葬儀の挨拶、どう言うのが正しい? 故人への敬意を伝える言葉の選び方

葬儀・仏事

葬儀に参列する際、故人や遺族への弔意をどのように伝えるべきか、誰もが一度は悩んだことがあるだろう。
特に、形式的な言葉が求められる場面では、「失礼にあたらないか」「正しい言葉遣いだろうか」と、不安になるものだ。

「ご愁傷様です」と「お悔やみ申し上げます」。
この二つの言葉は、どちらも弔意を表す挨拶として広く知られている。
しかし、その使い方や、より丁寧な言い回し、そして避けるべき言葉があることを、多くの人は知らない。
葬儀の挨拶について、その基本から具体的な状況に応じた使い分けまで、解説していく。

葬儀の挨拶の基本:弔意を伝える心構え

葬儀の挨拶は、単なる言葉のやり取りではない。
それは、故人の死を悼み、遺族の悲しみに寄り添うための、心のこもったコミュニケーションである。
そのため、言葉の選び方以上に、相手への敬意と、寄り添う気持ちが何よりも重要となる。

まずは、葬儀の挨拶における基本的な心構えを確認しよう。

1. 簡潔に、心を込めて

長々と話す必要はない。むしろ、遺族は多くの対応に追われており、ゆっくり話す時間がない場合が多い。
故人への弔意と、遺族へのいたわりの気持ちを、簡潔な言葉で伝えることが肝心だ。

2. 遺族の立場に配慮する

挨拶は、遺族の悲しみに寄り添うためのものだ。
自分の気持ちを一方的に押し付けたり、故人との思い出話を長々と語ったりすることは避けるべきである。
あくまで、遺族の心の支えとなるような言葉を選ぶことが大切だ。

3. 故人との関係性を考慮する

故人との関係性によっても、挨拶の言葉は変わってくる。
親しい友人であれば、少しくだけた言葉で思い出を語り合うこともあるだろう。
しかし、仕事関係の付き合いであれば、より丁寧で形式的な言葉を選ぶのが一般的だ。

具体的な挨拶の言葉:ケーススタディ

それでは、具体的な挨拶の言葉を見ていこう。

1. 弔問時・受付での挨拶

弔問時、特に受付で遺族に声をかける際の挨拶は、最も多くの人が悩む場面だ。ここでは、いくつかのパターンを紹介する。

パターンA: 最も一般的で丁寧な言

「この度は、ご愁傷様でございます。心よりお悔やみ申し上げます。」

この言葉は、最も丁寧で格式ばった表現であり、どんな場面でも間違いがない。
相手が目上の方や、仕事関係の方である場合に特に適している。

パターンB: 簡潔で心温まる言葉

「この度は、大変なことになりましたね。心よりお悔やみ申し上げます。」

「ご愁傷様でございます」という言葉に抵抗がある人や、故人や遺族と親しい間柄である場合に適している。
悲しみに寄り添う気持ちが伝わる、温かい言葉だ。

パターンC: 故人への思いを込めた言葉

「○○様のご逝去を悼み、心よりお悔やみ申し上げます。」

故人の名前を入れることで、より個人的な弔意を伝えることができる。
故人を偲ぶ気持ちを強く伝えたい場合に有効だ。

2. 通夜・告別式での挨拶

通夜や告別式に参列した際、遺族と顔を合わせたときに交わす言葉も重要だ。

パターンA: 故人との関係が深い場合

「○○様には、本当にお世話になりました。心からご冥福をお祈りいたします。」

故人との思い出を簡潔に伝えつつ、冥福を祈る言葉を添えることで、より深い弔意を示すことができる。

パターンB: 故人との関係が浅い場合

「この度は、誠にご愁傷様でございます。何かお手伝いできることがあれば、お申し付けください。」

深い関係性がなくても、遺族への気遣いを示すことが大切だ。この一言は、遺族の心に寄り添う、温かい言葉となる。

避けるべき言葉:不幸を連想させる「忌み言葉」

葬儀の挨拶では、「忌み言葉」と呼ばれる、不幸や不吉な出来事を連想させる言葉を避けるのがマナーだ。
これらの言葉は、遺族の悲しみを増幅させたり、不快感を与えたりする可能性があるため、注意が必要である。

代表的な忌み言葉とその言い換え

忌み言葉意味・理由言い換え例
重ね重ねたびたび不幸が重なることを連想させる「心より」「重ねて」などを避ける
ますますいよいよ不幸が増えることを連想させる「どうぞ」「どうか」などを使う
死亡死ぬ直接的すぎる表現で、不快感を与える「ご逝去」「ご永眠」「他界」などを使う
生きていた頃不幸な過去を連想させる「お元気だった頃」「ご生前」などを使う

宗教・宗派によって異なる言葉

また、宗教や宗派によっても、使うべき言葉と避けるべき言葉がある。

  • 仏教:「冥福を祈る」という言葉が一般的。ただし、浄土真宗では「故人はすぐに成仏する」という教えがあるため、「冥福を祈る」という言葉は使わない。代わりに「お悔やみ申し上げます」などを使う。
  • 神道:「ご愁傷様」「冥福を祈る」という言葉は使わない。「この度は、誠にご愁傷様でございます。心よりお悔やみ申し上げます」といった挨拶は適さない。代わりに「御霊のご平安をお祈りいたします」などを使う。
  • キリスト教:「ご愁傷様」や「冥福を祈る」は使わない。「安らかなお眠りをお祈りいたします」などを使う。

事前に故人の宗教・宗派を確認し、適切な言葉を選ぶことが大切だ。

挨拶は「心」を伝える手段

葬儀の挨拶は、形式的なマナー以上に、故人への感謝と、遺族へのいたわりを伝えるためのものだ。
言葉に詰まってしまったり、気の利いた言葉が見つからなかったとしても、「あなたの悲しみに寄り添いたい」という気持ちが伝われば、それが一番の挨拶となる。

無理に難しい言葉を使ったり、完璧なマナーを演じたりする必要はない。
大切なのは、心を込めて、誠実に弔意を伝えることだ。

もし、言葉が出てこない場合は、深々と一礼するだけでも、その気持ちは十分に伝わるだろう。
言葉に頼らず、その態度で示すことも、立派な挨拶の一つなのだ。

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