親や配偶者など大事な人に介護が必要になったときに、多くの方はまず在宅介護を検討します。住み慣れた家でいつも見守れるという安心感がありますが、慣れない介護や仕事や子育てとの両立など不安に感じることも多いでしょう。
そのような方に向けてこの記事では、在宅介護のデメリットやメリットをご紹介します。大切な人に介護が必要になったときの参考にしてください。
介護疲れは思っているよりも深刻
在宅介護をする上で問題になるのが、介護者の介護疲れです。最初は、自分ならできると考えていた方でも、実際に介護を始めると予想以上に大変なことがわかり、気づいたら心身ともに疲れていたということがあります。
まず介護は突然始まるケースが多く、介護者は準備や気持ちの整理ができていない状態で介護生活を強いられます。何から手をつけたらいいのかわからず、精神的な余裕がない状態から始まってしまうのです。
また、介護は終わりが見えないケースも多く、在宅介護の期間が長くなってくると、いつまでこんな生活をしなければいけないのか、と滅入ってしまうこともあります。
近年、核家族化が進んでいる影響もあり、ひとりの子供に介護の全負担がかかってしまうケースでは、相談する相手もいなく孤立が深まり、閉塞感を感じるようになり精神的に追い詰められていきます。
介護疲れは、周りが想像している以上に深刻です。介護疲れのために「介護うつ」や「介護放棄」に至ることがありますし、最悪なケースでは「介護殺人」という痛ましい事件に発展してしまうこともあります。
実の親子でも限界を感じてしまうかも
要介護者にとって見知らぬ介護士から介護を受けるよりも、気心の知れた子供から介護を受けたいと思う方が多いでしょう。介護する子供側も、親の介護は出来るだけ自分がしたいと思っている方が少なくないはずです。
しかし、介護は在宅介護を続けていくうちに限界を感じることもあるでしょう。たとえ親子でもひとりの人を介護するのは大変なことですし、介護には必ず上手くいく方法というものはありません。
そうしたときはひとりで頑張らずに、在宅で受けられるさまざまなサービスの利用や介護施設への入居を検討してみてください。
介護疲れは誰にでも起こりうることで、あなたが悪いわけではありません。要介護者である親も、自分を介護するために、子供が辛い生活を送って欲しくはないはずです。
在宅介護のデメリットとは
在宅介護のデメリットには主に以下のことがあげられます。
- 経済的不安
- 精神的な負担
- 身体的な負担
こここでは在宅介護のデメリットについて詳しくご紹介します。
経済的負担
経済的な負担は、在宅介護のデメリットのひとつです。在宅介護は、介護施設に預けるよりも費用はかかりませんが、介護保険による介護サービスの自己負担額やおむつ代などの費用がかかります。その他にも介護用のベッドやポータブルトイレ、自宅のバリアフリーに改装する費用が必要となります。
介護者が複数いて介護にかかる費用を分担できる場合は、一人ひとりの経済的な負担は軽減できますが、ひとりで介護をしなければいけない場合は、経済的な負担が大きくなってしまうでしょう。
また、介護するために仕事を辞めてしまうと収入がなくなってしまうため、さらに経済的な負担は大きくなります。
精神的な負担
介護者の精神的な負担の原因は主に以下の3つです。
- 介護生活について
- 要介護者について
- 介護を手伝ってくれる人との人間関係について
介護をした経験のある方ならどれも心当たりがあるものです。
また、要介護者にも精神的な負担はあります。健康な頃と同じような生活を送れなくなってしまった不満、介護に慣れていない家族から受ける介護に対する不満などが精神的な負担となるでしょう。
介護生活についての精神的な負担
介護生活は、要介護者の生活に合わせて生活を送る必要があります。大部分の人は、朝起きて夜になったら寝るという生活を送っているため、人の生活に合わせて生活することがどれだけ精神的な負担となるのかわかりにくいかもしれません。わかりやすい例をあげると、睡眠中の排泄介助です。要介護者の排泄状況にあわせて、睡眠中でも起きて介助しなければいけないことは、肉体的な負担だけでなく精神的な負担もかなり大きくなります。常に要介護者のことを頭の片隅で考えながら生活しなければならず、気の休まるときがないことは大きなストレスになるでしょう。
また、介護は終わりの見えないケースも多く、いつまでこのような生活が続くのか、と不安に感じ精神的に追い詰められることもあります。
介護には多くの時間を費やします。そのため、自分のやりたいことに時間を使いたいと思っていても、多くの時間を介護に費やさなければいけない現状に大きなストレスを感じることもあるでしょう。
要介護者に対する精神的な負担
介護は上手くいかないことが多く、ストレスが溜まりやすい傾向があります。特に要介護者が認知症を患っていた場合は、精神的な負担は大きくなるでしょう。認知症患者は、深夜の徘徊や被害妄想、暴言など健康な人には理解しがたいような言動をとることがあります。頭では認知症患者なのだから仕方がない、とわかっていたとしてもストレスを感じる人が少なくないでしょう。
要介護者も感情の起伏があり、介護してくれていることに感謝はしていても、不満や文句を言うこともあります。介護者は、要介護者のためにやったことに文句を言われると、苛立ちを感じることもあるはずです。
また、自分のストレスを要介護者にぶつけてしまい、あとになって自己嫌悪で精神的に落ち込んでしまうこともあります。
介護を手伝ってくれる人との人間関係についての精神的な負担
介護を手伝ってくれている親族やヘルパーさん、ケアマネジャーさんとの人間関係が大きな精神的な負担となることがあります。ヘルパーさんやケアマネジャーさんと相性が良く、いい人間関係が築ければ問題ありませんが、相性が合わないとストレスを抱える原因になることもあります。
また、親族と介護の負担割合に対する不満で揉めてしまった、というようなことはよく聞く話です。親族間の人間関係の悪化は精神的な負担になりますが、それに加えて「なぜ自分だけが」と感じてしまうと、さらにストレスを溜めることになるでしょう。
身体的な負担
要介護者を抱えたり、持ち上げたりする動作を伴う身体介護は、身体的な負担の原因となります。車椅子への移乗や排泄の介助など1日に何度もしなければいけない動作が多いため、介護者の腰や腕、膝には大きな負担となります。介護者が腰痛や膝痛などになってしまった、ということも珍しいことではありません。
また、介護者は専門的な知識やスキルを身につけていないことも多く、独自の方法で介護しているためより一層身体的な負担が大きくなってしまう傾向があります。
在宅介護のメリット
在宅介護にはご紹介したようなデメリットがありますがメリットもあります。在宅介護のメリットとして次の3点があげられます。
- 住み慣れた自宅で介護を受けられる安心感
- 介護費用の軽減
- 必要なサービスを選択でき介護の自由度が高い
以下でそれぞれのメリットを詳しく説明すます。
住み慣れた自宅で介護を受けられる安心感
在宅介護の大きなメリットは、要介護者の安心感です。多くの人が、見知らぬ介護施設で生活するよりも住み慣れた家で生活した方が快適に感じるでしょう。
施設に入居すればプロの介護士から適切な介護を受けられます。しかし、介護することに慣れていなく不自由に感じることもあるかもしれませんが、気心の知れた家族から介護を受けた方が安心すると思う方も多いはずです。上手に介護することができなくても家族ならば思っていることも言いやすいし、大きなストレスを感じることなく生活できるでしょう。
また、介護施設に入居すると、介護士や他の入居者との人間関係のトラブルに巻き込まれる可能性もあります。自宅であればそのような心配はなく、安心して生活することができるでしょう。
介護費用の軽減
介護施設に入居すると、毎月入居費用を支払わなければなりません。公的な介護施設は民間の介護施設に比べると費用は抑えられますが、それでも家族にとっては大きな負担となります。在宅介護をするために、自宅に手すりやスロープをつけてバリアフリーに改装するための費用がかかったとしても、長期的に考えれば介護費用の軽減になります。
必要なサービスを選択でき介護の自由度が高い
在宅介護では、訪問介護サービスやデイサービスなど必要なサービスを自分で選択できるため、介護の自由度が高いこともメリットといえます。
要介護認定を受けていれば、費用を抑えてさまざまな介護サービスを受けられるため、介護保険申請していない方は、できるだけ早く申請してみてください。
問題点を理解して、介護方針を話し合っておこう
在宅介護にはメリットもデメリットがあるため、まだ介護が必要のない段階で、介護者と要介護者が介護方針について話し合っておくことをおすすめします。在宅介護を選択した場合、どのようなサービスが受けられるのか、費用はどのぐらいかかるのかなどをしっかり確認しておきましょう。要介護者の気持ちと介護者の負担を考えて介護方針を決めることが大切です。