お通夜で「恥ずかしい思い」をしないために〜知っておきたい5つのマナー

葬儀・仏事

突然の訃報は、私たちの心を揺さぶるものだ。
特に、近親者ではないものの、お世話になった方や親しい知人のお通夜に参列するとなると、多くの人が戸惑いを覚えるだろう。
何を着ていけばいいのか、お香典はいくら包めばいいのか、そして焼香の作法は。
形式的なマナー一つひとつに気がかりが尽きないものだ。
近年は家族葬が増え、お通夜に参列する機会自体が減っているため、いざという時に困る人は少なくない。

お通夜に参列する上で「知らないと恥をかく」かもしれない、重要なマナーを5つに絞り、その背景や理由も含めて詳しく解説する。
これらを知っておくことで、形式的な作法に気を取られることなく、故人を偲び、遺族を慰めるというお通夜本来の目的を果たすことができるだろう。

1. 「平服でお越しください」の本当の意味

案内状に「平服でお越しください」と書かれているのを見て、「普段着でいいんだ」と勘違いしてはいけない。
これは、
「喪服でなくても構いません」という意味であり、決して普段着で良いということではない。
この場合の「平服」とは、**略喪服(略礼服)を指す。
具体的には、男性であれば黒や紺、グレーといったダークカラーのスーツが適切だ。
ワイシャツは白を選び、ネクタイも黒や落ち着いた色合いのものにしよう。
派手な柄物や光沢のあるものは避ける。
女性であれば、黒や紺、グレーのワンピースやアンサンブル、スーツが望ましい。
ストッキングは黒を選び、靴も黒でシンプルなパンプスにするのがマナーだ。
過度な装飾品や派手なメイクは避け、結婚指輪以外のアクセサリーは外すのが基本である。

なぜ「平服」が推奨されるのかというと、急な訃報に接した参列者が、慌てて正喪服を準備する負担を考慮してのことだ。
また、故人や遺族が、形式にとらわれず、心からのお別れを望んでいるという配慮も込められている。
この言葉の背景にある「相手を思いやる気持ち」を理解しておくことが大切だ。

2. 受付での「お悔やみの言葉」は簡潔に

受付での挨拶は、簡潔に、手短に済ませるのが鉄則だ。
遺族は多くの参列者に対応しており、一人ひとりと長い話をする時間はない。

お悔やみの言葉は、以下のようなものが無難だろう。

  • 「この度は心よりお悔やみ申し上げます。」
  • 「この度は誠にご愁傷様でございます。」

こうした定型的な言葉でも、遺族には十分に気持ちが伝わる。
逆に、故人の死因や病状を尋ねるような質問は、遺族の悲しみを深める可能性があるため、絶対に避けなければならない。
また、「頑張って」「頑張ってください」といった言葉も、遺族にさらなる負担をかける可能性があるため不適切とされている。

「ご愁傷様でございます」は、遺族に直接かける際に使う丁寧な表現だ。
参列者同士で使うと不自然になるので注意しよう。
受付でのマナーは、遺族への配慮を最優先に考えよう。

3. お香典の「渡し方」と「相場」

お香典は、故人への弔意を表すものであり、遺族の経済的負担を軽減する目的がある。
そのため、渡し方や金額には細心の注意を払う必要がある。

正式なマナーとして、お香典は袱紗(ふくさ)に包んで持参するのが基本だ。
香典袋をそのままむき出しで持ち歩くのは失礼にあたる。
受付で袱紗から取り出し、相手に表書きが読めるように向きを変え、「この度はご愁傷様でございます」と一言添えて差し出そう。

そして、金額の相場を知らないと恥ずかしい思いをすることになる。
一般的な相場は以下の通りだ。

  • 友人・知人: 5,000円〜10,000円
  • 会社の同僚・上司: 5,000円〜10,000円
  • 親族: 10,000円〜100,000円

金額は故人との関係性や自分の年齢、立場によって変動する。
特に注意したいのは、「死」や「苦」を連想させる「4」や「9」がつく金額は避けること。
また、新札は「死を待っていた」「事前に用意していた」という印象を与えるため、使用しないのがマナーだ。
あえて折り目をつけるか、手元に新札しかない場合は古いお札と交換して持っていくのが良い。

4. 焼香の「回数」は宗派によって違う

焼香の作法は、宗派によって異なるため、事前に把握しておくと安心だ。

  • 天台宗・真言宗: 3回
  • 浄土宗: 特に回数の決まりはない(1回または3回)
  • 浄土真宗: 1回(押しいただかない)
  • 曹洞宗: 2回(1回目は主香、2回目は従香として)
  • 臨済宗: 1回
  • 日蓮宗: 1回または3回
  • 神道: 焼香は行わず、玉串奉奠(たまぐしほうてん)を行う

ただし、同じ宗派でも上記の回数と違う回数の場合もあるし、地方やお寺によっても違いがあるので注意しよう。

ほとんどの宗派で、焼香の際に「香を額の高さまで持ち上げる」という作法(押しいただく)があるが、浄土真宗ではこの作法を行わない。
これは、自力ではなく阿弥陀如来の他力によって救われるという教えに基づいているためだ。

もし自分が参列する葬儀の宗派がわからない場合は、他の参列者の様子を見て合わせるか、1回で済ませるのが無難だ。
心を込めて故人を偲ぶことが最も重要であり、回数にこだわりすぎる必要はない。

5. 通夜振る舞いでの「食べ方」と「席順」

お通夜の後に遺族から食事を勧められる「通夜振る舞い」
これは、故人の供養の一環として行われるものだ。
遺族のご厚意なので、可能であれば少しでも箸をつけるのがマナーだ。

  • 辞退する場合: どうしても参加できない場合は、「お気持ちだけいただきます」と丁重に断ろう。
  • 席順: 基本的には、故人との関係が深い人から上座に座る。遺族に案内された場合はそれに従い、迷ったら下座に座るのが無難だ。
  • 食べ方: 大皿料理の場合は、取り分ける係を決めて、みんなで分け合おう。

通夜振る舞いの席では、大きな声で談笑したり、故人の思い出話を長々と語ったりすることは避けるべきだ。
故人を偲びながら、静かに食事をすることがマナーである。
また、長居せず、頃合いを見て席を立つことも遺族への配慮となる。

お通夜は、故人を偲び、遺族を慰めるための大切な儀式だ。
これらのマナーを知っておくことで、心にゆとりが生まれ、故人との最後の時間を穏やかに過ごすことができるだろう。
大切なのは、形だけの作法ではなく、故人への敬意と、遺族への思いやりである。

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