高齢者の孤食…問題点や解決方法を解説

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みなさんは誰とご飯を食べることが多いですか? 現在、高齢者の単身世帯の増加やコロナ禍の影響などで、高齢者の弧食率が増加傾向にあり問題となっています。

高齢者の弧食は、高齢者の低栄養や食への無関心、孤独死などに進展する可能性があります。

この記事では、高齢者の弧食率や孤食の問題点と解決方法などをご紹介します。身近に単身世帯の高齢者がいる方だけでなく、自分がそのような状況になってしまったときのため、高齢者の弧食が抱える問題などについて知っておいてください。

そもそも弧食とは?

孤食とは、一人でご飯を食べることです。一方、家族や友人などと一緒にご飯を食べることを共食といいます。

農林水産省が行った調査によると、20~30代の若い世代の弧食率は、男性13.4%、女性3.6%と男性の方が圧倒的に多くなっていました。男性の弧食率は20代がピークで50代までは年齢が上がるにつれて下がっていき、60代以降増加しています。一方、女性は、50代までほぼ横ばいですが、60代になるといきなり10%ほど増加し、70代ではさらに10%ほど増加しています。

現在は、高齢者の弧食の増加と孤食に関係している問題が注目されているようです。

高齢者の弧食率を調査!

平成30年3月に農林水産省が行った、食育に関する意識調査の報告書によると、60代以上で、一人でご飯を食べることがある人の割合は60代では男性22.7%、女性28.4%、70代では男性20.0%、女性33.5%でした。このうち、ほぼ毎日一人でご飯を食べている方の割合は、60代では男性8.7%、女性13.7%、70代では男性15.8%、女性23.4%となっています。ほぼ毎日一人でご飯を食べている人の割合は、なんと70代では、男性の約6人に1人、女性は約4人に1人もいるという調査結果になりました。この結果は、一人暮らしをしている70代の高齢者が多いということと関係していると考えられます。

ウィズコロナの時代、感染を避けるために新しい生活様式が求められるようになったこととも無関係ではないでしょう。同居している家族以外との会食を避けることが推奨された結果、誰にとっても会食の機会は減っています。家族と一緒に住んでいる方は共食できますが、一人暮らしの方は孤食の機会が増えているのです。

しかし、コロナ禍の前から高齢者の弧食が問題になっていたことを考えると、高齢者の単身世帯の増加によって孤食が増えていたところに、ウィズコロナによる新しい生活様式による影響が加わり、高齢者の弧食がより一層増えてしまったものと考えられます。

上記でご紹介した意識調査は、平成30年(2018年)のものでコロナは2020年から蔓延し出しました。そのため、現在の高齢者の弧食率は、上記で紹介した割合よりも高くなっていると推察できます。

高齢者の弧食、何が問題なの?

ひとりでご飯を食べたい高齢者が増えたというだけなら、それほど問題ではないでしょう。しかし、高齢者の弧食は、食事の内容と意欲に影響を及ぼす傾向にあるため問題となっています。ここでは、高齢者の弧食が抱えている代表的な問題である「食生活の乱れ」と「食への意欲の低下」「高齢者の低栄養」について説明します。

弧食だと食生活が乱れやすい

国内で孤食と食生活についての調査した結果によると、家族と食事を共にする頻度が高い人は、野菜や果物の摂取量が多く食物摂取状況が良好であることがわかりました。海外の調査でも同様の結果が出ています。

また、農林水産省が行った「食育に関する意識調査」においても、孤食がほとんどない方は、主食・主菜・副菜を3つそろえて毎日食べている割合が高いという結果がでました。一方、孤食の頻度が多い方は、割合が低く、孤食がほとんどない人の方が、バランスの取れた食事を取っている傾向があることがわかったのです。

この理由は、自分ひとりだけの食事では、栄養バランスを考えずに好きなものを食べる傾向があり、用意の楽さを優先しがちだからです。

食べることに興味がなくなってくる

ひとりで食べる食事は、さびしく美味しさも半減してしまいます。その結果、食べることに興味がなくなってしまい食事量の減少へとつながってしまう可能性があるのです。ただでさえ、高齢者は歳を重ねるにしたがい口腔機能や内臓機能が低下することで、食欲が湧きにくい方も少なくありません。

このようことが原因で、食事量・回数の低下につながり、栄養不足になってしまう高齢者が増えてしまうのです。

孤食は低栄養につながるリスクがある

農林水産省が調査した国民健康・栄養調査の結果をみると、高齢になるにつれて総エネルギー量が減少しますが、大部分の栄養素摂取量も減少していることがわかりました。

もともと歳を重ねるにしたがい、筋肉量や骨量が減少し、転倒や骨折がしやすいようになります。高齢者は骨折すると治るまでに時間がかかるため、転倒して骨折してしまうと寝たきりになるリスクが高いのです。また、筋肉量の低下は、噛む力や食べ物を飲み込む力も弱くなり、誤嚥のリスクも高くなります。さらに、繊維質の多い野菜や肉など食べにくいものを避けるようになる傾向があります。

孤食によって食べることへの意欲を失い、食事量と回数が減少すると低栄養になってしまうのです。栄養不足により活力がなくなり、活力がないため食欲もなくなり栄養不足になるという悪循環に陥るリスクがあります。

また、食料品を買いに行く店まで直線距離で500m以上、かつ65歳以上で自動車を運転できない人は、約825万人いると推計され、これは65歳以上人口の約4分の1に当たります。都会ならまだよいですが、地方では自動車を運転できないと、食料品を購入することが難しくなってしまうのです。そのため、買いたい食料品を購入できずに、食べるものが限られてしまい、低栄養になるリスクが高くなると考えられています。

高齢者の弧食問題を解消するためには?

家族がいる方は、一緒にご飯を食べるようにすれば、孤食問題を解消できます。3食一緒にご飯を食べるのが難しいという場合は、1日1食でもいいですし、毎日一緒にご飯を食べることが無理な場合なら、数日に1回でもいいでしょう。大切なことは、今よりも一緒にご飯を食べる回数を少しでも増やすことです。

遠方に住んでいるため、一緒にご飯を食べることが難しい場合は、スマホやタブレットなどを使ってオンラインで食事することをおすすめします。また、映像が使えない場合は、声だけをつないで会話をしながら食事をしても、ひとりでご飯を食べるよりはよいでしょう。定期的にオンラインで高齢家族の映像を見ることは、孤食の解消だけではなく、安否確認にも利用できるためおすすめです。

また、住んでいる地域で高齢者を支え合うコミュニティがあり、定期的に会食を開催している場合は、その会食に参加することをおすすめします。週に1回、月に1回でも地域の方と一緒にご飯を食べれば、ひとりでご飯を食べるよりも美味しく食べれるでしょう。また、楽しい会話をしながらご飯を食べることで、栄養面だけではなく精神的なメリットも得られるはずです。

まとめ

高齢者の弧食率や孤食の問題点と解決方法などをご紹介しました。孤食は、食生活が乱れやすく、食べることへの興味を失ってしまうリスクがあります。その結果、低栄養となり最悪の場合は孤独死につながる可能性も否定できません。

できるだけ孤食は避けて、友人や家族と一緒にご飯を食べるようにしましょう。誰かと一緒に会話をしながらご飯を食べることは、栄養面だけではなく精神的な面からも多くのメリットが得られるはずです。