絵手紙(えてがみ)は、身近なものを描いた絵に短い言葉を添えて、気持ちや近況を伝える手紙です。
季節の花や果物、食卓の野菜など、いつもの暮らしの中から題材を見つけられます。
絵の経験がなくても、まず一枚試すところから始められる趣味です。
ただし、道具を一式そろえなければ始められないわけではありません。
この記事では、手持ちの画材で試す方法と、筆や顔彩を使う基本的な描き方、教室の選び方、送るときの配慮を紹介します。
上達や交流を急がず、自分に合う楽しみ方を探してみましょう。
絵手紙は絵と短い言葉で気持ちを届けるもの
絵手紙では、見たものを自分の線や色で表し、そのとき感じたことを言葉にします。
細かく描き込むことや、写真のように似せることだけが目的ではありません。
少し曲がった線や色のにじみも含めて、描き手の感じ方を伝えられるところに面白さがあります。
例えば柿を一つ描き、「庭の実が色づきました」と添えるだけでも、季節の便りになります。
立派な文章や長い近況報告を用意する必要はありません。
まず相手を思い浮かべ、伝えたいことを一つ選ぶと、何を描くか考えやすくなります。
日本絵手紙協会では、実物をよく見て描く方法や、筆と墨、顔彩などを使う基本を紹介しています。
一方、気軽に試すならペンや色鉛筆などを使う方法もあります。
教室で学ぶ場合は、その教室が大切にする描き方を聞き、自宅で試す方法と使い分けてもよいでしょう。
最初に用意する道具は描き方に合わせて選ぶ
手持ちの画材で一枚試す場合
まず感触を確かめたい方は、手元にあるペンや色鉛筆と、描きやすい紙を使ってみましょう。
水彩絵の具を使うなら、紙が水で傷みにくいかを確認します。
すぐ郵送せず、練習用の紙に描いてみるだけでも、道具の持ちやすさや使いたい色を確かめられます。
ペンは、水を付けたときに線がにじむかどうかで仕上がりが変わります。
使う前に紙の端で試し、自分が出したい線や色になるかを見てください。
家にある道具で試した後、必要なものを買い足すと、使わない画材を多く抱えずに済みます。
筆と墨、顔彩を使う場合
筆を使う基本的な道具には、線を描く筆、色を付ける筆、墨や墨汁、顔彩(がんさい)、はがき、水入れ、パレット、下敷きなどがあります。
顔彩は、水を含ませた筆で色を溶いて使う画材です。
筆の太さや紙の種類で、線やにじみの様子が変わります。
墨をすって使いたい場合は硯(すずり)なども必要ですが、すべての描き方で必須ではありません。
筆も、教室で学ぶなら指定の有無を確認してから購入しましょう。
最初から道具の数や価格をそろえるより、自分が試したい描き方に合うものを選ぶことが大切です。
紙と水入れ、印の扱い
筆と墨のにじみを楽しむ場合は、画仙紙(がせんし)を使ったはがきなどが候補になります。
紙によって吸水性や表面の感触が異なるため、描いたときのにじみ方を試してください。
色鉛筆で描く場合も、紙と画材の相性を確認しましょう。
水入れやパレットには、使いやすい専用の容器を用意するか、画材用として使い分けられる容器を利用します。
墨や絵の具で机が汚れないよう、下に紙やシートを敷きましょう。
名前の印は表現の一つですが、最初の一枚に必ず必要な道具ではありません。
刃物で印を作る場合は、安全に作業できる道具と環境を選んでください。
初心者が最初の一枚を描く手順
身近な題材を一つ選ぶ
花、野菜、果物、湯のみなど、目の前に置いて観察できるものを選びます。
最初から複雑な風景や多くの物を描こうとせず、一つの形をよく見てみましょう。
丸いと思っていた実にも、ふくらみやへこみ、色の違いがあります。
見つけた特徴を一つ表すつもりで取り組むと、題材を絞りやすくなります。
絵手紙の本や作品を見ることは参考になりますが、そのまま写すことだけを目標にしなくても構いません。
実物を見ながら、自分が気になった部分を選んで描いてみてください。
他の人の作品や写真を使って制作し、展示や公開をする場合は、著作権や主催者の条件にも注意が必要です。
線を描き、色を付ける
筆を使うときは、まず練習用の紙で線を引き、筆先や力の入れ方を確かめます。
持ち方や動かし方は、教室や案内に沿って試してみましょう。
線が揺れても、すぐ失敗と決めつける必要はありません。
一枚の中で何を伝えたいかを考えながら続けます。
輪郭を描いたら、題材を見て色を選びます。
水や絵の具の量は紙に試してから調整してください。
細部まで塗りつぶさず、余白を残す表現もあります。
色が混ざり過ぎる場合は筆や水をきれいにし、一度に多くの色を使わず試すと、違いが分かりやすくなります。
短い言葉を添えて乾かす
絵を見て相手に伝えたいことを、一言か二言考えます。
「今日はよく晴れました」「また会いたいですね」など、自分の言葉で構いません。
難しい格言や名文を探すより、目の前の題材と自分の気持ちを結び付けてみましょう。
書き終えたら、机の上などで十分に乾かします。
墨や絵の具が乾かないうちに重ねると、別の紙に色が移ることがあります。
郵送する場合は宛名面も含め、汚れや濡れがないかを確認してください。
完成した日や題材を別のメモに残すと、後で見返す楽しみにもなります。
教室・体験会と独学はどう選ぶ?
独学は、自分の好きな時間に短く取り組める方法です。
本や公式の描き方案内を参考にできますが、分からないことを直接質問できない場合があります。
道具の選び方や筆の持ち方から確かめたい方は、体験会などで教わる方法も検討しましょう。
教室を探す場合は、公民館や地域の学習施設、美術館、絵手紙の団体などの案内を調べます。
初心者が参加できるか、道具の貸出しがあるか、一回だけの体験ができるかを確認してください。
体験前に高価なセットを買わず、指定の持ち物を聞くと無駄を減らせます。
費用は受講料だけでなく、材料費、道具、交通費、展示会への参加費なども含めて考えます。
継続講座なら欠席や退会の扱い、通信講座なら添削の回数と期間も確認しましょう。
講師との相性や、作品の講評が自分に合うかも、体験後の判断材料になります。
送る相手への配慮と作品の残し方
絵手紙は、必ず誰かに送らなければならないものではありません。
まず自分で描いて楽しみ、送りたい相手が浮かんだら便りにしてみましょう。
郵送するときは、紙の大きさや重さ、飾りや厚みなどによって扱いが変わるため、郵便の条件と料金を確認します。
迷う場合は封筒に入れる方法もあります。
相手の住所を教室の仲間に伝えたり、宛名が写った作品をSNSに掲載したりする場合は、本人の了承が必要です。
返事の速さや回数を求めず、お互いに負担のないやり取りにしましょう。
教室に通えば必ず友人が増える、寂しさがなくなるというわけではありません。
人との関わりも楽しみたい方は、シニアの友達づくりはどう始める?地元で知り合いを増やす方法と付き合い方も参考にしてください。
手元に残す作品は、乾燥させてからファイルなどに整理します。
送る前に写真で記録しておく方法もあります。
出来栄えを採点するのではなく、どんな題材を描きたくなったか、どの道具が使いやすかったかを振り返ると、自分の楽しみ方を見つけやすくなります。
無理のない時間で一枚から始める
細かい作業を続けて疲れる場合は、明るさ、姿勢、机や椅子の高さを見直し、短い時間で区切ります。
手に力が入りにくい方は持ちやすい画材を試すなど、自分の状態に合わせて調整してください。
趣味の効果として、認知症予防や心の不調の改善を一律に期待するのではなく、描く時間を楽しめるかを大切にしましょう。
最初の目標は、道具を一式そろえることより、身近な題材を一つ選んで描いてみることです。
気に入ったら、違う色や紙を試したり、体験会に参加したりしてみましょう。
自分の言葉と絵で気持ちを表す、小さな一枚から始められます。



