利用している介護施設や老人ホームが突然倒産したら、入居者は一体どうなるのでしょうか。
急に退所しなくてはいけないのだろうか。
行く当てがなく、途方に暮れてしまうのではないか。
入居時に払った大金は戻ってくるのだろうか。
そんな不安や疑問を抱く人は多くいるでしょう。
そこで今回は、介護施設の倒産についてお話します。
安心できる老後を過ごすためにも、利用する施設の経営状況は重要なポイントです。
介護施設の倒産は、実際に毎年多く起こっている問題でもあります。
ご自身が当事者にならないためにも、施設選びの参考にしてくださいね。
多くの介護施設・福祉施設が抱えている問題とは?
経営困難の介護施設・福祉施設は年々増加傾向にあります。
特に2019年からはコロナ禍に入った影響から、利用者の激減や人材不足に悩まされている状況です。
感染対策の面でもマスクや手袋の需要が高まった影響から、保険衛生費が増加しているのも理由にあります。
コロナ禍前の保険衛生費が1.8ポイントだったのに対し、2020年には2.9ポイントに増加しているのです。
こういった状況も、経営難に拍車をかけています。
慢性的な人手不足
介護業界において、人材不足は長年の課題ともいわれています。
主な原因として、募集をかけても応募がない、給与が低いといった理由が一番多く挙げられます。
効果的な募集方法がわからず、早朝や夜勤の人材を確保できなかったり、人材の確保から育成、定着までの資金が不足していたりと、施設が抱える悩みはさまざまです。
特に資金力のある大手よりも、中小の介護施設がこの困難に直面しています。
介護の現場を維持するためには、人材育成も含めて一定の投資が必要なのです。
深刻な経営難
東京商工リサーチによると、2019年の上半期に倒産した介護事業は55件にのぼり、過去最高の件数になりました。
中でも訪問介護が33件と最も多く、老人ホームは5件でした。
これは前年の同期よりも10件ほど多い件数で、介護事業の倒産は年々増加傾向にあることがわかります。
主な原因として、他の施設との競争の激化が挙げられます。
少子高齢化に伴い介護事業の需要が高まる一方で、同業他社間の競争も激しくなってきています。
それによって、入居者の定員割れや人材不足が起こり、経営難に陥るのです。
近年では、2022年上半期の介護事業倒産件数は53件となり、2000年以降で3番目の高水準を記録しました。
事業別では、デイサービスやショートステイなどの通所・短期入所介護事業の倒産が大幅に増加しています。
コロナ禍による利用者の激減が主な要因となっているようです。
入居している老人ホーム・介護施設が倒産した場合
介護施設の入居者にとって一番のリスクは、万が一倒産した場合に行く当てがないという点です。
施設入居に合わせて持ち家を売却していたりと、帰る家がない人も多くいます。
利用している老人ホームや介護施設が倒産した場合、どのようなことが起きるのでしょうか。
入居時の預かり金が戻らない可能性も
老人ホームや介護施設の入居時、預り金として平均200万円を支払うケースがほとんどです。
しかし、万が一施設が倒産した場合、この支払金の大部分は戻ってこない可能性があります。
公益財団法人・全国有料老人ホーム協会が、いざというときのために最大500万円を肩代わりするという保障制度があります。
しかしこれは、施設倒産の場合に適用される可能性は極めて低いのです。
理由として、保障が適用される条件が「全入居者が退出せざるを得なくなり、入居契約が解除された場合のみ」になっているためです。
大金を預けて入居した利用者にとって、なかなか納得のいくものではないでしょう。
経営元・運営元が変わる
万が一倒産をしても、別の運営会社が引き継ぐことがほとんどのため、倒産した介護施設はこのケースによって存続しています。
そのため、倒産したからといって今すぐに退所命令が出たり、突然介護職員がいなくなったりするということはありません。
しかし、経営元や運営元が変わることによる注意点もあります。
おおもとの会社が変わるということは、今までの入居条件や基準の変更や、介護サービスの内容変更、職員側の体制変更がありえます。
例えば、今まで無料だったサービスが有料になったり、介護活動や食事内容が変更されたりといったサービス内容の変更です。
職員は担当人員の変更や、他の部署・施設への異動もあり得るでしょう。
こうしたことから、たとえ倒産による退所を免れても、今までと同じサービスが受けられるとは限らないという点に注意しなくてはなりません。
可能性は低いが退去しなければいけない場合も
可能性は低いですが、運悪く引き継ぎ先が見つからない場合は、施設の閉鎖が考えられます。
そのため、入居者は急いで別の入所先を探さなくてはいけません。
急なことで慌ててしまうかもしれませんが、まずは担当のケアマネージャーに相談をしましょう。
経営が安定している介護施設の選び方
経営が安定しているかを自分で見抜くのはなかなか難しいですが、施設選びの際は直接見学に行ったり、複数の施設を比べたりすることが重要です。
施設の立地に関しては、家族や友人が訪ねやすいか、施設の周辺に商店街や商業施設などがあるか、地域の賑わい状況もチェックしましょう。
施設の入居率やスタッフの平均勤続年数、赤字が膨らんでいないかの経営状況もチェックし、複数の施設で比較するのもポイントです。
見学の際には、空室の数や設備の投資状況も確認しましょう。
空室が多すぎる施設は、経営難の兆候ともいえます。
すぐに倒産する確率は低いですが、この状況が長期化することで倒産の可能性が大きくなってしまいます。
また、設備の投資がされておらず、故障したままだったり旧式など古いものを使っている場合は経費削減が考えられます。
その場合、食事内容も粗末になりがちなので、毎日どのようなメニューの食事なのかもチェックしてみましょう。
他には、退職者が多い施設は労働環境がよくなかったり、運営による人員削減が考えられます。
そういった場合は、十分なサービスを受けられない可能性もあるでしょう。
施設を選ぶ際は、不利な情報もしっかり開示している施設が望ましいです。
できれば民間ではなく、地方自治体の介護施設が一番安心ですが、民間を選択する場合は上記のようなポイントがない施設を選びましょう。
安心して老後をまかせられる老人ホーム・介護施設を探そう!
老後を安心して過ごすために、早い段階から介護施設について考える人は少なくありません。
最後をどこで過ごすか、自身の希望や理想に合わせて施設を選ぶかと思います。
終活の一環として自身で身辺整理をし、家を売り払い、いざ希望の施設へと入居した矢先に倒産なんてことがあったら本人も家族も不安になるでしょう。
表向きは順調に見えても、経営難に陥っている施設は数多くあります。
大切なのは、自分の目でしっかり見て、疑問を解決することです。
施設見学はできるだけたくさんの施設を訪れるようにしましょう。
比較対象が多い方が、経営難の兆候を見つけやすくなります。
また、どこか少しでも気になるところや不安な点を見つけたら、ケアマネージャーや施設職員に相談するようにしましょう。
すべてをクリアにすることが、ステキな老後を過ごすためのポイントです。
この記事を参考に、安心して老後が過ごせる老人ホーム・介護施設を見つけてくださいね。