浄土宗(じょうどしゅう)の葬儀に参列することになり、焼香の回数や念仏の唱え方に迷っていませんか。遺族として準備を進める場合は、菩提寺への連絡、戒名、通夜の過ごし方など、確認したいことが次々に出てきます。
浄土宗の葬儀では、阿弥陀如来の導きを仰ぎ、故人の極楽往生を願ってお勤めをします。参列者も僧侶とともに念仏を唱えることが特徴です。焼香の回数に厳密な決まりはなく、会場の案内を踏まえて、落ち着いてお参りしましょう。
この記事では、浄土宗の葬儀の意味、通夜から出棺までの流れ、焼香・数珠・香典の作法と、遺族が事前に確認したい準備を解説します。葬儀全体の費用や手配については、葬儀とは?費用相場・流れ・種類と後悔しないための準備をご覧ください。
浄土宗の葬儀の意味と特徴
法然上人が開いた、念仏を大切にする教え
浄土宗は、法然上人(ほうねんしょうにん)が1175年に開いた宗派です。阿弥陀如来(あみだにょらい)をよりどころとして、「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」と念仏を唱え、極楽浄土への往生を願います。
念仏を中心とする専修念仏(せんじゅねんぶつ)の教えは、特別な修行や学問ができる人だけに限られたものではありません。日々の生活の中で念仏を申すことを大切にします。葬儀で初めて念仏を耳にする人も、僧侶の声を聞きながらお参りできます。
浄土宗の教えでは、極楽浄土に往生し、阿弥陀如来のもとでさとりへの道を歩むと説かれます。「念仏を唱えると、この世ですぐにさとりが完成する」という説明とは異なります。葬儀の意味を知ると、読経や念仏に込められた願いも受け止めやすくなるでしょう。
葬儀式と告別式は役割が異なる
葬儀式は、僧侶が故人に引導(いんどう)を授け、阿弥陀如来のお迎えを仰いで、極楽浄土への往生を願う法要です。告別式は、故人と縁のあった人々が別れを告げる式典です。
実際には、葬儀式と告別式を続けて行うことが多く、遺族や参列者には一つの式として見える場合があります。読経の途中で焼香する、僧侶の退場後にお別れをするなど、進め方は寺院と葬儀社の打ち合わせによって変わります。
遺族は、専門用語をすべて覚えるより、自分たちが立つ場面、焼香の順番、挨拶、お別れの時間を確認することが大切です。式の前に進行表をもらい、分からない言葉や動きを担当者に聞いておきましょう。
念仏一会と下炬・引導が特徴
念仏一会(ねんぶついちえ)は、念仏を繰り返し唱えるお勤めです。十回唱える「十念(じゅうねん)」と同じものとして、必ず十回で終わると考えないようにしましょう。念仏一会そのものには、一定の回数の決まりはありません。
また、下炬(あこ)は、もともと火葬の火を加えることに由来する作法です。葬儀では、導師が松明を表す法具を用いる場面などが見られます。引導とともに、故人を極楽浄土へ送る大切なお勤めとして位置付けられています。
法具の動かし方やお勤めの細部は、参列者が再現するものではありません。初めて目にする動作があっても驚いて席を立たず、静かに見守りましょう。動作の意味を知りたい場合は、式が終わってから寺院に尋ねるとよいでしょう。
浄土宗と浄土真宗の葬儀はどう違う?
名前が似ていても、別の宗派
浄土宗と浄土真宗(じょうどしんしゅう)は、ともに阿弥陀如来と念仏を大切にしますが、異なる宗派です。浄土宗は法然上人、浄土真宗は親鸞聖人(しんらんしょうにん)を宗祖と仰ぎます。
親鸞聖人は法然上人に学んだ方ですが、その関係から葬儀の作法まで同じだと判断することはできません。「浄土」とだけ聞いて手配せず、寺院の正式な宗派名を確認してください。
また、「浄土真宗は念仏を唱えなくてよい」「浄土宗だけが念仏を唱える」といった分け方は適切ではありません。教えの違いを単純な優劣や、念仏をする・しないの二択で捉えないようにしましょう。
参列時に確認したい主な違い
| 項目 | 浄土宗 | 浄土真宗 |
|---|---|---|
| 仏弟子としての名前 | 戒名 | 法名 |
| 焼香の回数 | 厳密な決まりはなく、1~3回程度 | 本願寺派は1回、大谷派は2回が基本 |
| 香を押しいただく動作 | 眉間の高さほどにいただく | 本願寺派・大谷派とも行わない |
| 通夜・葬儀の香典の表書きの例 | 御霊前・御香典・御香料 | 御仏前・御香典など |
この表は、参列の際に迷いやすい点の比較です。細かな作法は寺院や地域の案内に合わせてください。浄土真宗について詳しく確認したい場合は、浄土真宗の葬儀とは?本願寺派・真宗大谷派の違いと流れ・参列マナーで整理しています。
遺族が最初に準備すること
菩提寺と葬儀社に連絡する
家族が亡くなったら、搬送や安置の手配とともに、日頃お世話になっている菩提寺(ぼだいじ)へ連絡します。連絡先が分からなければ、親族や過去の法要の案内などを確認しましょう。
通夜・葬儀の日程は、家族、寺院、葬儀社、式場や火葬場の予定を調整して決めます。葬儀社だけで日時を確定すると、希望する僧侶の都合がつかない場合があります。宗派名に加え、依頼する寺院の名前と連絡状況を葬儀社へ伝えてください。
付き合いのある寺院がない場合は、その事情と、浄土宗での葬儀を希望していることを相談します。僧侶の紹介を受けるなら、葬儀後の法要や納骨の相談先についても聞いておくと、その後の準備につながります。
戒名と、故人の希望を確認する
生前に戒名(かいみょう)を授かっている場合は、記された書類を探し、担当寺院に伝えます。文字を誤って葬儀の掲示や位牌に記さないよう、家族の記憶だけで判断せず、資料で確認しましょう。
まだ戒名を授かっていない場合のことや、葬儀でのお勤めについては寺院に相談します。家族が個別に依頼をすると話が食い違うことがあるため、寺院への連絡窓口を一人決めておくと整理しやすくなります。
エンディングノートなどに、故人が希望する服、花、参列してほしい人、葬儀の規模が書かれている場合もあります。宗教上の作法や会場の条件と両立できるか、担当者に相談して、実現できる内容を決めてください。
お勤めと費用の確認事項をまとめる
寺院へのお布施は、葬儀社の基本プランに含まれているとは限りません。通夜・葬儀・初七日など、どこまでのお勤めをお願いするのか、御車代などを別に用意するのかを確認します。
金額や渡す時期に迷う場合は、そのまま質問して構いません。全国共通の一律料金と考えず、今回依頼する内容について説明を受けましょう。葬儀社を通して手配する場合も、誰に何を支払うのかを分けて確認します。
| 確認すること | 主な相談先 |
|---|---|
| 宗派、戒名、お勤めの内容 | 担当寺院 |
| 通夜・葬儀の日時と会場 | 寺院と葬儀社 |
| 納棺時の衣服、棺に入れる品 | 葬儀社。宗教上の希望は寺院にも確認 |
| 夜間の付き添いと火気使用 | 安置施設・式場の担当者 |
| お布施と葬儀社への支払いの区分 | それぞれの依頼先 |
| 葬儀後の法要と納骨 | 寺院と納骨先の管理者 |
浄土宗の通夜から葬儀・出棺までの流れ
安置と納棺
安置後、寺院の案内に沿ってお勤めや枕元の準備を進めます。故人の体を整え、衣服を着け、棺に納めるのが納棺(のうかん)です。清拭や湯灌(ゆかん)、化粧などの内容と順番は、故人の状態や家族の希望、葬儀社の対応によって異なります。
すべての家族が湯灌を行うことや、決まった時間をかけることが必須というわけではありません。費用に含まれる内容、家族が立ち会える範囲を事前に確認してください。何を行うか分からないまま当日を迎えないことが大切です。
棺に納める品には、火葬場の制限があります。故人が好きだった物でも、素材や大きさによって入れられない場合があるため、葬儀社に確認します。衣服や装具についても、家族だけで準備を進めず、寺院と担当者に相談しましょう。
通夜のお勤めと、夜間の付き添い
通夜では、僧侶の読経や念仏、遺族・参列者の焼香などを行います。会食を用意する場合もありますが、必ず同じ形で行うわけではありません。参列者への案内、会食の人数、終了後に残る家族を確認しておきます。
線香やろうそくを供える習慣があっても、すべての家族が徹夜し、火を絶やさず守ることが一律の義務になるわけではありません。夜間の面会や宿泊、火気の使用条件は施設によって異なります。
長時間供えられる巻き線香を用いる場合も、火の扱いに注意し、製品の注意事項と施設の規則に従います。付き添いと休息の取り方は、寝ずの番は必要?通夜の付き添い・宿泊の準備と安全な過ごし方で詳しく解説しています。
葬儀のお勤め・下炬引導・焼香
葬儀では、仏・法・僧の三宝を敬うお勤めなどに続き、故人への引導、読経、念仏、焼香などが行われます。ここでいう「法」は仏の教えを指します。具体的な順番や用いる経文は、寺院や地域によって異なります。
下炬引導(あこいんどう)では、導師が法具を用いてお勤めをします。松明のようなものを持つ場面を見ても、参列者が棺に点火する儀式だと受け取る必要はありません。家族に求められる動作がある場合は、事前の説明に従いましょう。
焼香の順番は、喪主、遺族、親族、一般参列者など、式の進行に合わせて案内されます。親族内で順番に迷う場合は、開式直前に慌てて相談せず、担当者と前もって確認しておくと落ち着いて臨めます。
念仏を唱え、故人と最後のお別れをする
念仏を唱える場面では、僧侶の声や案内に合わせて「南無阿弥陀仏」と申します。念仏一会は回数を一律に決めたものではなく、十念の案内がある場合とは区別します。参列者が自分で回数を決めて先に終えたり、声量を競ったりする必要はありません。
お勤めが終わると、故人との対面や花を納める時間を設けて出棺します。棺の蓋の閉じ方や釘打ちの有無などは、棺の仕様、寺院、地域、葬儀社によって異なり、「浄土宗では必ず石で釘を打つ」と決めつけないでください。
火葬場へ同行する人、車の分担、持参する物は前日までに確認します。地域によっては先に火葬を行ってから葬儀を勤めるため、一般的な流れと違っていても誤りとは限りません。当日の予定表を家族で共有しましょう。
浄土宗の焼香と数珠の作法
焼香の回数は厳密に固定されていない
浄土宗の公式案内では、焼香は厳密に回数を決めず、1~3回程度としています。大勢が参列する葬儀や法要では、心を込めて1回行うという案内です。「浄土宗なら必ず3回」と覚える必要はありません。
基本は、ご本尊の前で合掌・礼をし、右手で少量の香をつまみます。左手を右手の下に添え、眉間の高さほどにいただいた後、香炉へ丁寧にくべます。終わったら再び合掌し、礼をして退きます。
会場で回数や動線の案内があるときは、そちらに合わせましょう。荷物は焼香の前に整理し、両手を使いやすいようにしておきます。細かな動きに気を取られて急ぐよりも、香炉や周囲の人に触れないよう静かに進むことが大切です。
立礼・座礼・回し焼香の違いは、焼香とは?意味や正しい作法・宗派ごとの回数を詳しく解説で確認できます。足腰に不安がある場合は、無理に立ったり正座したりせず、係員に方法を相談してください。
日課数珠は二つの輪をそろえて持つ
浄土宗では、二つの輪を組み合わせた日課数珠(にっかじゅず)が一般的です。毎日の念仏の回数を数えるための仏具で、合掌時は両親指に二つの輪を掛け、房を胸側へ垂らします。
合掌していないときは左手首に掛けておきます。数珠を手のひらでこすり合わせて音を出すことは、浄土宗の作法ではありません。葬儀の最中に大きく動かしたり、床に置いたりせず、大切に扱いましょう。
他宗派の参列者は、自分が使っている数珠を持参して構いません。葬儀のためだけに日課数珠へ買い替える必要はありません。忘れた場合も慌てて人のものを借りず、合掌して静かにお参りしてください。
十念の唱え方が分からないときは
浄土宗では、十回の念仏を唱える「お十念」をさまざまな場面で行います。正式な唱え方には、最後の念仏を少し伸ばすなどの作法がありますが、初めての参列者が事前に完璧に覚えておく必要はありません。
「ご一緒にお念仏を」と案内されたら、僧侶の声を聞き、無理のない声で合わせます。自分の信仰などの事情で唱和しない場合も、周囲の妨げにならないよう静かに参列しましょう。分からないことを隣の人に式中ずっと尋ねるより、案内に耳を傾けることが大切です。
香典・服装・お悔やみの言葉
香典の表書きと金額
浄土宗の通夜・葬儀では、香典の表書きに「御霊前」「御香典」「御香料」などが用いられます。浄土真宗とは扱いが異なるため、名前が似ていることだけで同じ表書きを選ばないようにしましょう。
金額は、故人との関係、年齢、地域、親族内の取り決めなどで変わります。「親族なら一律いくら」と決めず、迷う場合は関係の近い家族に確認してください。複数人で包むときは、代表者と内訳を分かるようにしておきます。
表書きの下には氏名を記し、中袋などに金額、住所、氏名を読みやすく書きます。香典辞退の案内がある場合は無理に渡さず、遺族の意向を尊重しましょう。具体的な準備は、香典とは?金額相場・香典袋の書き方・渡し方・マナーで解説しています。
服装は「浄土宗なら平服でよい」と判断しない
葬儀・告別式は、立場や案内に合わせた喪服を基本に考えます。浄土宗だから服装が自由というわけではありません。平服の指定がある場合も、普段の部屋着ではなく、場に合う落ち着いた服装を選びましょう。
急な知らせで準備が難しいときは、遺族や会場の案内を確認します。子どもは制服があれば制服を、なければ落ち着いた色の服を用意するなど、年齢に合った無理のない準備で構いません。
靴の着脱が必要な会場か、椅子席か畳の部屋かによっても、過ごしやすさが変わります。移動や着席に配慮が必要な方は、参列前に葬儀社へ伝えておくと安心です。
遺族への挨拶は短く、気遣いを伝える
受付や遺族への挨拶では、「このたびは心よりお悔やみ申し上げます」など、短い言葉で弔意を伝えます。教義に詳しいことを示そうとして長く話したり、亡くなった経緯を詳しく尋ねたりする必要はありません。
故人との思い出を伝えたい場合も、遺族が参列者への対応に追われていれば、後日の手紙などにする方法があります。「もっと早くこうしていれば」と遺族を責めるような話や、気持ちの整理を急がせる言葉は避けましょう。
弔電や供花を送る場合は、宛名、受け取り先、締切、辞退の有無を確認します。同じ会場で複数の葬儀が行われることもあるため、故人と喪主の名前を確認して手配してください。
葬儀後の後飾りと法要の準備
遺骨・位牌を迎える場所を相談する
火葬後、遺骨を自宅へ迎える場合は、後飾りの場所を整えます。位牌や遺骨、遺影、お供えなどの配置は、祭壇の形や部屋の事情、寺院の案内に合わせてください。方角や三段の並び方を全国共通の決まりとして固定する必要はありません。
人の通り道をふさがないか、子どもやペットが触れないか、火を使う場合に周囲へ燃え移る物がないかも確認します。葬儀社が設置する場合は、その場で扱い方と、片付ける際の相談先を聞いておくと安心です。
初七日・四十九日と納骨を別々に確認する
初七日(しょなのか)を葬儀当日に勤めるか、後日に行うかは、寺院と家族で相談します。葬儀が終わったら、四十九日法要の日程、会場、参列者、会食、お供えなども順に整理しましょう。
納骨を四十九日に合わせることもありますが、墓地の準備や家族の都合により別の日になる場合もあります。法要の日程だけを決めて納骨先への連絡を忘れないよう、必要な書類や当日の手配を管理者に確認してください。
白木の位牌から本位牌への準備が必要な場合は、文字や納期を寺院・仏具店に確認します。複数の家族が別々に注文しないよう、担当を決めて進めましょう。葬儀後も急いで決めることが続くため、確認した内容をメモに残して共有すると役立ちます。
浄土宗の葬儀は念仏と作法の意味を知って臨む
浄土宗の葬儀は、阿弥陀如来の導きを仰いで故人の極楽往生を願うお勤めです。念仏一会や下炬引導などの特徴を知り、参列者は会場の案内に合わせて念仏や焼香を行います。
遺族は、寺院への連絡、戒名、当日の進行、夜間の付き添い、葬儀後の法要を一つずつ確認しましょう。作法を完璧にこなすことだけにとらわれず、家族で準備を分担し、落ち着いて故人とのお別れに臨んでください。


