はじめに
新型コロナウイルス感染症の拡大で注目され始めたオンライン診療。その使い勝手の良さが認められて、いまや定着しつつあるようです。パソコンやスマートフォンなどのデジタルツールに不慣れですと、いささかハードルが高い感じがするかもしれません。オンライン診療の具体的な受診方法や処方薬の受け取り方、診療費の支払いなどについて、わかりやすく解説します。
オンライン診療とは
オンライン診療とは、パソコンやスマートフォンなどの情報通信機器を介しての新しい診療スタイルです。医師は、自宅など離れた場所にいる患者をリアルタイムで診察します。さまざまな理由で病院に行くことが困難な人にとってはとてもありがたいツールといえるでしょう。
オンライン診療の普及まで
オンライン診療は、2018年3月に厚生労働省が発表した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(2019年7月に一部改訂)に基づいて運用されています。同年4月から、外来通院で治療を続けることが困難な患者を中心に、保険診療でのオンライン診療利用が可能になりました。
この指針が出る以前は「遠隔診療」と呼ばれており,医師の少ない地域で提供することに重点が置かれていました。情報通信機器の発展に伴い、医療に対する患者のアクセシビリティなどを向上させることを目指し、「オンライン診療」と言い換えられるようになりました。
オンライン診療を受けられる人は?
もともとは、健康保険を使ってオンライン診療を受けられるのは、生活習慣病、がん、難病、認知症などで定期的に受診していた人に限られていました。対面での診療がおこなわれている患者と医師の双方がオンライン診療に合意してはじめて診療が開始されていたのです。
ところが、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、2020年4月から特例として、病気の種類や初診・再診にかかわらず利用できるようになりました。さらに、2022年1月、厚生労働省の指針の改正により、かかりつけ医によるオンライン診療を、原則としてコロナ流行期に限らず初診から利用可能になりました。
オンライン診療を受けられる医療機関
現在医療機関では、保険診療でオンライン診療を実施する前に厚生労働省への届出が義務づけられています。届出の済んでいる各地の医療機関一覧は、厚生労働省のウェブサイトで確認することができます。
オンライン診療については、医療機関によって「一定の条件を満たす患者にのみ実施している場合」や「まだ実施しておらず導入を検討している場合」もあります。オンライン診療の利用を希望する人は、受診する医療機関がオンライン診療に対応しているかどうかを、あらかじめ確認することをおすすめします。
オンライン診療で患者側が準備するもの
オンライン診療を受けるには、診察を受けるときに必要なパソコンやスマートフォン、タブレット端末などの情報通信機器が必要です。基本的には、音声だけでなく、ビデオ通話可能な画像通信ができる機器を用意します。マイクが搭載されたヘッドホン・イヤホンといったヘッドセットやウェブカメラがあれば、万全です。そして、通信可能なインターネット環境を整えることで、オンライン診療を受けることができます。
支払いはクレジットカードでおこなうケースが多いので、決済用のクレジットカードを用意しておきましょう。
オンライン診療の受診方法
オンライン診療の受信方法の流れは、一般的に、①実施医療機関を決めて診療内容を確認する⇒②事前に予約を取る⇒③予約日時に医療機関と接続して診療開始⇒④診療後の指示に従い、対応する⇒⑤診療費の支払いをする、といった具合です。それぞれについて具体的に説明します。
診療内容の確認
受診しようと考えている医療機関を決めたら、診療内容をホームページなどで確認します。前述した厚生労働省のウェブサイトなどを利用するのも良いですが、まずは、普段からかかっているかかりつけ医や最寄りの医療機関に相談しましょう。医師の判断によっては、すぐに医療機関を受診する必要があるため、できるだけ近くの医療機関を選択することをおすすめします。
事前の予約
オンライン診療の場合、医療機関によって予約方法が異なります。詳しくは各医療機関のウェブサイトを見るか、電話で確認しましょう。
医療機関によっては、オンライン診療サービス用のアプリがあって、それをダウンロードしたうえで、アカウント登録をしなければならない場合もあります。予約の際には、支払い方法についても問い合わせておくと良いでしょう。
診療開始
診察の予約日時になると医療機関とオンラインで接続され、ビデオ診療が開始されます。一般的に、まずは、受診を希望している本人であることを確認するために個人情報を求められ、そのあと症状などを説明していきます。
診療後の指示・対応
診療後に、医療機関への来訪を推められた場合は、必ず医療機関に直接かかるようにしてください。
薬の処方を受けた場合は、薬の受け取り方の指示があり、オンラインによる服薬指導があります。薬の処方については次の項で詳しく説明します。
診療費の支払い
支払い方法は医療機関によって異なります。
オンライン診療の薬の処方
薬の処方が必要な患者には、オンライン診療でも一般診療と同じように薬の処方があります。通常、処方箋(しょほうせん)の有効期限は処方された日を含めて4日間で、一般診療の場合と同じです。この期限は休日や祝日も含まれた日数であるため、注意してください。
なお、医師が処方箋に別途試用期間を記載することで、受け取りの期限を延長することもできます。長期旅行など特殊な理由がある場合には前もって医師に伝えましょう。
オンライン診療での薬の受け取り方
オンライン診療で発行された処方箋は、病院もしくはクリニックと調剤薬局の間で受け渡しするのが基本です。
薬の受け取りについては、直接受け取りと郵送のいずれも可能です。また、服薬指導についても対面とオンラインのどちらでも受けることができます。つまり、服薬指導から薬の受け取りまで、調剤薬局へも行かずに済ませることが可能です。
院内処方の場合
院内処方箋が発行された場合は、診療から薬の受け取りまで、病院やクリニック内で完結することができます。直接病院を訪ねて服薬指導を受けて薬を受け取る場合は待ち時間が長くなることもありますが、オンラインで服薬指導を受けて郵送による受け取りを希望する場合は、時間がかなり節約できます。
院外処方の場合
オンライン診療で発行された院外処方箋の記載情報は、受診した病院やクリニックから患者が希望する調剤薬局へ送信されます。薬は患者もしくは代理人が薬局で受け取ります。受け取る薬局を1か所にしておけば、複数の医療機関から処方された薬があっても、情報を一元管理できます。
オンライン診療により処方された薬は、対面もしくはオンラインで調剤薬局の服薬指導を受けたあと、受け取ることができます。
ただし、吸入薬など服用時に特別な操作や知識が必要な医薬品が処方されている場合は、対面による服薬指導を求められる可能性があります。また、注射剤など特別な管理が必要な医薬品についても郵送による受け取りができない場合があります。その場合は、直接薬局で受け取ることになります。いずれにしても、服用する薬について不明な点があるときは、対面での服薬指導を受けるのが良いでしょう。調剤薬局によっては、薬の郵送に対応していないことがありますので、郵送を希望する場合は事前に確認する必要があります。
オンライン診療での処方薬の制限
オンライン診療での制限のひとつは、初診の場合です。今回新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、時限的な扱いとして初診でのオンライン診療も認められていますが、初診の患者で、カルテなどで基礎疾患の情報が把握できない場合は、「処方日数は7日間を上限」と決められています。
つまり、初診でオンライン診療を利用した場合、原則薬は7日分までになります。
オンライン診療では処方が難しい薬も
もうひとつの制限は、オンライン診療では、種類によって処方が難しい薬があることです。
たとえば、向精神薬は、初診からオンライン診療を利用する場合、処方してもらうことはできません。向精神薬は、中枢神経に作用して心の状態や働きに影響を与える薬で、抗うつ薬や睡眠薬、抗不安薬(精神安定剤)、抗認知症薬などが含まれます。これは、患者のなりすましや虚偽の申告によって、濫用・転売されるケースを防ぐためとのことです。
また、抗がん剤や免疫抑制剤のように、特に安全管理が求められる薬もオンライン診療では出せないようです。
オンライン診療の診療費支払い方法
オンライン診療では、各医療機関で導入しているオンライン診療用アプリを、患者がスマートフォンなどの通信端末に設定して利用することになります。オンライン診療での診療費の支払い方法は、利用するオンライン診療アプリによって異なります。
オンライン診療費の決済方法は、各オンライン診療アプリで利用できる決済方法に依存することになりますので、オンライン診療を受診予定の医療機関に問い合わせて確認する必要があります。また、利用予定のオンライン診療アプリがわかっていれば、オンライン診療アプリのホームページを調べると、利用可能な決済手段の説明があるはずです。
ほとんどの場合は「クレジットカード」での決済になりますが、対応しているカードブランドやクレジット決済以外の支払い方法の選択については、受診予定の医療機関や、利用予定のオンライン診療アプリのサポートセンターに問い合わせて確認してください。
まとめ
オンライン診療の具体的な受診方法や処方薬の受け取り方などを説明してきましたが、おわかりになったでしょうか? 通院が困難な人も自宅などから医師の診療を受けられるので、とても便利ですね。オンライン初診に対応できる医療機関はまだ全体の1割にも達していませんが、情報通信機器の発展などに伴って、今後オンライン診療はさらに普及していくと予想されています。オンライン診療について不明な点があれば、病院やクリニック、調剤薬局に事前に相談してみると良いでしょう。