遺言書が無効になる場合とは?無効にされないためのポイント

この記事は約6分で読めます。

自分が亡くなったあとのことを考えて、家族や親族に宛てて残す遺言書。
どんな点に気を付けて作成すればよいのでしょうか。

「遺言書を書きたいけど、難しそうでなかなか書けない」
「どんなことを書いたらいいのかわからない」
「書いたはいいけど、法律的に効力があるのだろうか」

そんな疑問をお持ちの方に、今回は遺言書を無効にされないためのポイントを紹介します。

法律で定められた条件で書かないと無効となってしまう遺言書。
せっかく残された家族のために書いても、効力がなければ意味がありませんよね。

書き方の注意点や、遺言書の種類なども併せて解説しますので、ぜひ参考にしてください。

あらためて知ろう!遺言書とは?

遺言書とは、自らの死後のために遺す文書のことです。
自分が亡くなったあと、自分が遺した遺産を「誰に・どのくらい分けるか・どのように処分するのか」を遺言書に記します。

自分の意思を示したいだけなら、これといった形式はありません。
しかし、法律上の効力を持たせたいときには、法の定め通りの形式で作成する必要があるのです。

遺言書には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があります。

自筆証書遺言とは、一般的な遺言書のことをさします。
「15歳以上の自筆で文章を書ける人」であれば誰でも作成でき、費用もかからない最もポピュラーな形式です。
最近では、遺言書作成キットがネット通販で販売されており、かんたんに遺言書が作れるようになっています。

注意点として、自筆証書遺言書は目録を除いてすべて自筆で作成しなければいけません。
自筆ではないPC・代筆・録音・動画撮影等で作成されたものは、すべて無効となります。

また、遺言書には作成日付と遺言者の氏名を記載し、必ず押印をします。
これがないものは、遺言書としての効力を発揮できません。

開封する際には、家庭裁判所での検認という手続きが必要になる点にも注意しましょう。

秘密証書遺言書は、その名の通り誰にも内容を知らせずに作成した遺言書です。
自筆で作成した遺言書を、公証人と証人2人以上立ち合いのもと提出をし、それぞれが遺言書の封筒に署名押印をします。

メリットとしては、誰にも遺言書の内容を知られることなく作成できる点です。
さまざまな事情から、家族に内密に遺言書を作成したい人にぴったりの遺言書といえるでしょう。

他にも、遺言書が本人のものであることを明確にでき、代筆やパソコンでの作成も可能です。
公証役場に記録が残るため、内容を改ざんされる心配もありません。

デメリットとしては、公証人による署名押印があるものの内容のチェックはされないため、法的に無効な内容を記載していても気付かないという点です。

また、誰にも遺言書の存在を伝えていないケースも多く、亡くなったあとも遺言書の存在を知らずにそのままになってしまうこともあるでしょう。
手間や費用もかかることから、遺言書の中でもデメリットの大きい形式であり、あまり利用されていません。

公正証書遺言書に関しては、後ほど詳しく説明をします。

遺言書に記載できる内容は、以下の通りです。

  • 遺産相続に関する事項
  • 財産の処分に関する事項
  • 身分に関する事項

まず、遺産相続について自分が遺した遺産に対し「誰が・どのくらい・どのように分与するのか」を指定できます。
これが遺言書において最も基本的な内容です。

財産の処分については、分与する以外に寄付といった形で「財産処分」をすることもできます。
身内に関することは、未認知の子どもがいる場合などに明記をする項目です。

このように、遺言書を作成するメリットは「自分の意思を実現できること」です。
自分の遺した遺産を、自分の希望通りに分与・処分できるのが最大のメリットといえるでしょう。

法律上有効な遺言書は、原則として遺言書で示された分与方法が優先されます。
そのため、どんなに遺族の希望があっても、遺言書第一で分与されるのです。

また、それにより相続争いを未然に防げるのも遺言書のメリットになります。
故人の意向がわからないことが原因で相続争いに発展することは少なくはありません。
これらが遺言書によって明確になることで、スムーズに相続を済ませることができるのです。

しかし、これらはすべて「法律上効力のある遺言書」だからできることであり、無効の遺言書にはこのような効力はありません。
そのため、どんなに細かく相続に関することが記されていても、効力のないものは法律による縛りがないためただの紙切れにすぎないのです。

自筆遺言書が無効になる場合とは?

では、遺言書が無効になるのはどのような場合でしょうか?
最も無効になりやすい自筆遺言書で紹介します。

自筆で書いていない

自筆遺言書は、その名の通り「自筆で書いてある遺言書」をさします。
そのため、財産目録以外は自筆で書く必要があり、代筆で書かれたものは法的に無効になります。

夫婦で共同の財産があるからといって、共同遺言も不可です。
「撤回の自由」を保障する観点から、それぞれの持ち分に対し各々に財産分与方法を示す必要があるため単独での作成をしなければなりません。

成人後見人による代筆も不可です。
遺言書は必ず自分で作成するようにしましょう。

日付・押印忘れ

遺言書に作成した日付の記入し忘れや、日付スタンプの使用は禁止です。
自筆で日付を書いていないものは無効になります。

作成した年月日を特定できないといけないため、「〇〇年〇月吉日」といった日付が特定できない書き方も禁止です。
しっかりと、作成日を記入するようにしましょう。

また、遺言書に押印は必須事項です。
印を押していない自筆遺言書は法的に効力を持ちません。
なお、規定はないため必ずではありませんが、押印には実印が好ましいとされています。

法律的に無効な内容を書いていた

遺言書の効力によって指定できることは、以下の通りです。

  • 財産に関すること・・・相続分の指定、分割方法、担保責任の定め など
  • 身分、相続権について・・・推定相続人の廃除、遺言による認知 など
  • 遺言執行に関すること・・・遺言執行者の指定 など
  • その他・・・未成年後見人の指定、監督人の指定 など

これ以外の項目や内容が不明瞭のものに関しては、遺言書に効力はありません。
しっかりと効力のある内容を把握してから書くようにしましょう。

公正証書遺言なら安心

公正証書遺言とは、遺言者が公証人の前で2人以上の証人の立会いのもと、遺言の内容を言い伝えるものです。
それに基づいて、公証人が遺言者の真意を正確に文章にまとめ、読み聞かせ、遺言者・証人・公証人が署名をして、公正証書遺言として作成します。

法律の専門家である公証人が遺言を作成するので、方式の不備で無効になることはなく、もっとも確実な遺言方法です。
公正証書遺言は、家庭裁判所で検認の手続きを経る必要もなく、相続開始後は速やかに遺言の内容を実現することができます。

また、原本が公証役場に保管されていますので、遺言書が破棄されたり、改ざんをされたりするおそれもありません

高齢のため自筆で遺言書を作成できない人はもちろん、病気で公証役場に行けない場合は自宅や病院に出張を依頼することも可能です。
公証人は署名や代筆もできるので、書くのが難しい人でも安心して遺言書を作成できます。

作成には費用がかかりますが、最も安心かつ確実に効力のある遺言を残せる方法でしょう。

遺言書を残したいなら、早めの準備が吉!

遺言書は自分の意思を明確にするためのものです。
残された家族のために財産を分けるだけでなく、相続の争いを防ぐ最も重要なツールになります。

ただし、自分の考えばかりではなく、みんなが納得し、法的に効力のある遺言書作りが大切です。
だからといって一から法律を学び、知識を十分に身につけてから作成するのは困難でしょう。
そんなときは一度プロに相談をし、アドバイスをもらうのがおすすめです。

いざというときのために、遺言書は早めの準備が必要になります。
自分で考えて行動できるうちに、遺言書の作成をしておきましょう。