少子高齢化が進む日本では、将来介護が必要になったとき、誰に介護してもらいたいかを考える方が増えています。
平成12年島根県「農山漁村における男女共同参画に関するアンケート調査」では、高齢者ケア施設に入ることもやむをえないと考えている方が約半数を占めます。それに続くのが「先のことはわからない」「家族全員に見てもらいたい」という回答です。
この記事では介護が必要になったとき誰に頼むのか、介護の実情を解説します。
終活時に考えたい自分の介護のこと
高齢化社会におい、人生の最後を迎えるための準備である「終活」が盛んです。葬儀やお墓、財産の相続などを考えるのも重要ですが、介護が必要になった場合についても、しっかり考えておくことが必要です。
介護は自分の身体が衰えていくことを意味するため、積極的に考え始める方は多くはないでしょう。子どもたちも親の介護の心配をしつつも、直接話し合いをするのはためらわれる話題のひとつです。
しかし、ある日突然介護を必要とすることになるかもしれません。介護はされる方もする方も準備が必要です。終活では、あらかじめ自分の介護をどうしたいのか、誰に頼みたいのか、希望を考えておくことが重要でしょう。
介護が必要になったら誰に介護してもらう?
介護が必要になった場合、誰に介護してもらうかは介護する側、される側の両方にとって重要です。介護はプロに頼む、家族に頼む、どちらかの方法を選択するのが良いのでしょうか。それぞれのメリット・デメリットを解説します。
プロに頼むメリット・デメリット
介護をプロに頼むメリット、デメリットを解説します。
プロに頼むメリット
- 家族の負担が軽減する
- 家族以外との触れ合いが刺激になる
- 専門的なケアが受けられる
プロに頼むデメリット
- 金銭面の負担が大きい
- 介護を受ける側のストレスになることも
プロに頼むことで、家族は介護における身体的、精神的な負担が軽減します。介護される側にとって、家族に介護されるのは嬉しい反面、家族の負担は増えていきます。長期間介護が必要になる場合もあるため、プロに頼むことで家族の負担を減らせるのは大きなメリットです。
介護をプロに頼むと、家族以外の人と関わる機会ができ、精神的に刺激を受けることができます。人との触れ合いがストレスになるタイプの方にとっては、デメリットになる場合もあり、個人差が大きい部分と言えます。
プロが介護することの3つ目のメリットは、専門的なケアが受けられることです。家族が介護する場合、大抵は介護のプロではありません。会話での受け答え、身体の移動といった簡単なものから、排せつや胃ろうなど専門的なケアが必要になった場合に至るまで、家族とプロの違いは大きいです。家族にケアをしてもらうことを希望するのであれば、プロとの質の差はあることは覚えておきましょう。
多数のメリットがあるプロの介護ですが、最大のデメリットは金銭的な負担が大きくなることです。在宅をメインにサービスを使うか、施設に入所するかによっても異なりますが、家族だけがケアに当たるよりも費用がかかるのは確かです。金銭面に余裕があり、安心安全なケアを希望する場合、家族の介護が難しい場合はプロに任せることを検討するのもひとつです。
介護をプロに頼むことがストレスになるタイプの方にとって、ケア内容がどんなに優れていても家族に頼みたい方もいらっしゃいます。そういったケースでは家族でケアできるのか、プロのケアを併用できるのか、十分な話し合いや検討が必要です。
家族に頼むメリット・デメリット
介護を家族に頼むメリット、デメリットはなんでしょうか。
家族に頼むメリット
- 家族とずっと一緒にいられる
- 住み慣れた家に最後までいられる
- 費用を安く抑えられる
家族に頼むデメリット
- 家族にとって負担が大きい
- 専門家ではない
- 介護度が重くなるとサポートが必要になる
家族に介護を頼んだ場合、介護される本人にとっては住み慣れた家を離れることなく、家族とずっといられるため、安心感があります。意思疎通がしやすい、頼みやすいのも家族に介護を頼むメリットです。
在宅介護では介護施設よりも介護費用を抑えられるため、入所費用に悩む方にとって金銭面でのメリットもあります。
しかし、家族が介護を行うと、家族にとっての負担が大きい点が最大のデメリットです。肉体的、精神的な負担が大きくなります。以前は元気だった姿を知っているだけに、介護されている姿を見て落ち込んだり、介護する家族の疲労が蓄積していったりするケースもあります。介護によって離職しなければならない可能性も忘れてはいけません。
家族は介護の専門家ではないため、プロの介護者とまったく同じレベルのケアは難しいです。そのため、介護される方に意図せずとも苦痛を強いてしまう可能性も考えられます。
介護度が高くなると、24時間体制で介護を行うことになるため、家族の負担が増加します。働きたくても介護のため働けない状況になったり、家族のストレス解消など、介護を行う家族に対するケアが必要になる場合も。
介護をプロや家族のどちらに頼むにしても、メリット、デメリットは存在します。介護の実情はどうなっているのでしょうか。
介護の実情が反映されたデータを参考にしてみよう
介護をプロに頼むか家族に頼むかで、それぞれのメリット、デメリットがあることが分かりましたが、介護の実情はどういったものになっているのでしょうか。
在宅介護実態調査結果の分析に関する調査研究事業【報告書】(令和3年)によると、施設などへの申請率は要介護2までは6.4%ですが、要介護3では12.8%、要介護4では15.9%、要介護5では13.4%と要介護3を境目に施設への申請率が一気に増加しています。
このデータから、家族が介護することに対して不安が大きくなっていくのが、要介護3あたりであることが分かります。不安を感じる介護内容は「認知症状への対応」「夜間の排泄」が合わせて71%を占めています。訪問サービスを利用している場合は、ケアへの不安が軽減する傾向にあることも分かっています。
また、就労継続が難しいと感じる介護者は、「認知症状への対応」「夜間・日中の排泄」などのケアを不安に感じています。要介護3以上では家族で介護する場合でも、大多数が訪問、通所、短期利用などのサービスを利用しています。仕事を続けられると考えている介護者は訪問系のサービスを多く利用している場合が多いです。
介護度が上がるに従って、在宅介護が大変になったり、介護しながら就労が大変と感じるようになっています。介護離職が社会問題になっているように、在宅介護を続けていくためには、さまざまなサポートを利用することが重要です。
在宅介護を行う場合は、介護への不安が大きくなる要介護3を目安にプロのケアサービスの導入を検討すると良いでしょう。
プロの手に任せたいという人が増えている
介護の実情から、家族だけで介護を行うのではなく、サービス利用を併用する方が望ましいことが分かりました。
平成12年島根県「農山漁村における男女共同参画に関するアンケート調査」では、誰に介護して欲しいかという質問に対して女性は53.8%、男性は43.1%が「高齢者ケア施設に入ることもやむをえない」と答えています。
核家族化が進む現代日本では、以前のように家族だけで介護を行うのは難しいという現状があります。家族に介護してもらいたいけれど、負担になることも理解したうえでプロの手に任せたいと考える人が増えているのです。
介護方針をエンディングノートに記しておくと万が一の時も安心!
老後の人生が長くなっている現在、介護に関する希望を考えておくことが老後の安心につながるとも言えます。終活の一部としてエンディングノートをつける方も増加しており、介護の希望もエンディングノートに記しておくのをおすすめします。
介護に関しては次のような内容を記すと、家族に伝わりやすいでしょう。
- できる限り家族にケアして欲しい
- サービスを利用して自宅で暮らしたい
- 高齢者ケア施設で暮らしたい
- 高齢者施設の希望について
- 判断能力が不十分になった場合の対応
- 延命治療が必要になった場合の対応
エンディングノートを書いたからといって、すべてが希望通りになるとは限りません。しかし、介護する家族にとっての判断材料になり、たくさんの迷いが生まれる介護において、後悔を減らす手助けとなるのは間違いありません。
介護によって親子関係が悪化することがないよう、将来介護が必要になった場合をイメージしたり、家族と将来の介護について話し合う機会を作ったり、少しずつ準備をしていくと良いでしょう。