すことができるはずです。

菩提寺がわからない場合

それでも、菩提寺が不明な場合あるいは菩提寺がない場合は、葬儀社を通じてお寺を紹介してもらうことができます。
その場合は、葬儀社が普段からお付き合いのあるお寺を紹介されることが多いです。通常は無料ですが、葬儀社によっては紹介料が発生することもあります。
宗派がわかっているのであれば、紹介前に知らせるのを忘れないようにしましょう。

葬儀社の仲介で僧侶を決める際の注意点

葬儀社が仲介する場合、通常は自らお寺を持って活動している僧侶を紹介してくれます。ところが中には、葬儀や法要の時だけ経をあげる「派遣僧侶」と呼ばれる僧侶もいて、トラブルが起こることもあるので、注意しましょう。継続的に依頼ができる菩提寺の僧侶と異なり、一周忌法要の依頼ができなかったり、お墓の相談を受けてもらえなかったりします。
葬儀社に依頼して紹介してもらう際は、どんな立場の僧侶であるかを必ず確認したうえで正式に依頼するようにすることです。
霊園が決まっている場合は、霊園から紹介してもらいましょう。

生前から葬儀の準備はした方が良いか

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では、生前から葬儀の準備はした方が良いのでしょうか? するとしたら、どの程度必要なのでしょうか?
人生で葬儀を行う経験はそうあるものではありません。「葬儀について何から考えるべきかがわからない」、「どこに依頼すれば良いかわからない」など、初めて葬儀を経験する人は戸惑うことが多いようです。
葬儀社と葬儀の打ち合わせを行うのはなかなか大変です。日頃どんなに冷静な人でも、大切な人を失ってつらい状況にあるとき、適切な判断ができないこともあるでしょう。葬儀まで時間の余裕がなく、予想よりもはるかに葬儀費用がかさんであせってしまうこともあります。
時間がある程度あれば、故人の意向を聞きながら納得できる準備ができますし、費用についても見積もり比較ができるはずです。
「万が一」のために情報を集め、生前から家族で話し合い、準備することが求められるようになりました。

家族葬か一般葬か

葬儀の準備を始めるにあたって、まず考えなければならないのは、場所と費用と葬儀の流れです。
葬儀は慣習や家族の考え方によって多様な形式がありますが、大きくは、「家族葬」と「一般葬」の二つに分けられます。
「家族葬」は、葬儀に呼ぶ人を身内や親族、故人と親しかった友人などに限定し、少人数でゆっくりとお別れをする葬儀です。「一般葬」は、遺族や親戚はもちろん知人や近隣の方々にも呼びかけ、多くの人々でお別れする葬儀なので、呼ぶ人の範囲が広がります。
葬儀に呼ぶ人数が見えてくれば、場所も自ずと決まってきます。生前に故人の意向を聞いて、形式だけでも決めておけば、葬儀の流れをぐんとつくりやすくなるはずです。

一般的な葬儀の段取り

一般的な葬儀の準備としては、葬儀社を決める⇒菩提寺がわからない場合は、葬儀社からお寺を紹介してもらう⇒お寺と戒名の相談をする、という段取りになります。
葬儀まであまり時間がないので、費用をゆっくり精査することができませんが、ざっくりとでも戒名を含めた費用を確認して、高いと思ったときには他のお寺を紹介してもらうのが良いでしょう。
先にも述べましたが、霊園が決まっていれば、霊園から紹介してもらうことも可能です。公営霊園であれば、地域の相場を知っているので安心です。

終身保険で葬儀費用の準備

費用の面で不安を感じている人は、終身保険で葬儀を準備することもひとつの方法です。入院中でも持病があっても、医師の診断や告知なしで誰でも加入ができる、みどり生命の死亡保険「メモリアルⅢ」のような保険がおすすめです。
ニーズに合わせて、死亡保障80万円から200万円までのプランから選べます。かけ捨てではないので、貯蓄性も備えた一生涯保障の保険です。

葬儀の流れ

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具体的には、以下のような流れになります。

葬儀日程を決める

故人の信仰、家の宗派などは再確認しておきましょう。葬儀社には宗派などに詳しいスタッフがいるので、わからないことは相談してみましょう。

葬儀の形式を決める

先に、葬儀の形式だけでも生前に決めておくことをおすすめしました。
葬儀のやり方で最も多いのは仏式です。最近は宗教要素を除いた葬儀が増えてきましたが、菩提寺がある場合には配慮が必要です。もちろん、親族の理解も重要ですから、葬儀前にしっかり話し合っておきましょう。
葬儀から時間をおいて「お別れ会」などを開き、故人の意向を反映するやり方もあります。

お寺に依頼、僧侶と葬儀の流れを打ち合わせる

菩提寺がある場合は、菩提寺のご住職に枕経を読んでもらい、通夜や葬儀の日程から戒名や謝礼まで相談します。菩提寺が遠方で葬儀を依頼するのが難しいときは、菩提寺に相談したうえで、近隣の同じ宗派の寺院を紹介してもらうという方法があります。
菩提寺が不明で、特に宗派も問わない場合は、葬儀社にお寺と僧侶を紹介してもらうこともできます。

戒名を付けてもらう

戒名とは、仏教を信仰する者が戒律を守る証として授けられるもので、埋葬の際は宗派の戒名が必要です。仏教以外の宗教や公共墓地に埋葬する場合は必要ありません。宗派によっては戒名と言わず、法名や法号と呼ぶこともあります。
菩提寺があれば、原則として菩提寺のご住職から戒名を付けていただきます。そうでない場合は、紹介された僧侶と話し合い、故人の人柄が偲ばれるような戒名を付けてもらうようにしましょう。

まとめ

以上のように、葬儀の前には、準備すること、考えること、決めなければならないことがたくさんあります。心の整理をしながら葬儀を滞りなく行い、故人を静かに埋葬しなければなりません。
葬儀が終わったあとも、会葬者へのお礼や四十九日をはじめとする法要、相続の手続き、遺品整理など、やらなければならないことがどっと押し寄せてきます。ずっと心身張り詰めている状態なので、疲れもたまります。体調を崩すことのないように、くれぐれも気を付けましょう。

近年は「終活」の意識が広がり、生前から、葬儀のやり方などについて話し合って決めておく人が増えています。
準備はまだ全然という人は、まずは「エンディングノート(終活ノート)」に自分の想いを記して、何かあったときに家族に開いてもらえるようにしておくことから始めてはどうでしょうか。エンディングノートはご自身の人生の棚卸しにもなるので、今後より良く生きるためにも検討する価値は大きいです。
自分の人生のエンディングは自分で決めたい――その一歩は、葬儀の準備から始まるのです。

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