失敗しない生前墓の建て方

墓石の展示場で石の質感や形を確かめながら、生前墓を選ぶ70代夫婦 お墓

生前墓(せいぜんぼ)とは、生きているうちに自分や家族のために用意するお墓です。自分で場所や形を選び、費用や管理方法を確かめられる一方、納骨前から管理料がかかったり、将来の転居で希望が変わったりする可能性があります。

大切なのは、先に買うことそのものではなく、亡くなった後に誰が連絡し、納骨し、その後どう管理するかまで考えることです。家族に負担をかけたくないと思って用意しても、その仕組みが伝わっていなければ手続きで困らせてしまいます。
この記事では、生前墓を検討する際の利点と注意点、契約前の確認事項を整理します。

生前墓とは?生前に納骨先を準備するということ

石のお墓を建てる方法と、施設へ生前に申し込む方法がある

墓地の区画を取得して墓石を建てる方法のほか、納骨堂や樹木葬、合葬墓などへ生前に申し込む方法もあります。お墓を継ぐ人がいるか、個別の場所を残したいか、お参りをどこで行いたいかによって、適した選択肢は変わります。
墓石の形から決める前に、どのように遺骨を納め、その後の管理を誰に任せたいのかを考えてみましょう。

「永代供養」という名称が付いていても、個別に納める期間や料金、合祀(ごうし)に移る条件は施設によって違います。合祀は、ほかの方の遺骨と一緒に納める方法です。後から遺骨を取り出せるかも、申込前に確認する必要があります。

縁起や節税だけで契約を決めない

生前にお墓を用意することを前向きに受け止める人もいれば、まだ考えたくないという家族もいます。生前墓を建てれば長生きできる、家族の幸福が保証される、といったものではありません。
縁起のよい説明を契約の根拠にせず、実際の費用、利用条件、家族の考えを確かめることが大切です。

生前に準備するメリット

自分の希望を現地で確かめられる

元気なうちであれば、複数の施設を見学し、雰囲気や参拝環境を自分で比べられます。墓石のデザインや刻む言葉だけでなく、駅からの移動、坂道、段差、休憩場所などを確認できます。
広告の写真では気づきにくいことを、自分の生活に照らして判断できる点は利点です。

ただし、「今は車で行ける」だけで決めないようにします。運転をやめた後や、家族だけでお参りするときを想定し、公共交通機関やタクシーでの行き方も確かめておきましょう。

家族が一から探す負担を減らせる

希望する場所、予算、供養方法がまとまっていれば、遺された人が納骨先を一から探す負担を減らせます。誰を同じお墓に納めたいか、家族にどの程度管理を頼みたいかを話すきっかけにもなります。
ただし、契約しただけで死亡の連絡や遺骨の搬送、納骨が自動的に行われるとは限りません。契約とは別に、実際に動く人と連絡方法を決めておく必要があります。

先に用意するデメリットと注意点

納骨前から管理料などが発生する場合がある

費用は墓石代や初回の使用料だけではありません。契約後から毎年の管理料がかかる施設もあり、実際に納骨するまでの期間が長いほど支払いも続きます。
管理料がいつから発生するか、途中で改定されることがあるか、未納時にどう扱われるかを確認しましょう。

比較するときは、初回費用に加えて、一定期間利用した場合の維持費も計算してみます。例えば管理料が年1万円という仮の条件なら、10年間で10万円です。これは計算例であり相場ではありません。実際の規約と料金で見積もってください。

転居や家族の事情で希望が変わることがある

子どもの転勤、自分の住み替え、配偶者の希望などで、後から別の納骨先を考えることもあります。契約を取り消せるか、何が返金されるか、墓石を建てた後の撤去が必要かを確認しておきましょう。
墓地の使用権を自由に他人へ売ったり譲ったりできるとは限りません。将来変更する場合の手続きは、契約書や使用規則で確かめます。

自分の希望と家族の負担が合わないことがある

自分には思い入れのある場所でも、管理を引き継ぐ家族には遠すぎるかもしれません。大きな墓石や広い区画は、手入れや将来の撤去にも影響します。
家族へ相談するときは、「ここに建てたい」という希望に加えて、掃除、管理料、将来の手続きをどうするかまで話しておきましょう。

生前に申し込めるか、施設ごとの条件を確認する

公営墓地でも、生前申込みができる施設・募集区分と、遺骨を持っていることが条件となる区分があります。「公営だから不可」「民営だから必ず可能」と一律には判断できません。
自治体や施設の最新の募集要項を確認し、自分が希望する区分の条件を読みましょう。

  • 生前申込みに対応する区分か。
  • 申込者の年齢や居住期間の条件があるか。
  • 一人用・夫婦用など、人数や関係の制限があるか。
  • 申込者以外の埋蔵予定者にも条件があるか。
  • 承継者や連絡先を登録する必要があるか。
  • 抽選、募集期間、使用開始までの手続きはどうなっているか。

一般墓を希望する場合は、区画の使用許可を受けてから墓石を建てるまでの期限も確認します。区画だけ確保して、いつまでも建てずにおけるとは限りません。
指定石材店の有無や工事の規則も、購入を決める前に聞いておきましょう。

見積もりは契約時・納骨前・納骨時・納骨後に分ける

契約時に支払う費用

一般墓では、墓地の使用料と墓石・工事の費用が別になっている場合があります。納骨堂や樹木葬なども、表示価格に人数分の利用料や刻字がすべて含まれるとは限りません。
見積書には、対象となる人数、区画、石材、工事、文字彫刻などの条件を具体的に記載してもらいます。

納骨前から続く費用

毎年の管理料、更新料、その他の継続費用の有無を確認します。管理料には区画内の個別清掃が含まれるのかも確認しましょう。
支払方法を決めるだけでなく、自分が入院した場合などに誰が連絡できるかも、家族と共有しておくと役立ちます。

納骨する際と、その後の費用

納骨作業、追加彫刻、希望する法要などの費用を確認します。夫婦で使う予定なら、二人目の納骨で追加料金がかかるかも聞いておきましょう。
一定期間後に合祀へ移る施設では、その際の費用や、期間を延ばす場合の条件も確認します。申込時に一括で払う料金と、後から発生する料金を分けて記録してください。

相続税の扱いで誤解しやすい点

お墓を買えば誰でも節税できるわけではない

国税庁は、日常礼拝の対象となる墓地や墓石などを、相続税がかからない財産として挙げています。ただし、投資対象や商品として所有するものなどは扱いが異なります。
現金を残す場合と財産の扱いが変わることはありますが、もともと相続税がかからないケースでは、購入による節税効果を見込めるとは限りません。

税金を減らすために、必要以上に高額なお墓を購入するのは本末転倒です。生活費や介護費、住み替えの資金を確保したうえで、自分たちに必要な納骨先を選びましょう。
個別の税務判断は、財産全体と契約内容を示して税務署や税理士に確認してください。

亡くなった後に購入する費用は葬式費用とは別

亡くなった後、相続した預貯金から墓地や墓石を購入しても、その支出を理由に預貯金が非課税財産になるわけではありません。国税庁は、墓石や墓地の購入費用、墓地を借りる費用を、遺産総額から差し引ける葬式費用に含めていません。
葬儀に伴う納骨の費用と、お墓を取得する費用をひとまとめにせず、請求書や領収書の内訳を保管して税務署や税理士に確認しましょう。

未払代金は相続税の債務控除と区別する

国税庁は、生前に購入したお墓の未払代金など、非課税財産に関する債務は、相続税の計算で遺産総額から差し引けないとしています。
「支払いを残しておけば相続財産から引ける」と考えて契約しないようにしてください。

また、税金の計算上差し引けるかどうかと、契約上の支払いが残るかどうかは別の問題です。分割払いを利用する場合は、契約者が亡くなった場合の扱い、保証などの条件を契約先へ確認し、家族にも共有しましょう。

契約した後に誰が納骨するかを決めておく

生前契約で見落としやすいのが、亡くなった後の連絡と実務です。家族がいる場合も、「誰かが知っているはず」にせず、主に手続きを頼む人を決めておきます。
身近に頼める人がいない場合は、施設へ必要な連絡先や手続きの条件を確認し、死後の事務を担う人・サービスを別に検討する必要があります。

  • 亡くなったことを施設へ知らせる人。
  • 遺骨を預かり、施設へ搬送する段取り。
  • 納骨日を調整し、必要書類を用意する人。
  • 残っている費用を確認する人。
  • 納骨後の管理や連絡を引き継ぐ人。

施設がどこまで引き受けるのかは契約によります。「生前申込み可能」という言葉だけで、これらの作業がすべて含まれると考えないでください。
手続きを頼む人にも施設の説明を一緒に聞いてもらうと、実際に対応できるかを確かめやすくなります。

契約書と希望を家族へ残す方法

契約書や使用許可証、支払記録、管理事務所の連絡先を一か所にまとめ、保管場所を共有します。施設の名前だけでなく、区画番号や契約番号も残しておきましょう。
エンディングノートには希望を書き、契約済みの内容と、まだ検討中の希望を分けて記載すると混乱を防げます。

転居や連絡先の変更、家族構成の変化があったときは、施設への届け出が必要かを確認します。一度記録して終わりにせず、契約内容と家族の状況が合っているかを折に触れて見直してください。

焦らず比較し、納骨後まで見通して決める

生前墓は、準備の仕方の一つです。見学と情報整理だけ先に進め、契約は条件がそろってから決める方法もあります。
候補を絞ったら、最新の募集要項、見積書、使用規則を持ち帰り、家族や手続きを頼む人と確認しましょう。

継ぐ人がいない場合の管理方法は、永代供養とは?費用・種類・メリットとデメリット、後悔しない選び方で整理しています。

一般墓以外も含めて比較する際は、お墓とは?種類・費用・選び方、納骨から墓じまいまでわかる基礎知識をご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました