「曹洞宗はどんな宗派なんだろう?」、「曹洞宗の特徴が知りたい」と気になっている人は多いのではないでしょうか?この記事では、曹洞宗の総本山や開祖、教えなどについて説明します。曹洞宗の特徴を知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
曹洞宗とは?
曹洞宗はもともと中国で生まれた宗派で、中国禅宗五家である曹洞宗、臨済宗、潙仰宗、雲門宗、法眼宗の一派です。鎌倉時代に道元が中国の曹洞宗の教えを持ち帰り、瑩山が日本中に広めました。
現在、曹洞宗の寺院は日本に約15,000あり、仏教の宗派の中でもっとも多い寺院数となっています。約300万人もの檀信徒がおり、非常に多くの信仰を集めている宗派です。曹洞宗のご本尊は特に決められていませんが、釈迦如来を本尊にしているお寺が多いです。
大本山の永平寺では釈迦如来と弥勒菩薩、阿弥陀如来が祀られており、台本剤の総持寺では釈迦如来と迦葉尊者、阿難尊者が祀られています。また、曹洞宗の両祖である道元と瑩山もあがめられているのです。
曹洞宗の総本山は2つ
曹洞宗は開宗してから分派することなく単一宗派を守っていますが、総本山は2つあります。総本山が2つある宗派は他にはありません。曹洞宗の総本山は「両大本山」と呼ばれ、ひとつは福井県の永平寺で、もうひとつは横浜市の総持寺です。
永平寺は道元が曹洞宗を開いた地とされており、「雲堂」と「坐禅堂」と呼ばれる僧堂で坐禅や食事、就寝が行われます。永平寺はミシュランガイドでも二つ星に認定されています。総持寺はもともとは石川県にありましたが、明治時代に火災により横浜市に移転されました。
移転後の総持寺は、仏殿の木造建築以外ほとんどが近代の建物となっており、大祖堂、三門は太平洋戦争後に鉄筋コンクリートで建てられました。
開祖は道元
もともと曹洞宗は中国の禅宗五家の一つで、唐の時代の禅僧である洞山良价が開祖となっています。日本での曹洞宗は鎌倉時代初期に道元によって伝えられ、臨済宗などと一緒に鎌倉仏教の一つとされています。
道元は小さい頃から聡明で、理解するのに8年かかるとされていた仏教論の本である「倶舎論(くしゃろん)」を9歳で理解していたそうです。14歳の時には比叡山で出家し、法華経をもとにした天台教学などを学んでいました。
その後、臨済宗を日本で始めた栄西にあうために建仁寺に行き、栄西の弟子である明全と出会い中国(当時の宋)に行くことになったのです。24歳で宋に行った道元は天童山景徳寺を訪ね、生涯の師とした如浄と出会います。
如浄の座禅の教えに感銘を受けて曹洞宗の修行をし、悟りに達したという証明である印可証明を受け日本に帰国しました。道元から四代目にあたる瑩山は曹洞宗の宗祖とされています。
瑩山は庶民に曹洞宗の教えを説いて回り、曹洞宗を全国に広めることとなりました。曹洞宗では「一仏両祖」という言葉があります。「一仏」は釈迦如来、「両祖」は道元と瑩山のことです。
道元には「高祖」、瑩山には「太祖」という特別な尊称がつけられており、道元は曹洞宗の父、瑩山は曹洞宗の母とされています。曹洞宗の管長(宗派の長)は2年ごとに交代します。永平寺の就職と総持寺の住職が交互に努めるという独特の方法です。
曹洞宗の教えとは?
禅宗の一つである曹洞宗の教えはどのようなものなのでしょうか?こちらでは、曹洞宗の教えや経典などについて説明します。
曹洞宗は禅宗のひとつ
曹洞宗は禅宗の一つとされています。禅宗は曹洞宗、臨済宗、黄檗宗の座禅をして修行する仏教の宗派を指しています。すべての人の内面に仏性があり、それを再発見するために座禅修行を行うのが禅宗です。
インドで生まれた禅を達磨が6世紀前半に中国に伝え、日本では鎌倉時代初期に臨済宗の栄西、曹洞宗の道元が広め、江戸時代には黄檗宗の隠元が伝え発展させました。
曹洞宗では「行住坐臥」という教えがあります。歩くこと(行)、止まること(住)、座ること(座)、寝ること(臥)の日常生活のすべてを修行と考えられています。日々のすべてのことに心を込めて生活することで、穏やかな日々を送ることができるとしています。
曹洞宗のお経といえば?
曹洞宗には、基本経典である「正法眼蔵」と「伝光録」、日用経典である「修証義」、「般若心経」があります。正法眼蔵は道元の深い悟りについて独自の語法で説示したもので、75巻と12巻は道元が編集しています。
伝光録は瑩山が加賀の大乗寺で修行増に説き示した説法を側近の僧がまとめたものです。修証義は正法眼蔵から文言を抜き出して編集されたもので、曹洞宗の教えの実践方法や信仰を高める方法を示している経典です。
般若心経は般若経600巻を262文字にまとめたもので、仏教思想と宗教的実践を説いているものです。般若心経は、曹洞宗だけでなく、ほとんどの宗派で読まれています。
坐禅は曹洞宗の基本の教え
曹洞宗の基本の教えは坐禅です。坐禅する姿が「仏の姿」であり、「悟りの姿」でもあるとされているのです。悟りのために坐禅をして修行するのではなく、修行と悟りは一体という「修証一如」の教えに基づいています。
ひたすら坐禅に打ち込むことを「只管打座」という四字熟語で表すことができます。何も考えずに坐禅をしながら瞑想することで欲望から解き放たれて精神統一ができ、悟りが開けるということが曹洞宗の教えです。
同じ禅宗である臨済宗では坐禅だけでなく、坐禅と公案(禅問答)の両方を大切にしています。座ることと考えることの両方で仏心を求めるのが臨済宗です。
また、曹洞宗は下級武士や農民や土民たちに広まったため曹洞土民と呼ばれます。一方、臨済宗は時の権力者に近づくことで禅文化を広めたため臨済将軍という言葉が定着しています。
曹洞宗の有名なお寺
曹洞宗の大本山である福井県の永平寺、神奈川県の総持寺以外にも全国に曹洞宗の寺院があります。曹洞宗の寺院は仏教の宗派の中でもっとも多い寺院数となっており、とくに有名なのが京都府にある詩仙堂と源光案、東京都にある長谷寺です。
詩仙堂は京都市左京区一乗寺にあります。江戸時代の文人「石川丈山」が晩年を過ごした山荘跡で、現在は曹洞宗大本山永平寺の末寺となっています。過去にイギリス王室のチャールズ皇太子と故ダイアナ妃が訪れたことで有名です。
源光庵は、京都市北区にある曹洞宗の寺院です。正式名称を「鷹峰山宝樹林源光庵」といい、約670年前に臨済宗大徳寺二代・徹翁国師によって改装されました。
元禄七年に加賀・大乗寺二十七代・卍山白道禅師が住持して以来曹洞宗の寺院となっています。本尊には釈迦牟尼佛、脇立に阿難尊者と迦葉尊者が祀られています。
長谷寺は東京都港区にある曹洞宗永平寺東京別院です。江戸三十三箇所観音霊場の第二十二番札所でもあり、禅の修行道場である僧堂もあります。本尊は釈迦牟尼佛で、観音堂には十一面観世音菩薩が祀られています。
まとめ
鎌倉時代に道元が中国から教えを持ち帰り、瑩山が日本中に広めました曹洞宗。総本山は2つあることが特徴で、ひとつは福井県の永平寺、もうひとつは横浜市の総持寺です。
また、曹洞宗ではひたすらに坐禅をすることが重視されていますが、同じ禅宗である臨済宗では坐禅と公案(禅問答)の両方が大切であるとされていたりと、両者の教えには違いがあります。
曹洞宗は寺院数も多いので、特徴や教えを知ると寺院巡りが楽しくなりそうですね!