11月の仏事といえば新嘗祭(にいなめさい/しんじょうさい)!

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「新嘗祭の読み方が知りたい」、「新嘗祭と大嘗祭の違いは何?」と気になっている人は多いのではないでしょうか?この記事では、新嘗祭と大嘗祭の違いや新嘗祭の流れについて説明します。新嘗祭について知りたい人は、ぜひ参考にしてください。

新嘗祭とは

新嘗祭とは古くから行われている伝統行事で、戦前までは「新嘗祭」という名前の祭日として扱われていました。戦後には収穫への感謝だけでなく、働くことにも感謝することが大事であるという考えから「勤労感謝の日」という名前に変わり現在まで続いています。

もともとは太陰太陽暦(旧暦)の時代には新嘗祭は11月の「2番目の卯の日」と決められていました。そのため、毎年新嘗祭が行われる日付が変わっていたのです。現在の11月23日になったのは、太陽暦(新暦)を採用した明治6年に新暦や旧暦の日付差を考えずに新暦の11月の2番目の卯の日に行ったのが11月23日だったからです。この年以降、そのまま新嘗祭は11月23日に行われることとなりました。

にいなめさい?しんじょうさい?正しい読み方はどっち?

新嘗祭は「にいなめさい」、「しんじょうさい」のどちらも正しい読み方です。新嘗祭の「新」は新穀を意味し、「嘗」は召し上がっていただくことを意味します。収穫された新穀を神様にお供えして、次の年の豊穣や国家安泰、国民の繫栄を願う行事として行われているのです。

新嘗祭は新米を食べる行事ですが、現代では9月には新米が販売され始めるため、11月23日の新嘗祭までに新米を食べないのは現実的ではありません。昔は稲刈りを手で行い、天日干しをするだけでも1ヶ月以上かかっていました。また、稲穂から米粒を取り出す作業も含めると稲刈りをしてからお米を俵に収納するまでに2ヶ月ほどはかかっていたはずです。

9月から稲刈りを始めても新米を食べられるのは11月ころだったので、技術が発展していなかった昔であれば11月の新嘗祭まで新米を食べないのは一般的であったかもしれません。

大嘗祭との違いは?

新嘗祭は毎年11月23日に行われるもので、宮中で天皇陛下が新穀を奉って召し上がるものです。新嘗祭の中でも新天皇が即位して最初に行われるものが大嘗祭と呼ばれます。大嘗祭が行われる時期は決められており、7月までに即位した場合はその年のうちに行われ、8月以降に即位した場合には翌年に行われます。

2019年に迎えた御世替りでは、5月に即位されたため、11月14日と15日に大嘗祭の中心的な儀式となる大嘗宮の儀が行われました。大嘗祭で使用されるお米は「斎田点定の儀」という儀式で選定されます。「斎田点定の儀」では亀の甲を使用する「亀占」で山地が決められるのです。

2019年の大嘗祭の際には、5月13日に皇居の宮中三殿で「斎田点定の儀」が行われ、宮内庁と亀占で選ばれた県の関係者で具体的なお米の産地が決められました。その後秋の「斎田点定の儀」で選定されたお米を収穫し、供えられました。

明治天皇(1871年)の時には、山梨県と千葉県のお米、大正天皇(1915年)の際には愛知県と香川県、昭和天皇(1928年)の時には滋賀県と福岡県、上皇陛下(1990年)の際には秋田県と大分県、天皇陛下(2019年)の時には栃木県と京都府が大嘗祭の新米の産地として過去に選ばれています。

新嘗歳はお米の日?

新嘗祭ではその年に収穫したお米を天照大御神をはじめとするすべての神様にお供えして、神様の恵みによってお米が収穫できたことを感謝するお祭りです。実際に宮中の新嘗祭の行事でも、天皇陛下が新穀を召し上がることからお米にかかわりの深い日とされています。新嘗祭は現在、11月23日に行われていますが、この日には新嘗祭の他にも「お赤飯の日」と「コメニケーションの日」というお米に関する記念日が設定されているのです。

「お赤飯の日」は、昔から日本人のお祝いの日に欠かすことのできない赤飯の歴史や伝統を継承することを目的としています。飛鳥時代の皇極天皇の時代から、赤飯の起源とされる赤米などの五穀が新嘗祭で奉納されていたことから、一般社団法人赤飯文化啓発協会が制定したものです。

また、神奈川県さぬき市に本社があり、玄米の通販を行っている「くりや株式会社」が「コメニケーションの日」を制定して、全国に啓もう活動を行っています。コメニケーションの日は新嘗祭にちなんで、お世話になった人にお米を送ったり、一緒にお米を食べてコミュニケーションを取る日にしてほしいという願いが込められています。

新嘗祭の流れ

新嘗祭は毎年11月23日に全国の神社と宮中で行われます。宮中にある殿のなかでも「神嘉殿」と呼ばれるところで新嘗祭が行われます。神様がお座りになる上座と貴人が座る御座がつくられ、天照大御神と他のすべての神様に対して神膳を供えます。

神膳を供えるのは日が暮れた時間と明け方の二度で、神膳には天皇自らが新穀で作った食事を供えます。神様と食事ができるのは天皇のみとされており、神様と新穀を食べることで翌年の豊穣を約束するとされています。宮中で行われる新嘗祭は一般人は参列できないため、具体的な新嘗祭の流れを知らないという人も多いでしょう。

宮中祭祀としての新嘗祭は前日の11月22日の鎮魂祭から始まります。鎮魂祭は宮中の「綾綺殿」で行われ、天皇の霊を強化するための儀式とされています。次に宮中の「神嘉殿」にその年に収穫された新米や麦、キビ、粟、豆などのご語句をお供えします。

天皇が神々に感謝の言葉や祈りをささげ、「新嘗祭賢所・皇霊殿・神殿の儀」と呼ばれる新嘗祭の準備としての儀式では皇室の宮中祭祀担当となっている掌典職が第杯を行うとされています。そして、神々にお供えしたものと同じ食材を使った食事を天皇も召し上がり、一緒に食べることで神々をおもてなしするのです。食事は「夕御饌の儀」「朝御饌の儀」の2回行われます。

日本全国の神社で行われる新嘗祭は神社によって内容が異なります。近隣の人を招いて供物を分けたり、舞の奉納をしたり、イベントが行われることもあります。例として伊勢神宮の新嘗祭の流れをご紹介します。

伊勢神宮では「大御饌」と「奉幣」が行われ、外宮から先にお祭りする「外宮先祭」というしきたりで新嘗祭が行われます。外宮では4時に大御饌が行われ、7時に奉幣が行われます。大御饌は神様にお供えする食事で、お米だけでなく海の幸や山の幸もお供えすることになっています。

奉幣では、天皇陛下が遣わした勅使が天皇陛下の捧げ物となる幣帛を奉納することが決まりです。内宮での大御饌は11時、奉幣は14時に行われます。伊勢神宮の11月の参拝時間は5時から17時なので、参拝時間内であれば新嘗祭の様子を見ることができます。11月23日には多くの神社で新嘗祭が行われるので、ホームページなどで確認してみましょう。

まとめ

新嘗祭は収穫に感謝をする儀式で毎年11月23日に全国の神社や宮中で行われます。宮中で行われる新嘗祭では天皇が自ら用意した食事を神々に備えて、天皇も同じ食事を召し上がります。

宮中で行われる新嘗祭を一般人が見ることはできませんが、全国の神社で行われる新嘗祭は参拝時間内であれば見学が可能です。それぞれの神社によって行われる儀式やイベントなどが異なるため、事前にホームページなどで情報を確認しておくと良いでしょう。