「浄土宗ってどんな宗派なの?」、「浄土宗の教えや特徴が知りたい」と気になっている人は多いのではないでしょうか?この記事では、浄土宗の教えや特徴、有名なお寺について説明します。
浄土宗について詳しく知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
浄土宗とは?
浄土宗は1175年に法然が開いた仏教宗派です。信徒数は約600万人で、仏教の宗派の中では浄土真宗の次に多い信徒数となっています。浄土宗より古くからある真言宗の信徒数は約390万人、天台宗が約153人なので、宗派の歴史と人気は比例しないことが分かります。
仏教で最高の仏様である阿弥陀如来が浄土宗の本尊です。阿弥陀如来が住んでいる世界が極楽浄土とされており、仏様になる時に48個の誓いを立てています。
この48個の誓いのうち法然が重要だと感じたのは18番目の誓いで、「10回念仏を唱えることで阿弥陀如来のいる極楽浄土に行くことができる」というものです。
浄土宗の総本山は知恩院
浄土宗の総本山は京都にある知恩院で、浄土宗最高位のお寺です。知恩院は法然が人生の後半を過ごし亡くなった後に、ゆかりの東山に建てられたため、法然自身は知恩院を見ていません。
国宝である三門や御影堂は江戸時代になってから建てられました。御影堂は念仏を唱えるための道場となっており、法然の御影が祀られています。総本山の次に位が高いお寺は大本山と呼ばれます。
浄土宗の大本山は東京都の増上寺、京都市の金戒明光寺、福岡県の善導寺、京都市の清浄華院、神奈川県の光明寺です。
金戒明光寺は新撰組発祥の地として有名で、増上寺は徳川将軍の菩提寺として知られています。総本山と大本山の他に約7,000の寺院が全国各地にあり、日本だけでなくハワイや北米など世界中に寺院があることが特徴です。
法然を宗祖とする
法然は美作(現在の岡山県)に武士の子供として生まれました。9歳の時に父を亡くし、「出家しなさい」という父の言葉通りに叔父が住職をしていた寺で仏教や学問を学び始めました。
とても賢く、将来を見込まれた法然は13歳の時に天台宗の修行をするために比叡山に向かいました。ただ、当時の比叡山では僧同士が権力争いばかりをしていたことに絶望し、天台宗の修行をやめて18歳で比叡山の黒谷に住んでいた叡空の弟子になったのです。
24歳まで叡空の下で修行を積み、京都や奈良で様々な宗派の僧や学者と交流をしました。その後43歳の時に読んだ「観無量寿経疏」というお経の解説書で、「南無阿弥陀仏を唱えればだれでも極楽浄土にいける」という文章に気づき、浄土宗を開くことにしたのです。
浄土宗の教えとは?
浄土宗の教えは、「南無阿弥陀仏」をひたすらに唱えることで極楽浄土に行けるということです。詳しい教義や浄土宗と浄土真宗の違いなどについて説明します。
教義は『絶対他力』『専修念仏』
浄土宗の教義には「絶対他力」と「専修念仏」があります。絶対他力とは、人間の自治機ではなく救いはすべて、阿弥陀仏の力によるものであるという教えです。専修念仏は、「南無阿弥陀仏」をひたすらに唱えることで極楽浄土に行けるという教えのことです。
この教えは、「仏教での最高神である阿弥陀如来にすべてを噛ませて念仏を唱えることで救われる」というインドの浄土教が元になっています。
これは厳しい修行をして自分で悟りを開く「難行道」とは逆の「易行道」と呼ばれます。法然は長い修行の中でなかなか悟りを開けなかったため、難行道に限界を感じ、易行道こそ人々を救うことができると確信したのです。
浄土宗を開いた当時は、大火災や飢饉で人々が苦しんでいたため、念仏を唱えるだけで救われるという浄土宗の教えは庶民に広まっていきました。その後、貴族や武士にも広がり、天皇も法然から受戒を受けるようになったのです。
『南無阿弥陀仏』といえば浄土宗
浄土宗以外の宗派では、「信じている人の中に仏さまが存在する」、「自分の心の在り方で、この世は極楽浄土になる」というように、自分の心の在り方や行いから仏様や浄土と向き合う傾向にあります。
ですが、浄土宗では阿弥陀様は救済者であって、自分の心の外に存在するとしています。自分の心の在り方に関係なく、「南無阿弥陀仏」を唱えれば臨終後に阿弥陀様がお迎えに来てくれて、極楽浄土に行くことができるという教えです。
また、生前に縁のあった人とも亡くなった後に極楽浄土で会うことができるとしています。人が亡くなった後のことを具体的に説明しているのが浄土宗の特徴です。
浄土宗と浄土真宗との違いは?
浄土真宗は、法然の弟子であった親鸞が開いた宗派です。浄土宗では本尊として阿弥陀如来像の木造や絵がありますが、浄土真宗の本尊は「南無阿弥陀仏」という言葉のみです。
浄土宗では出家があり、出家後は守るべき戒律があります。ですが、浄土真宗では出家しなくても救われるという教えのため、出家もなく戒律もありません。厳しい規律がないため、肉を食べることも、妻を持つことも問題ないとされています。
また、浄土宗では臨終行儀という、人がなくなった時に行われる儀式があります。病室の飾り方や亡くなる人への対応、お経の唱え方、死を見守る人の服装など決められているのですが、浄土真宗では臨終行儀はありません。
より庶民の考えに庶民の考えに合わせているのが浄土真宗で、善行を積んだ善人だけでなく、悪人も救えるという教えがあります。厳格な規律や出家がない浄土真宗の方が浄土宗よりも信者や寺院の数が多いのです。
浄土宗の有名なお寺
浄土宗の総本山である知恩院の他に浄土宗の有名な寺院を紹介します。こちらでは浄土宗の大本山である東京都の増上寺、京都市の金戒明光寺、福岡県の善導寺、京都市の清浄華院、神奈川県の光明寺を紹介します。
増上寺は東京都にある浄土宗七大本山の1つです。酉誉聖聰上人が、1393年に浄土宗正統派念仏道場のために創建しました。徳川家康が関東を治めるようになったころ、徳川家の菩提寺として増上寺が選ばれています。
17世紀中ごろには、120以上の堂宇、100軒を超える学寮がある大規模なお寺でした。徳川家康が黒本尊と命名した阿弥陀如来像を本尊としています。
京都府にある金戒明光寺は法然が儀叡山の黒谷を下って、草庵を結んだことが始まりとされています。法然が最初に浄土宗の布教を行った地であるため、後小松天皇から「浄土真宗最初門」の勅額を賜っています。
1862年に、京都守護職となった会津藩の本陣となりました。本尊である文殊菩薩は、運慶作と伝えられています。
善導寺は福岡県久留米市にあります。1191年に聖光上人が開山し、筑後国司草野永平により創建されました。室町時代に焼失したものの、江戸時代初期に柳河藩主田中氏の帰依で復興されました。
神奈川県の光明寺は、1242年に浄土宗三祖然阿良忠上人によって開かれました。関東における念仏道場の中心となり、後土御門天皇から『関東総本山』の称号をもらっています。
浄土宗の「お十夜」の発祥の寺で、現在も古式にそって毎年10月2日から15日まで盛大に法要を行っています。
まとめ
浄土宗は法然が開いた禅宗の仏教宗派です。特別な修行をすることなく、「南無阿弥陀仏」を唱えるだけで極楽浄土に行くことができるという教えが特徴です。
このシンプルで分かりやすい教えが庶民に広まり、現在の信徒数は約600万人となっており多くの人に信仰されています。
浄土宗についてもっと知りたいという方は、増上寺や光明寺などを訪れてみても良いかもしれませんね!