特養は、在宅での生活が難しくなった方が、比較的安い費用で生活支援や身体的介助、リハビリテーションなどのサービスを終身利用できるため人気があります。
しかし、特養に入りたい方が受け入れることができる数を大きく上回っているため、入居待ちが生じてしまっています。そのため、特養に入居するための選考基準や、早く入る方法などを知りたいと思っている方は少なくないはずです。
そのような方に向けてこの記事では、特養が入居待ちが問題になる背景や早く入れる条件、入居待ちの間の過ごし方などをご紹介します。身近に特養の利用を考えている方がいる方は、是非参考にしてください。
特養で入居待ちが問題になる背景
特養は、公的な介護保険施設です。民間の施設を利用する場合、月々の負担金額が数十万円以上と高額になる傾向があります。しかし、特養は、月々の負担金額が数万円程度と負担が小さいため、経済的に余裕がなく民間の施設を利用することが難し方に人気があり、現在30万人程度の入居待ち高齢者がいるといわれています。
厚生労働省は「2015年の法改正で特養の入居待ち問題は解決した」と発表しました。入居条件が要介護1以上から要介護以上と厳しくなったため、以前に比べれば入居しやすくなりました。
しかし、まだ入居待ちが多い地域があり解決したとはいえない状況です。都内近郊の地価が安い地域では、特養が多く作られて入居待ちがいないどころか営業をして入居者を集めているところがあります。
一方、都市部では高齢者数に比べ特養の数が少ないため、入居待ちが多い地域があります。このように特養への入居のしやすさは、地域差が大きくなっているというのが現状です。
特養の入居条件
特養への入居条件は以下のように規定されています。
- 65歳以上で要介護3以上の高齢者
- 40歳~64歳で特定疾患が認められた要介護3以上の方
- 特例により入居が認められた要介護1~2の方
この入居条件は原則であり、実際は個々のケースごとに入居の判断がされています。入居条件に該当する方でも、他の入居者に迷惑をかけたり、24時間医療ケアが必要な方などは入居を断られる場合があります。
入居は、毎月地域ごとに入居判定委員会が開かれ、介護度や家族の状況などから緊急性が高い方を優先的に入居させています。
要介護1~2の方の入居条件を以下でご紹介します。
- 認知症で、日用生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られること
- 知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られること。
- 家族等の深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難であること。
- 単身世帯である、同居家族が高齢又は病弱である等により家族等の支援が期待できず、地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分であること
特養に早く入れる条件とは?
特養は、毎月入居判定委員会が開かれ、入居順位の評価基準をもとに入居者順位を決定しているのです。主な優先条件は以下の通りです。
- 要介護度が高いほど優先される
- 介護者がいないもしくは介護困難な状況ほど優先される
- 特養と同一市長内に住んでいると優先される
- 介護者により要介護者の生命・身体に危険が生じている場合は優先される
また、上記の条件で入居順位を付けることが難しい場合は、待期期間や年齢で優先順位がつけられます。
介護の必要性が高い
介護の必要性が高いと判断されると早く入所できます。
例えば埼玉県特別養護老人ホーム優先入所指針には「入所の対象となるものは、要介護3から要介護5の認定を受けている者で常時介護を必要とし、居宅において介護を受けることが困難な者とする」という記載があります。
また、特例的な入所の要件に「~日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られること」「~心身の安全・安心の確保が困難と認められること」などの記載が見られます。
このようなことより、介護の必要性が高い、緊急性が高いと判断される方が優先的に入所できることがわかります。そのため、緊急性をアピールし、介護の必要性が高いと分かってもらうと、早く入居できる可能性が高くなるのです。
情報収集を行い、空きがあるところを狙う
特養は、複数の施設に登録することができます。そのため、マメに情報収集を行い、空きが出た際に素早く対応すると入居しやすくなります。
またユニット型は従来型よりも費用が高く設定されているため、金銭面から従来型を希望している方が多いです。そのため、ユニット型の方が人気がなく比較的入居待ちが少ない可能性があります。少しでも入居できる可能性をあげたい方は、ユニット型特養を狙うことをおすすめします。
介護の情報をしっかりと伝える
「自宅での介護の状況」や「経済的に余裕がない」ことなど、介護の状況をしっかりと伝えることで、入居の必要性や緊急性をアピールできます。申し込みの書類に、申し込み理由をしっかり書きましょう。簡潔に書いてしまうと緊急性がないと判断されて、優先順位を下げられてしまう可能性があります。
介護度があがったり、家庭の状況が変わったら、その都度申し込んだ特養に報告し、必要性や緊急性をアピールしてください。
特養に入るまでの過ごし方
特養に入居待ちは数年に及ぶ可能性があります。入居待ちの間のおすすめの過ごし方は以下の2つです。
- ショートステイを使用する
- 訪問介護など在宅介護支援を受ける
ショートステイを使用する
ショートステイとは、短期間施設に入所して食事や入浴などの介護を受けることができるサービスです。連続30日まで利用でき、1日帰宅すればまた30日連続で利用できます。このような利用法は、本来想定されていた方法ではありませんが、実際にショートステイの連続利用を繰り返している方がいます。
また、ショートステイに連続利用上限以外に、介護認定期間の半数を超えてはいけないという条件もあります。介護認定期間が360日の場合、180日までしか施設を利用できないということです。
入居したい特養のショートステイを連続利用すれば、介護者の負担を軽減できます。また、施設のスタッフに顔を覚えてもらえますし、それほど連続してショートステイを利用しているということは、在宅介護が困難であるということのアピールにもなるはずです。
特養のスタッフと良い関係を築いておけば空き室ができたとき、優先的に回してもらえる可能性が高くなるでしょう。特養の入居待ちの方は試してみてください。
また、入居したい特養のデイサービスなどの在宅介護支援を利用することも、特養スタッフと良い関係を築くことや、自宅での介護が困難であることのアピールにつながるため、積極的に利用することをおすすめします。
訪問介護など在宅介護支援を受ける
特養への入居待ちの間に、訪問介護などの在宅介護支援を受けることもおすすめです。在宅介護支援には、訪問介護の他にも訪問入浴や訪問看護などさまざまなサービスがあります。在宅介護支援を受けることは、要介護者のためにもなりますが、介護者の負担を減らすことにもなります。
在宅介護が長期化すると、介護者は精神的にも肉体的にも疲弊してきます。在宅介護支援を受け、少しでも介護者の負担を減らすことは大切です。
利用できる介護サービスについて詳しく知らない方は、どのようなサービスが利用できるのかを地域包括支援センターやケアマネジャーに相談してみましょう。
まとめ
特養の入居待ち問題や早く入居できる条件、入居待ちの過ごし方などについてご紹介しました。特養に早く入るためには、介護の必要性・緊急性が高いと判断してもらうことです。また、常に情報収取をして特養の空き室状況を確認し、素早く対応することも大切です。
特養の入居待ちの間は、自宅での介護が困難であることをアピールしながら、介護者の負担を減らすために介護サービスを利用することをおすすめします。